砂漠の夜に刻む誓い 〜考古学者は若き族長に愛でられる〜

たら昆布

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12話

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 洞窟の入り口から差し込む、冷ややかな夜明けの光が遥希の瞼を叩いた。

 「ん……っ……」

 身動ぎをしようとして、身体中の節々が悲鳴を上げる。昨夜、ザイドによって執拗に愛でられた証拠が、鈍い痛みとなって全身に刻まれていた。

 ふと横を見れば、そこにはまだ眠るザイドの姿があった。

 普段の傲慢なまでの威圧感は影を潜め、朝の光に照らされた寝顔は驚くほど端正で、どこか寂しげですらある。

 (……なんてことを、してしまったんだろう)

 遥希は震える手で、乱れたシャツの合わせを握りしめた。

 自分の肩に残る、赤紫色の歯型。それが、自分がこの男のものになったのだと無言で主張しているようで、視界が熱くなる。

 拒めたはずだ。けれど、あの時の自分は間違いなく、彼に縋り、その熱を求めていた。

 「……起きたのか」

 不意に、低く掠れた声が響いた。

 いつの間にかザイドが目を開け、金色の瞳で遥希をじっと見つめていた。

 「あ、……はい。……おはよう、ございます……」

 遥希は赤くなった顔を背けようとしたが、ザイドの大きな手がそれを許さず、頬を包み込む。

 「なぜ顔を隠す。昨夜は、あんなに俺を求めて鳴いていたというのに」

 「っ、それは……! 嵐のせいで、僕も少し……おかしくなっていただけで……」

 「おかしくなっていた、か。ならば、一生狂っていればいい」

 ザイドは身を起こすと、遥希を背後から抱き寄せ、その首筋に顔を埋めた。

 昨夜の情事の余韻が残る肌に、ザイドの朝の体温が重なり、遥希の心臓が再び騒ぎ出す。

 「遥希。お前はもう、俺というオアシスから逃げることはできない。お前の心も身体も、すべて俺が飲み込んだのだからな」

 ザイドの言葉は呪いのように重く、けれど、砂漠で遭難しかけた遥希を救ったあの時と同じ、絶対的な安心感を伴っていた。

 「……さあ、戻るぞ。イシュマたちが心配して捜しに来ているはずだ」

 ザイドは立ち上がると、自分のマントを遥希の肩に優しくかけた。

 洞窟を出ると、そこには昨夜の嵐が嘘のような、透き通った青空が広がっていた。

 宮殿へ戻る車中で、遥希は自分の指先に残るザイドの感触を反芻していた。

 (調査が終われば、僕は日本に帰るはずだった。……なのに、どうして……)

 揺れる心とは裏腹に、遥希の視線は隣に座るザイドの横顔を、無意識に追いかけていた。

 この時、遥希はまだ知らなかった。

 宮殿で二人を待ち受けているのが、日本から届いた一通の不穏な知らせであることを。
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