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25話
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魔王城は、建国記念パーティーの熱気に包まれていた。
豪奢なシャンデリアが輝き、魔界中の貴族や魔物たちが着飾って集まっている。
俺――カナデもまた、レンに半ば強制的に誂えられた「白銀の礼服」に身を包んでいた。
「……レン。何度も言うが、俺は裏方だ。こんな目立つ格好をして、ダンスホールの中央に立つ必要はない」
「何言ってんだよ、カナデ。この城をここまで黒字にしたのはお前だ。今日ばかりは、俺の隣で胸を張ってろ」
漆黒の正装に身を包んだレンが、いつも以上の威圧感……ではなく、圧倒的な「華」を纏って俺の前に立つ。
髪を少し後ろに流したこいつは、黙っていれば本当に、一国の主としての気品に満ちていた。
パーティーが最高潮に達した頃、オーケストラがゆったりとしたワルツを奏で始める。
周囲の視線が、一斉に俺たちに集まった。
「……。……レン、まさか」
「おう。俺、練習したんだぜ。前世のダンス教室の動画を思い出しながらな」
レンが、大きな、節くれだった右手を俺の前に差し出す。
「一曲、付き合えよ。……俺の、最高で最強の相棒」
「…………」
拒む理由はいくらでもあった。恥ずかしい、非効率だ、そもそも男同士で。
だが、黄金の瞳に宿る真摯な光を見て、俺は自分の右手を、その熱い掌の上に重ねてしまった。
レンの左手が、俺の腰をしっかりと引き寄せる。
――近い。
会場の騒めきが遠のき、レンの香水の匂いと、隠しきれない野生的な体温だけが俺を包み込む。
「……レン。お前、足を踏んだらマイナス一億ゴールドだからな」
「ははっ、厳しいなぁ。……でも、大丈夫だ。俺がお前を、ちゃんとリードしてやるから」
音楽に合わせて、ゆっくりとステップを踏み出す。
レンの動きは驚くほど滑らかで、俺はただ、彼に身を預けていればよかった。
回る、回る。
視界が白銀と漆黒に溶け合い、俺たちは光の渦の中にいた。
「……カナデ。俺さ、こっちに来て、お前がいてくれて本当に良かったって、毎日思ってるんだ」
耳元で、レンが囁く。
それは、魔王としての宣言ではなく、一人の男としての、震えるような本音だった。
「お前がいない世界なんて、俺にはもう、考えられねーよ。……数字でも計算でも出せない、俺の全部をお前に預けてるんだ」
「…………」
俺は、レンの肩に置いた手に、ぐっと力を込めた。
眼鏡が曇るのを自覚する。
俺だって、同じだ。
お前の無鉄砲さを支え、その笑顔を守るために、俺はこの世界の理を書き換えてきた。
それは単なる仕事でも、友情でも、責任感でもない。
もっと、名付けようのない、温かくて重い何か。
「……。……バカ魔王。……リードが、少し強引なんだよ」
「悪い。……お前を離したくなくてさ」
ダンスが終わり、静まり返る会場。
レンは俺の手を握ったまま、跪くようにして、俺の指先に軽く唇を寄せた。
――観衆から、割れんばかりの拍手が沸き起こる。
リリスが『もう負けましたわー!』と叫び、クロが号泣しているのが見える。
俺は赤くなった顔を伏せ、繋がれた手を少しだけ強く握り返した。
「……一兆ゴールド、減給だ。……でも、……一曲だけなら、また付き合ってやってもいい」
「……っ! おう! 約束だぞ、カナデ!」
建国記念の夜。
俺たちの関係に、ようやく「恋」という項目が、正式に計上された瞬間だった。
じっくりと、ゆっくりと。
二人の物語は、この光溢れるダンスホールから、また新しい一歩を刻み始める。
豪奢なシャンデリアが輝き、魔界中の貴族や魔物たちが着飾って集まっている。
俺――カナデもまた、レンに半ば強制的に誂えられた「白銀の礼服」に身を包んでいた。
「……レン。何度も言うが、俺は裏方だ。こんな目立つ格好をして、ダンスホールの中央に立つ必要はない」
「何言ってんだよ、カナデ。この城をここまで黒字にしたのはお前だ。今日ばかりは、俺の隣で胸を張ってろ」
漆黒の正装に身を包んだレンが、いつも以上の威圧感……ではなく、圧倒的な「華」を纏って俺の前に立つ。
髪を少し後ろに流したこいつは、黙っていれば本当に、一国の主としての気品に満ちていた。
パーティーが最高潮に達した頃、オーケストラがゆったりとしたワルツを奏で始める。
周囲の視線が、一斉に俺たちに集まった。
「……。……レン、まさか」
「おう。俺、練習したんだぜ。前世のダンス教室の動画を思い出しながらな」
レンが、大きな、節くれだった右手を俺の前に差し出す。
「一曲、付き合えよ。……俺の、最高で最強の相棒」
「…………」
拒む理由はいくらでもあった。恥ずかしい、非効率だ、そもそも男同士で。
だが、黄金の瞳に宿る真摯な光を見て、俺は自分の右手を、その熱い掌の上に重ねてしまった。
レンの左手が、俺の腰をしっかりと引き寄せる。
――近い。
会場の騒めきが遠のき、レンの香水の匂いと、隠しきれない野生的な体温だけが俺を包み込む。
「……レン。お前、足を踏んだらマイナス一億ゴールドだからな」
「ははっ、厳しいなぁ。……でも、大丈夫だ。俺がお前を、ちゃんとリードしてやるから」
音楽に合わせて、ゆっくりとステップを踏み出す。
レンの動きは驚くほど滑らかで、俺はただ、彼に身を預けていればよかった。
回る、回る。
視界が白銀と漆黒に溶け合い、俺たちは光の渦の中にいた。
「……カナデ。俺さ、こっちに来て、お前がいてくれて本当に良かったって、毎日思ってるんだ」
耳元で、レンが囁く。
それは、魔王としての宣言ではなく、一人の男としての、震えるような本音だった。
「お前がいない世界なんて、俺にはもう、考えられねーよ。……数字でも計算でも出せない、俺の全部をお前に預けてるんだ」
「…………」
俺は、レンの肩に置いた手に、ぐっと力を込めた。
眼鏡が曇るのを自覚する。
俺だって、同じだ。
お前の無鉄砲さを支え、その笑顔を守るために、俺はこの世界の理を書き換えてきた。
それは単なる仕事でも、友情でも、責任感でもない。
もっと、名付けようのない、温かくて重い何か。
「……。……バカ魔王。……リードが、少し強引なんだよ」
「悪い。……お前を離したくなくてさ」
ダンスが終わり、静まり返る会場。
レンは俺の手を握ったまま、跪くようにして、俺の指先に軽く唇を寄せた。
――観衆から、割れんばかりの拍手が沸き起こる。
リリスが『もう負けましたわー!』と叫び、クロが号泣しているのが見える。
俺は赤くなった顔を伏せ、繋がれた手を少しだけ強く握り返した。
「……一兆ゴールド、減給だ。……でも、……一曲だけなら、また付き合ってやってもいい」
「……っ! おう! 約束だぞ、カナデ!」
建国記念の夜。
俺たちの関係に、ようやく「恋」という項目が、正式に計上された瞬間だった。
じっくりと、ゆっくりと。
二人の物語は、この光溢れるダンスホールから、また新しい一歩を刻み始める。
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