最強勇者パーティーの「普通」担当 〜平凡な村人の僕、伝説の英雄たちに離してもらえません!〜

たら昆布

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2話

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 翌朝。ナギの村の朝は早い。
 僕は朝露に濡れた裏庭で、宿屋の宿泊客たちのシーツを一斉に干していた。
 パンパン、と布を叩く音が心地いい。

「ふー。……これでよし、次は朝食の準備かな」

 腰を伸ばして一息つくと、背後にいつの間にか『キラキラした三人組』が立っていた。
 朝の木漏れ日を反射して、彼らの存在そのものが神々しい。

「……あ、おはようございます。チェックアウトですか? ガンツさんは今、パンを焼いてますけど」

 僕が普通に挨拶すると、リーダーのアレク様が、一晩で何があったのかと思うほど憔悴した(ように見える)顔で僕に歩み寄ってきた。

「テオ……。実は、重大な問題が発生した」
「えっ!? 忘れ物ですか? それとも、お部屋に虫でも出ましたか?」

 慌てる僕に、アレク様は僕の肩にそっと手を置き、悲劇のヒーローのようなトーンで囁いた。
「……魔王戦の後遺症だ。長年の緊張の反動で、我々三人の魔力バランスが崩れてしまった。……このままでは、王都に帰る途中で暴走し、地形を変えてしまうかもしれない」
「えええっ!? 地形を変えるって、それ大惨事じゃないですか!」

 なんてことだ。魔王を倒した英雄たちが、そんな不治の病(?)を抱えていたなんて。
 すると、ヴィンス様が冷静な顔で補足した。

「左様です。……ですが、奇妙な解決策が見つかりました。……君ですよ、テオ」
「……はい?」

 ヴィンス様は長い黒髪を指で払い、冷徹な瞳を僕に向けた。
「君の放つ『究極の平穏(ただの無能とも言いますが)』に触れている間だけ、我々の魔力は安定する。……アレクは君の顔を見ると血圧が下がり、ガイルは君の匂いを嗅ぐと野生の闘争本能が鎮まる。……つまり、我々が社会的に破滅しないためには、しばらく君のそばで療養する必要があるのです」
「テオ! 俺、もう決めた! お前の隣で寝ないと、もうぐっすり眠れないんだ!」

 ガイル様がブンブンと赤い尻尾を振りながら、僕に抱きついてきた。
 大型犬……いや、大きな狼に押しつぶされるような感覚に、僕は目を白黒させる。

「え、ええーっと……。僕のそばにいても、洗濯の手伝いとか、皿洗いとか、そんなことしかさせられませんよ?」
「それがいいんだ!」とアレク様が力強く僕の両手を握った。「君の日常、その欠片に触れることが、今の俺たちにとって何よりの救いなんだ。……滞在費はいくらでも払う。国庫から出してもいい」
「いや、宿代はガンツさんに払ってください。……でも、僕、本当にただの村人ですよ?」

 彼らは真剣そのものだったが、僕からすれば「都会のイケメンたちが、田舎の空気に癒やされてちょっとおかしくなった」ようにしか見えなかった。
 こうして、伝説の勇者パーティーがナギの村に『無期限滞在』することが、村長とガンツさんの即断(金貨の山を見て)によって決まってしまったのだった。

「テオ、今日から俺たちは君の『専属ボディガード兼、雑用助手』だ」
「……アレク様、僕はただの給仕なんですけど」

 僕の平凡な人生に、場違いなBGM(物理的に豪華な英雄たち)が鳴り始めた瞬間だった。
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