無能と捨てられた聖子は隣国の狂犬皇帝に初夜を奪われ執着される~魔力が昂ぶるたびに陛下に抱かれないと壊れてしまいそうです~

たら昆布

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15話

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「……あ、あ……様……っ、ヴォルフ、様……」

魂の契約を交わした瞬間、僕の世界は一変した。
今まで感じていた「欠乏感」という名の激痛が、一気に熱い快感へと書き換えられていく。
僕の魂の最深部に、ヴォルフ陛下の燃えるような魔力が、直接、消えない刻印を刻みつけていくのが分かった。

「……ユキ。もう、お前の中に私以外の魔力が入り込む余地はない。……死ぬまで、お前の心臓を動かすのは私の力だ」

ヴォルフ陛下は僕を円卓の上に仰向けに寝かせ、その細い首筋に、所有を誇示するように深く、深く唇を押し当てた。
吸い上げられるたびに、僕の指先がピリピリと痺れ、身体が弓なりに反る。

これまでは、彼の魔力を外側から吸い取っている感覚だった。
けれど今は違う。
僕の血管の一つひとつ、神経の末端まで、ヴォルフ陛下の緋色の光が駆け巡り、僕の命そのものを支配している。

「……ふぁ、っ……っ、もう……っ、逃げられ……ない……」

「逃がすはずがないだろう。……お前が望んだのだ、ユキ。一生、私の腕の中で、私の毒に侵され続けたいと」

陛下は僕の目尻に溜まった涙を、愛おしそうに舌で掬った。
その碧眼には、狂おしいほどの情熱と、誰にも渡さないという執念が渦巻いている。

僕は、もはや人間としての「個」を失いかけていた。
ヴォルフ陛下が笑えば僕の魂も弾み、彼が怒れば僕の身体は震える。
二人で一つの命。
それは、世界で一番甘美で、最も残酷な「共依存」だった。

――数日後。

「陛下。……エデン教国より、最終的な和解案が届きました」

側近のカイン様が、離宮の寝室の扉越しに、苦渋に満ちた声で告げた。
ヴォルフ陛下は、僕を膝に乗せたまま、不機嫌そうに眉を寄せた。
今の陛下は、一分一秒たりとも僕の身体を離そうとしない。
僕をマントに包み込み、肌と肌を密着させたまま、すべての執務をこの離宮で行っていた。

「和解案だと? どの口が言う。……読み上げろ」

「はっ。……『ユキ様の聖子としての籍を完全に抹消し、ザハト帝国への帰化を認める。その代わり、最後に一度だけ、兄弟としての別れの儀式を行わせてほしい』とのことです」

「……ふざけるな」

ヴォルフ陛下の手が、僕の腰を強く握りしめた。
その指が食い込む痛みが、今の僕には心地よい。

「ユキをハルに合わせるなど、言語道断だ。……あいつらは、まだユキの『核』を諦めていない」

「……ですが陛下。この提案を拒否し続ければ、周辺諸国への『ザハト帝国による聖子の不当拘束』という悪評が広まりかねません。……一度、公の場での会見という形であれば……」

「カイン、貴様……死にたいのか」

部屋の温度が急激に下がる。
陛下の殺気が扉を突き抜け、カイン様が言葉を詰まらせるのが分かった。
僕は、陛下の服をぎゅっと掴み、彼を見上げた。

「……陛下。……大丈夫、です。僕は、陛下のものですから。……ハルが何をしても、僕は……」

「ユキ……。……いや、お前は分かっていない。あいつらの執念は、お前の想像を絶する」

ヴォルフ陛下は僕の額に頭を預け、悔しそうに歯噛みした。
彼は、僕を救うために「魂の契約」という、自身にもリスクのある術を施した。
もし僕が傷つけば、陛下もまた、魂に致命的なダメージを負うのだ。

それを知っているからこそ、陛下は僕を誰にも触れさせたくない。
けれど、エデン教国の策略は、この「愛」をも利用しようとしていた。

――エデン教国の仮宿舎。

「……ヴォルフは必ず、ユキを連れて現れる。……あいつの独占欲は、ユキを自分の目の届かない場所には置けないほどに肥大しているからな」

ハルは、暗い部屋の中で不気味に微笑んだ。
その手には、ユキの魂の波動を強制的に共鳴させ、内部から破裂させるための「呪いの媒介」が握られていた。

「兄弟の別れ……。クク、そうだね。……君の魂を、僕が飲み込んであげるよ、ユキ。……それが、お前にとっての本当の救いなんだから」

ハルの瞳から、一筋の血の涙が流れた。
それは、彼自身もまた、教国の歪な教育によって壊された「犠牲者」であることを示していた。

決戦の日は、間近に迫っていた。
ヴォルフとユキの、魂を賭けた最後の試練。
二人が本当のハッピーエンドを掴むためには、この血塗られた因縁を、愛の力で断ち切らねばならなかった。
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