無能と捨てられた聖子は隣国の狂犬皇帝に初夜を奪われ執着される~魔力が昂ぶるたびに陛下に抱かれないと壊れてしまいそうです~

たら昆布

文字の大きさ
14 / 20

14話

しおりを挟む
謁見の間からハルが撃退されたという報告を聞き、僕は離宮の寝室で安堵の息を漏らした。
ヴォルフ陛下が僕の異変に気づき、ハルの魔力を弾いてくれたのだ。
やはり僕は、陛下の魔力なしでは生きていけない。

その夜。
僕の元へ戻ってきたヴォルフ陛下は、普段にも増して険しい表情をしていた。
僕を腕の中に閉じ込めるその抱擁は、壊れるほどに強い。

「ユキ。……あいつは、お前を遠隔で操ろうとしていた。今、お前を襲っている虚無感は、あいつの魔力が遠隔で、お前の身体から活力を吸い取ろうとしている証拠だ」

「……っ。どうしたら、いいですか、陛下……?」

僕は不安に震えながら、陛下の胸に顔をうずめた。
ハルが僕を救おうとしているのか、それとも僕を利用しようとしているのか、もう分からなくなっていた。
ただ、陛下の腕の中にいる時だけが、僕の唯一の居場所だった。

「……一つだけ、確実な方法がある。……そして、お前は二度と私から離れられなくなる」

ヴォルフ陛下の声が、低く、しかし甘く響く。
彼の言葉に、僕の身体は本能的に反応し、熱を帯びる。

「……どんな方法でも、陛下が望むなら……」

「フン……。私と同じように、お前も私なしではいられなくなったか。……よし」

陛下は僕を抱き上げると、そのまま寝室の中央に置かれた大きな円卓に僕を座らせた。
そして、自分の左手の指から、深紅の血を一滴、円卓に落とす。
すると、円卓の表面に描かれた魔法陣が、みるみるうちに輝き始めた。

「これは『魂の契約(ソウル・バインド)』。……私の魔力を、お前の魂に直接刻み込む。そうすれば、遠隔で魔力を吸い取ろうとする術は、すべて私の魔力によって弾き返される」

「魂に……?」

「ああ。……その代わり、お前はもう二度と、私以外の男の魔力を受け入れることもできなくなる。そして、私の魔力が絶えれば、お前もまた、魂の核から消滅するだろう」

それは、究極の選択だった。
ヴォルフ陛下の命が、僕の命と直結する。
けれど、もう僕には、彼なしで生きる選択肢など残されていなかった。

「……お願いします、陛下。僕を、陛下だけのものにしてください……っ!」

僕は、ヴォルフ陛下の首筋に腕を回し、懇願するように唇を寄せた。
彼の魔力が、僕の身体に、魂に、深く刻み込まれていく。
背中の結晶が砕けて以来、初めて味わう、満たされるような感覚だった。

「ユキ……っ。お前は、本当に……」

ヴォルフ陛下の碧眼が、熱く潤む。
彼は僕の唇を貪るように奪い、その熱い魔力を、魂の底まで注ぎ込んだ。
契約の儀式は、互いのすべてを差し出す、甘くも切ない交わりの中で行われた。
僕の身体中が、彼の魔力で満たされ、魂が、ヴォルフという名で上書きされていく。

――その頃。
エデン教国の離宮で、エドワード王子とハルは、焦燥に駆られていた。

「くそっ、ザハトの狂犬め! ユキを遠隔で操ろうとした術まで、あの忌々しい魔力で弾き返されてしまった!」

エドワード王子が、テーブルを拳で叩きつける。
ハルの顔色も悪く、あのヴォルフの圧倒的な魔力の前に、自分の計画が狂わされていることに苛立っていた。

「……やはり、あの男、ユキをただの『器』とは見ていない。厄介なことになったな」

「厄介だと? このままでは我が国の国力は尽き果てる! ユキの『神の核』がなければ、この国はもはや維持できんのだ!」

エドワード王子は、懐から一枚の古びた羊皮紙を取り出した。
そこには、僕の身体の奥底に眠る「魔力核」を、強制的に活性化させ、体外へ引き出すための、禁断の術式が書かれている。

「……ハル。この術を使えば、ユキの魂は砕けるだろう。だが、我が国は救われる。……ユキの命など、どうでもいい」

「……そうですね。最初から、彼は私たちの『道具』でしたから」

ハルは冷酷な笑みを浮かべた。
彼の心には、双子の兄である僕への情など、ひとかけらも残っていなかった。
彼にとって僕は、常に自分と比較される「劣等品」であり、利用すべき「聖器」でしかなかったのだ。

「……だが、この術は、ユキの身体を完全に砕く。……あのヴォルフが、黙って見ているはずがない」

「ええ。だからこそ、周到な準備が必要でしょう。……ザハトの狂犬を油断させるために、偽りの友好を装い、彼の注意を逸らす。その隙に、離宮へ忍び込み、術を起動させるのです」

エドワード王子とハルの瞳には、冷徹な勝利への執念が宿っていた。
彼らは、僕の魂を犠牲にしてでも、この国を救うため、最後の計画を実行に移そうとしていたのだ。

僕とヴォルフ陛下が魂を重ねる誓いを交わしたその夜、破滅へのカウントダウンが、静かに、けれど確実に進んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

処理中です...