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14話
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謁見の間からハルが撃退されたという報告を聞き、僕は離宮の寝室で安堵の息を漏らした。
ヴォルフ陛下が僕の異変に気づき、ハルの魔力を弾いてくれたのだ。
やはり僕は、陛下の魔力なしでは生きていけない。
その夜。
僕の元へ戻ってきたヴォルフ陛下は、普段にも増して険しい表情をしていた。
僕を腕の中に閉じ込めるその抱擁は、壊れるほどに強い。
「ユキ。……あいつは、お前を遠隔で操ろうとしていた。今、お前を襲っている虚無感は、あいつの魔力が遠隔で、お前の身体から活力を吸い取ろうとしている証拠だ」
「……っ。どうしたら、いいですか、陛下……?」
僕は不安に震えながら、陛下の胸に顔をうずめた。
ハルが僕を救おうとしているのか、それとも僕を利用しようとしているのか、もう分からなくなっていた。
ただ、陛下の腕の中にいる時だけが、僕の唯一の居場所だった。
「……一つだけ、確実な方法がある。……そして、お前は二度と私から離れられなくなる」
ヴォルフ陛下の声が、低く、しかし甘く響く。
彼の言葉に、僕の身体は本能的に反応し、熱を帯びる。
「……どんな方法でも、陛下が望むなら……」
「フン……。私と同じように、お前も私なしではいられなくなったか。……よし」
陛下は僕を抱き上げると、そのまま寝室の中央に置かれた大きな円卓に僕を座らせた。
そして、自分の左手の指から、深紅の血を一滴、円卓に落とす。
すると、円卓の表面に描かれた魔法陣が、みるみるうちに輝き始めた。
「これは『魂の契約(ソウル・バインド)』。……私の魔力を、お前の魂に直接刻み込む。そうすれば、遠隔で魔力を吸い取ろうとする術は、すべて私の魔力によって弾き返される」
「魂に……?」
「ああ。……その代わり、お前はもう二度と、私以外の男の魔力を受け入れることもできなくなる。そして、私の魔力が絶えれば、お前もまた、魂の核から消滅するだろう」
それは、究極の選択だった。
ヴォルフ陛下の命が、僕の命と直結する。
けれど、もう僕には、彼なしで生きる選択肢など残されていなかった。
「……お願いします、陛下。僕を、陛下だけのものにしてください……っ!」
僕は、ヴォルフ陛下の首筋に腕を回し、懇願するように唇を寄せた。
彼の魔力が、僕の身体に、魂に、深く刻み込まれていく。
背中の結晶が砕けて以来、初めて味わう、満たされるような感覚だった。
「ユキ……っ。お前は、本当に……」
ヴォルフ陛下の碧眼が、熱く潤む。
彼は僕の唇を貪るように奪い、その熱い魔力を、魂の底まで注ぎ込んだ。
契約の儀式は、互いのすべてを差し出す、甘くも切ない交わりの中で行われた。
僕の身体中が、彼の魔力で満たされ、魂が、ヴォルフという名で上書きされていく。
――その頃。
エデン教国の離宮で、エドワード王子とハルは、焦燥に駆られていた。
「くそっ、ザハトの狂犬め! ユキを遠隔で操ろうとした術まで、あの忌々しい魔力で弾き返されてしまった!」
エドワード王子が、テーブルを拳で叩きつける。
ハルの顔色も悪く、あのヴォルフの圧倒的な魔力の前に、自分の計画が狂わされていることに苛立っていた。
「……やはり、あの男、ユキをただの『器』とは見ていない。厄介なことになったな」
「厄介だと? このままでは我が国の国力は尽き果てる! ユキの『神の核』がなければ、この国はもはや維持できんのだ!」
エドワード王子は、懐から一枚の古びた羊皮紙を取り出した。
そこには、僕の身体の奥底に眠る「魔力核」を、強制的に活性化させ、体外へ引き出すための、禁断の術式が書かれている。
「……ハル。この術を使えば、ユキの魂は砕けるだろう。だが、我が国は救われる。……ユキの命など、どうでもいい」
「……そうですね。最初から、彼は私たちの『道具』でしたから」
ハルは冷酷な笑みを浮かべた。
彼の心には、双子の兄である僕への情など、ひとかけらも残っていなかった。
彼にとって僕は、常に自分と比較される「劣等品」であり、利用すべき「聖器」でしかなかったのだ。
「……だが、この術は、ユキの身体を完全に砕く。……あのヴォルフが、黙って見ているはずがない」
「ええ。だからこそ、周到な準備が必要でしょう。……ザハトの狂犬を油断させるために、偽りの友好を装い、彼の注意を逸らす。その隙に、離宮へ忍び込み、術を起動させるのです」
エドワード王子とハルの瞳には、冷徹な勝利への執念が宿っていた。
彼らは、僕の魂を犠牲にしてでも、この国を救うため、最後の計画を実行に移そうとしていたのだ。
僕とヴォルフ陛下が魂を重ねる誓いを交わしたその夜、破滅へのカウントダウンが、静かに、けれど確実に進んでいた。
ヴォルフ陛下が僕の異変に気づき、ハルの魔力を弾いてくれたのだ。
やはり僕は、陛下の魔力なしでは生きていけない。
その夜。
僕の元へ戻ってきたヴォルフ陛下は、普段にも増して険しい表情をしていた。
僕を腕の中に閉じ込めるその抱擁は、壊れるほどに強い。
「ユキ。……あいつは、お前を遠隔で操ろうとしていた。今、お前を襲っている虚無感は、あいつの魔力が遠隔で、お前の身体から活力を吸い取ろうとしている証拠だ」
「……っ。どうしたら、いいですか、陛下……?」
僕は不安に震えながら、陛下の胸に顔をうずめた。
ハルが僕を救おうとしているのか、それとも僕を利用しようとしているのか、もう分からなくなっていた。
ただ、陛下の腕の中にいる時だけが、僕の唯一の居場所だった。
「……一つだけ、確実な方法がある。……そして、お前は二度と私から離れられなくなる」
ヴォルフ陛下の声が、低く、しかし甘く響く。
彼の言葉に、僕の身体は本能的に反応し、熱を帯びる。
「……どんな方法でも、陛下が望むなら……」
「フン……。私と同じように、お前も私なしではいられなくなったか。……よし」
陛下は僕を抱き上げると、そのまま寝室の中央に置かれた大きな円卓に僕を座らせた。
そして、自分の左手の指から、深紅の血を一滴、円卓に落とす。
すると、円卓の表面に描かれた魔法陣が、みるみるうちに輝き始めた。
「これは『魂の契約(ソウル・バインド)』。……私の魔力を、お前の魂に直接刻み込む。そうすれば、遠隔で魔力を吸い取ろうとする術は、すべて私の魔力によって弾き返される」
「魂に……?」
「ああ。……その代わり、お前はもう二度と、私以外の男の魔力を受け入れることもできなくなる。そして、私の魔力が絶えれば、お前もまた、魂の核から消滅するだろう」
それは、究極の選択だった。
ヴォルフ陛下の命が、僕の命と直結する。
けれど、もう僕には、彼なしで生きる選択肢など残されていなかった。
「……お願いします、陛下。僕を、陛下だけのものにしてください……っ!」
僕は、ヴォルフ陛下の首筋に腕を回し、懇願するように唇を寄せた。
彼の魔力が、僕の身体に、魂に、深く刻み込まれていく。
背中の結晶が砕けて以来、初めて味わう、満たされるような感覚だった。
「ユキ……っ。お前は、本当に……」
ヴォルフ陛下の碧眼が、熱く潤む。
彼は僕の唇を貪るように奪い、その熱い魔力を、魂の底まで注ぎ込んだ。
契約の儀式は、互いのすべてを差し出す、甘くも切ない交わりの中で行われた。
僕の身体中が、彼の魔力で満たされ、魂が、ヴォルフという名で上書きされていく。
――その頃。
エデン教国の離宮で、エドワード王子とハルは、焦燥に駆られていた。
「くそっ、ザハトの狂犬め! ユキを遠隔で操ろうとした術まで、あの忌々しい魔力で弾き返されてしまった!」
エドワード王子が、テーブルを拳で叩きつける。
ハルの顔色も悪く、あのヴォルフの圧倒的な魔力の前に、自分の計画が狂わされていることに苛立っていた。
「……やはり、あの男、ユキをただの『器』とは見ていない。厄介なことになったな」
「厄介だと? このままでは我が国の国力は尽き果てる! ユキの『神の核』がなければ、この国はもはや維持できんのだ!」
エドワード王子は、懐から一枚の古びた羊皮紙を取り出した。
そこには、僕の身体の奥底に眠る「魔力核」を、強制的に活性化させ、体外へ引き出すための、禁断の術式が書かれている。
「……ハル。この術を使えば、ユキの魂は砕けるだろう。だが、我が国は救われる。……ユキの命など、どうでもいい」
「……そうですね。最初から、彼は私たちの『道具』でしたから」
ハルは冷酷な笑みを浮かべた。
彼の心には、双子の兄である僕への情など、ひとかけらも残っていなかった。
彼にとって僕は、常に自分と比較される「劣等品」であり、利用すべき「聖器」でしかなかったのだ。
「……だが、この術は、ユキの身体を完全に砕く。……あのヴォルフが、黙って見ているはずがない」
「ええ。だからこそ、周到な準備が必要でしょう。……ザハトの狂犬を油断させるために、偽りの友好を装い、彼の注意を逸らす。その隙に、離宮へ忍び込み、術を起動させるのです」
エドワード王子とハルの瞳には、冷徹な勝利への執念が宿っていた。
彼らは、僕の魂を犠牲にしてでも、この国を救うため、最後の計画を実行に移そうとしていたのだ。
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