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16話
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ゼノスの暗殺計画。
それは、エリュシオンを「聖皇帝」として傀儡にしようと目論む保守派貴族たちが、ゼノスの食事に魔力を霧散させる毒を混入させるという卑劣なものだった。
その夜、晩餐の席。
ゼノスがワインに手を伸ばそうとした瞬間、エリュシオンの指先がそのグラスを凍りつかせた。
パキィィィンッ!
「……エリュシオン?」
ゼノスが怪訝そうに眉を寄せた。しかし、エリュシオンの瞳はかつてないほど鋭く、冷徹な光を宿していた。
「ゼノス、そのワインを飲まないで。……そこには、あなたの魔力を奪う『毒』が入っているわ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、広間の扉が乱暴に開かれた。
「皇帝ゼノスを拘束せよ! 聖皇帝エリュシオン様を偽りの呪いから解き放つのだ!」
保守派に買収された近衛兵たちが、抜刀してなだれ込んでくる。
しかし、ゼノスが立ち上がるよりも早く、広間の空気が極低温へと変貌した。
「……僕の、ゼノスに。……誰が、触れていいと言ったの?」
エリュシオンが静かに立ち上がると、彼の足元から白銀の氷が波のように広がり、襲いかかる兵士たちの足を次々と凍らせ、床に縫い付けた。
それは、制御不能な暴走ではない。エリュシオンの明確な殺意に基づいた、完璧な魔力操作だった。
「ひ、ひぃ……! 聖皇帝様、何を……我らは貴方様をお助けしようと……!」
「助ける? 僕のたった一人の家族を殺そうとしておいて?」
エリュシオンはゆっくりと歩を進める。その背中からは、冷気を纏った美しい氷の翼が、神々しく、そして禍々しく広がっていた。
彼は怯える貴族の首筋に、氷で象られた鋭い剣を突き立てた。
「僕は、この人の腕の中で死ねるのなら、それだけで幸せだった。……それを邪魔するなら、この国ごと、永遠の冬に閉ざしてあげる」
その冷徹なまでの美しさと力に、反乱軍は戦意を喪失し、その場に平伏した。
一部始終を見ていたゼノスは、背後からエリュシオンの細い腰を抱き寄せた。
毒の影響で微かに魔力が揺らいでいたが、その瞳には恐怖ではなく、陶酔にも似た情熱が宿っていた。
「……あぁ、これだ。これこそが、俺が見初めた真の輝きだ。エリュシオン、お前はやはり俺を狂わせる」
「ゼノス……。僕、もう怖くないよ。あなたを守るためなら、僕は『野獣』にだってなる」
エリュシオンはゼノスの腕の中で振り返り、自ら彼の唇に深い接吻を贈った。
これまでの受動的な愛ではなく、相手を侵食するような、強い愛の証。
「お前が俺を守るというのなら、俺の身体も魂も、すべてお前に捧げよう」
ゼノスはエリュシオンをそのまま抱き上げ、混乱する広間を捨てて寝室へと向かった。
毒で弱まったはずの身体が、エリュシオンの強い愛に触れたことで、より一層激しい熱を帯びていく。
その夜、二人の立場は微かに逆転した。
エリュシオンは、ゼノスの上に跨り、その首筋に己の紋章を刻み込むように愛撫した。
「ゼノス……。僕を、二度と離さないで」
「あぁ……。お前が俺を支配しろ、エリュシオン……」
狂おしい執着は、双方向の依存へと昇華され、二人の絆は絶対的なものとなった。
だが、その騒乱の隙を突き、旧王国の「真の黒幕」が、帝国の呪具を狙って皇宮の最深部へと侵入していた――。
それは、エリュシオンを「聖皇帝」として傀儡にしようと目論む保守派貴族たちが、ゼノスの食事に魔力を霧散させる毒を混入させるという卑劣なものだった。
その夜、晩餐の席。
ゼノスがワインに手を伸ばそうとした瞬間、エリュシオンの指先がそのグラスを凍りつかせた。
パキィィィンッ!
「……エリュシオン?」
ゼノスが怪訝そうに眉を寄せた。しかし、エリュシオンの瞳はかつてないほど鋭く、冷徹な光を宿していた。
「ゼノス、そのワインを飲まないで。……そこには、あなたの魔力を奪う『毒』が入っているわ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、広間の扉が乱暴に開かれた。
「皇帝ゼノスを拘束せよ! 聖皇帝エリュシオン様を偽りの呪いから解き放つのだ!」
保守派に買収された近衛兵たちが、抜刀してなだれ込んでくる。
しかし、ゼノスが立ち上がるよりも早く、広間の空気が極低温へと変貌した。
「……僕の、ゼノスに。……誰が、触れていいと言ったの?」
エリュシオンが静かに立ち上がると、彼の足元から白銀の氷が波のように広がり、襲いかかる兵士たちの足を次々と凍らせ、床に縫い付けた。
それは、制御不能な暴走ではない。エリュシオンの明確な殺意に基づいた、完璧な魔力操作だった。
「ひ、ひぃ……! 聖皇帝様、何を……我らは貴方様をお助けしようと……!」
「助ける? 僕のたった一人の家族を殺そうとしておいて?」
エリュシオンはゆっくりと歩を進める。その背中からは、冷気を纏った美しい氷の翼が、神々しく、そして禍々しく広がっていた。
彼は怯える貴族の首筋に、氷で象られた鋭い剣を突き立てた。
「僕は、この人の腕の中で死ねるのなら、それだけで幸せだった。……それを邪魔するなら、この国ごと、永遠の冬に閉ざしてあげる」
その冷徹なまでの美しさと力に、反乱軍は戦意を喪失し、その場に平伏した。
一部始終を見ていたゼノスは、背後からエリュシオンの細い腰を抱き寄せた。
毒の影響で微かに魔力が揺らいでいたが、その瞳には恐怖ではなく、陶酔にも似た情熱が宿っていた。
「……あぁ、これだ。これこそが、俺が見初めた真の輝きだ。エリュシオン、お前はやはり俺を狂わせる」
「ゼノス……。僕、もう怖くないよ。あなたを守るためなら、僕は『野獣』にだってなる」
エリュシオンはゼノスの腕の中で振り返り、自ら彼の唇に深い接吻を贈った。
これまでの受動的な愛ではなく、相手を侵食するような、強い愛の証。
「お前が俺を守るというのなら、俺の身体も魂も、すべてお前に捧げよう」
ゼノスはエリュシオンをそのまま抱き上げ、混乱する広間を捨てて寝室へと向かった。
毒で弱まったはずの身体が、エリュシオンの強い愛に触れたことで、より一層激しい熱を帯びていく。
その夜、二人の立場は微かに逆転した。
エリュシオンは、ゼノスの上に跨り、その首筋に己の紋章を刻み込むように愛撫した。
「ゼノス……。僕を、二度と離さないで」
「あぁ……。お前が俺を支配しろ、エリュシオン……」
狂おしい執着は、双方向の依存へと昇華され、二人の絆は絶対的なものとなった。
だが、その騒乱の隙を突き、旧王国の「真の黒幕」が、帝国の呪具を狙って皇宮の最深部へと侵入していた――。
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