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22話
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オリハルコンで要塞化された寝室と、ゼノス様が二十四時間展開する「接触感知魔力」のおかげで、僕のプライバシーはほぼゼロになった。
どこへ行くにもゼノス様が付いてくるか、あるいは魔力の糸で繋がれているような状態だ。
「ゼノス様、いくらなんでも退屈です。読書も肖像画の鑑賞(※自分の顔)も飽きました。せめて何か、生産的なことをさせてください!」
僕がベッドの上でジタバタと抗議すると、ゼノス様は渋々といった顔で、城のキッチンへの立ち入りを許可してくれた。ただし、マーサさんと数名の近衛兵(僕に触れない距離を保つ訓練を受けた者たち)が監視するという条件付きだ。
「……よし、今日はクッキーを作ろう」
僕は小麦粉を練り、砂糖を加え、隠し味に僕自身の魔力をほんの少しだけ……本当に、耳かき一杯分くらいの「癒やしの光」を混ぜ込んだ。
焼き上がったクッキーは、黄金色に輝き、キッチン中に天国のような甘い香りを漂わせた。
「……何だ、この香りは。俺の鼻腔をくすぐり、魔力回路を活性化させるこの芳香は……」
鼻をヒクヒクさせながら、魔王様が執務を放り出してやってきた。
僕は焼き立ての一枚を、彼の口元へ運ぶ。
「はい、ゼノス様。試作の一枚です。あーん」
ゼノス様は、僕の指先を軽く舐めるようにしてクッキーを口に含んだ。
その瞬間。
ゴォォォォォォッ!!
ゼノス様の背後から、噴火のような魔力の柱が立ち上がった。
彼の紅い瞳がカッと見開かれ、全身の筋肉が震えている。
「陛下!? 大丈夫ですか!?」
「……う、美味すぎる。……何だこれは、エルヴィン。……口に入れた瞬間、お前の優しさと愛が弾け、俺の魔力回路の隅々まで洗浄していくような……。ああ、体中の魔力が、かつてないほどに澄み渡っていく……!!」
ゼノス様は、まるで極上の美酒に酔いしれた詩人のように、クッキーの感想を熱烈に語り始めた。
だが、その直後、彼の顔が般若のように豹変した。
「……カイン! 今すぐこのキッチンを封鎖しろ! このクッキーのレシピを知る者は、俺が記憶を消去した後に地下牢へ送る! このクッキーを口にしていいのは世界で俺一人だ! 万が一、他の男……例えばあのガキや第一王子がこれを一口でも食べようものなら、俺は人類を滅ぼす!!」
「だから極端なんですよ!!」
僕は叫びながら、残りのクッキーを慌てて守った。
カインさんが眼鏡を曇らせながら、どこからともなく現れる。
「……陛下。エルヴィン様の魔力が混ざったこの菓子は、単なる嗜好品ではありません。……一口食べた騎士たちの魔力出力が二倍に跳ね上がっています。これは戦略兵器級の『超回復薬』です」
「戦略兵器だと!? ますます部下になど食わせられん! エルヴィンの愛は俺だけのものだ!」
「いいえ、陛下。この菓子を全軍に配備すれば、魔王軍は文字通り不死身の軍隊となります。……エルヴィン様、どうか陛下を説得して、定例の配給用にお作りいただけませんか?」
カインさんが、切実な目で僕に縋ってくる。
ゼノス様は僕の腰をがっしりと抱き寄せ、クッキーの皿を奪い取ると、一枚一枚を慈しむように食べ始めた。
「……ダメだ。エルヴィンが汗を流して作ったものを、汚らわしい男どもに分けるなど断固拒否する。……エルヴィン。お前はもう、俺専用の厨房から出るな。ここで、俺のためだけに一生菓子を焼き続けるがいい」
「それは監禁の種類が変わっただけじゃないですか! ……あ、でも、そんなに喜んでくれるなら……。じゃあ、ゼノス様。お仕事頑張ってくれたら、また明日も作ってあげますよ?」
僕が頭を撫でてあげると、最強の魔王様は「……う。……明日も、か? 約束だぞ?」と、急に素直な子供のような顔になった。
(……この人、本当に僕に弱いんだなぁ)
結局、エルヴィンの「魔力クッキー」は、魔王軍の秘密兵器として(ゼノス様の厳しい検閲をパスしたものだけが)配布されることになり、魔王軍の士気は一気に爆上がりした。
そしてその夜、クッキーで魔力がみなぎりすぎたゼノス様が、「お前の菓子のおかげで腰が軽い」と言って、僕をベッドの上で何度も何度も「おかわり」し続けたのは、もはや逃れられない運命だった。
どこへ行くにもゼノス様が付いてくるか、あるいは魔力の糸で繋がれているような状態だ。
「ゼノス様、いくらなんでも退屈です。読書も肖像画の鑑賞(※自分の顔)も飽きました。せめて何か、生産的なことをさせてください!」
僕がベッドの上でジタバタと抗議すると、ゼノス様は渋々といった顔で、城のキッチンへの立ち入りを許可してくれた。ただし、マーサさんと数名の近衛兵(僕に触れない距離を保つ訓練を受けた者たち)が監視するという条件付きだ。
「……よし、今日はクッキーを作ろう」
僕は小麦粉を練り、砂糖を加え、隠し味に僕自身の魔力をほんの少しだけ……本当に、耳かき一杯分くらいの「癒やしの光」を混ぜ込んだ。
焼き上がったクッキーは、黄金色に輝き、キッチン中に天国のような甘い香りを漂わせた。
「……何だ、この香りは。俺の鼻腔をくすぐり、魔力回路を活性化させるこの芳香は……」
鼻をヒクヒクさせながら、魔王様が執務を放り出してやってきた。
僕は焼き立ての一枚を、彼の口元へ運ぶ。
「はい、ゼノス様。試作の一枚です。あーん」
ゼノス様は、僕の指先を軽く舐めるようにしてクッキーを口に含んだ。
その瞬間。
ゴォォォォォォッ!!
ゼノス様の背後から、噴火のような魔力の柱が立ち上がった。
彼の紅い瞳がカッと見開かれ、全身の筋肉が震えている。
「陛下!? 大丈夫ですか!?」
「……う、美味すぎる。……何だこれは、エルヴィン。……口に入れた瞬間、お前の優しさと愛が弾け、俺の魔力回路の隅々まで洗浄していくような……。ああ、体中の魔力が、かつてないほどに澄み渡っていく……!!」
ゼノス様は、まるで極上の美酒に酔いしれた詩人のように、クッキーの感想を熱烈に語り始めた。
だが、その直後、彼の顔が般若のように豹変した。
「……カイン! 今すぐこのキッチンを封鎖しろ! このクッキーのレシピを知る者は、俺が記憶を消去した後に地下牢へ送る! このクッキーを口にしていいのは世界で俺一人だ! 万が一、他の男……例えばあのガキや第一王子がこれを一口でも食べようものなら、俺は人類を滅ぼす!!」
「だから極端なんですよ!!」
僕は叫びながら、残りのクッキーを慌てて守った。
カインさんが眼鏡を曇らせながら、どこからともなく現れる。
「……陛下。エルヴィン様の魔力が混ざったこの菓子は、単なる嗜好品ではありません。……一口食べた騎士たちの魔力出力が二倍に跳ね上がっています。これは戦略兵器級の『超回復薬』です」
「戦略兵器だと!? ますます部下になど食わせられん! エルヴィンの愛は俺だけのものだ!」
「いいえ、陛下。この菓子を全軍に配備すれば、魔王軍は文字通り不死身の軍隊となります。……エルヴィン様、どうか陛下を説得して、定例の配給用にお作りいただけませんか?」
カインさんが、切実な目で僕に縋ってくる。
ゼノス様は僕の腰をがっしりと抱き寄せ、クッキーの皿を奪い取ると、一枚一枚を慈しむように食べ始めた。
「……ダメだ。エルヴィンが汗を流して作ったものを、汚らわしい男どもに分けるなど断固拒否する。……エルヴィン。お前はもう、俺専用の厨房から出るな。ここで、俺のためだけに一生菓子を焼き続けるがいい」
「それは監禁の種類が変わっただけじゃないですか! ……あ、でも、そんなに喜んでくれるなら……。じゃあ、ゼノス様。お仕事頑張ってくれたら、また明日も作ってあげますよ?」
僕が頭を撫でてあげると、最強の魔王様は「……う。……明日も、か? 約束だぞ?」と、急に素直な子供のような顔になった。
(……この人、本当に僕に弱いんだなぁ)
結局、エルヴィンの「魔力クッキー」は、魔王軍の秘密兵器として(ゼノス様の厳しい検閲をパスしたものだけが)配布されることになり、魔王軍の士気は一気に爆上がりした。
そしてその夜、クッキーで魔力がみなぎりすぎたゼノス様が、「お前の菓子のおかげで腰が軽い」と言って、僕をベッドの上で何度も何度も「おかわり」し続けたのは、もはや逃れられない運命だった。
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