婚約破棄された魔力供給令息は絶倫魔王に愛し尽くされる~「お前の魔力、美味すぎて止まらない」と夜通し搾り取られています!~

たら昆布

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26話

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 平和だった魔王城の朝は、一通の宣戦布告によって切り裂かれた。
 かつて僕を捨てた母国が、周辺諸国と同盟を結び、「魔王による聖なる供給体の拉致」を大義名分として進軍を開始したのだ。

 だが、報告に訪れたカインさんの顔は、いつになく険しかった。
「……陛下、エルヴィン様。敵軍の先鋒は、人間の兵士ではありません。……あれは、『人形』です」

 映し出された遠見の魔法映像に、僕は息を呑んだ。
 白銀の甲冑に身を包んだ数千の兵士たち。その兜の下から覗く顔は、すべて――僕と同じ顔(・・・・・・)をしていた。
 ニコが僕の髪や血液から作り出した、魂のない複製体(クローン)。彼らは無機質な光を放ちながら、機械的な動きで魔王領の村々を焼き払っている。

「……僕の、顔……。ひどい、あんなのってないよ……っ」

 自分の姿をした人形が蹂躙を行う光景に、僕は吐き気を覚えた。
 その時、僕の肩を、砕けんばかりの強い力で抱きしめる手があった。

「――ニコ。貴様、これほどまでに俺を愚弄するか」

 隣に立つゼノス様から、黒い稲妻が奔走した。
 その殺気は、オリハルコンの壁さえもミシリと歪ませ、謁見の間の大理石を砂へと変えていく。
 ゼノス様の紅い瞳は、もはや理性の色を失い、ドロドロとした原初の破壊衝動に染まっていた。

「俺のエルヴィンの尊厳を汚し、その美しい貌を、あのような紛い物の道具に写し取るとは……。……許さん。断じて、許さんぞ」

「ゼノス、様……?」

 彼の姿が、歪み始めた。
 いつも纏っている人間の皮が内側から弾け飛ぶように、巨大な魔力の渦が彼を包み込む。
 背中からは六枚の漆黒の翼が展開され、頭部には天を突くような四本の角が、王冠のようにそびえ立つ。
 それは、伝説に語られる『原初の魔王』――神との戦いに唯一勝利したと言われる、ゼノス様の真の姿だった。

「エルヴィン。……ここで見ていろ。俺が、お前の名を汚すゴミ共を、この世界の塵一つ残さず消滅させてくる」

「待ってください、ゼノス様! 一人で行くつもりですか!?」

 僕は思わず彼の漆黒の衣装を掴んだ。
 真の姿となったゼノス様は、触れるだけで魂が凍りつきそうなほどの冷気を纏っている。だが、僕が触れた瞬間、その冷気が一瞬で「陽だまりのような熱」へと変わった。
 彼は振り返り、鋭い爪を持つ指先で、優しく僕の頬を撫でる。

「……案ずるな。俺はお前のために、この世界を支配したのだ。……お前を悲しませる世界など、俺には必要ない」

「ダメです! 壊すことばっかり考えないで! ……僕も、一緒に行きます」

「何だと……!? 危険だと言っているだろう!」

「僕がいれば、ゼノス様はもっと強くなれるんでしょ? ……あの偽物たちの魔力を、僕の『浄化』で無力化します。……それに、ゼノス様が一人で暴走して、どこか遠くへ行っちゃいそうで怖いんです」

 僕は彼の胸に飛び込んだ。
 魔王の真の姿は恐ろしいはずなのに、その鼓動は、僕を求めて激しく打ち鳴らされている。
 ゼノス様は絶句したあと、深く、深いため息をついた。

「……全く。お前という奴は、この俺をどこまでダメにするつもりだ。……わかった。離れるなよ、エルヴィン。……一秒でも俺の腕から離れたら、その瞬間に世界を滅ぼすからな」

「はいはい、わかってますよ」

 僕たちはカインさんに後を任せ、魔王軍の先頭に立つべく、飛竜を呼び寄せた。
 
 戦場は、白銀と黒の対比に染まっていた。
 ニコが操る複製体たちの軍勢が、光の槍を放つ。
 だが、ゼノス様が指を一振りするだけで、その槍は黒い炎に飲み込まれ、逆に敵陣を焼き尽くす流星へと変わった。

「見ろ、ニコ! これがお前の欲しがった『本物』の力だ!」

 ゼノス様は僕を左腕でしっかりと抱き抱え、右手に顕現させた魔剣を振るう。
 僕は彼の背中で、ペンダントの力を全開にした。
 黄金色の光がゼノス様の翼を縁取り、漆黒の魔王が、まるで救済の神のような神々しさを纏う。

「ん、ぁあ……っ、ゼノス様、魔力が、溢れちゃう……っ!」

「食い止めろ、エルヴィン! お前の愛で、俺の破壊衝動を繋ぎ止めておけ! ……俺を人間に留めておけるのは、お前のその熱い供給だけなのだからな!」

 戦場のど真ん中、数万の敵軍に囲まれながら、ゼノス様は僕の首筋に深く、深く牙を立てた。
 供給体としての僕が放つ絶頂の魔力が、魔王の剣に宿り、一振りで大地を裂き、山を砕く。
 
 それは、戦争という名の「究極の愛の儀式」だった。
 僕たちを阻むものは、もはやこの世界のどこにも存在しない。
 
 白銀の空の下、僕とゼノス様は、二人だけの世界で重なり合いながら、元凶であるニコが待つ王都へと、破竹の勢いで進撃を開始するのだった。
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