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13話
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翌朝。宿舎の窓を開けると、いつも以上に熱気を帯びた咆哮が中庭から響いてきた。
「……おや、ハル様。本日は少々お早いお目覚めですね」
背後から音もなく現れたジークが、手際よくハルの身なりを整えていく。
ハルは目を擦りながら、階下で繰り広げられている異様な光景に釘付けになった。
「ジークさん、今日のみんな、なんだか……すごく張り切ってませんか?」
「ええ。ハル様が見学に来られる可能性があると聞き、彼らの『野性』が目覚めてしまったようです」
ハルがギルバートたちに伴われて中庭のバルコニーに姿を見せた瞬間、訓練場の空気が爆発した。
「ハル様が見ておられるぞ! 全員、最高の武勇を示せ!」
ギルバートの号令と共に、獣人騎士たちが一斉に動き出す。
この世界において、強い獣人が己の肉体や技を披露する行為は、単なる訓練ではない。それは、上位個体や「守るべき番」に対して行う、根源的な求愛と忠誠のアピール(デモンストレーション)なのだ。
「ハル様、見ててください! 俺の槍捌き、世界一速いですから!」
銀狼のカイルが、目にも止まらぬ速さで木人を突き抜く。
そのたびに銀色の尻尾が風を切り、ハルへ向けて「褒めて!」と言わんばかりの熱視線を送ってくる。
「……ふん、速いだけが能ではない。ハル、真の強さというものを見せてやろう」
隣国から居座り中の虎の王子・タイガが、巨大な大剣を片手で軽々と振り回した。
一振りするたびに衝撃波が巻き起こり、周囲の石畳が微かに震える。
タイガはわざとハルの目の前で、隆起した腕の筋肉を強調するように大剣を構え直した。
「うわぁ……みんな、本当にかっこいい……」
ハルが素直に感嘆の声を漏らし、パチパチと拍手を送る。
その瞬間、ハルから放たれる「癒やし香」が、興奮で熱を帯びた風に乗って訓練場全体に霧散した。
「……っ! ハル様の、お褒めの言葉と……この香り……!」
「あああ……力が、力が湧いてくる……! いや、むしろ力が抜けそうだ……!」
ハルの純粋な賞賛を受けた騎士たちは、興奮と恍惚の板挟みになり、もはや訓練どころではなくなっていた。
ある者は鼻血を出しながら地面に伏し、ある者は感極まって獣の姿に戻り、ハルに向かって「もっと見て!」と吠え立てる。
そんな中、ハルの影の中からフェンが音もなく現れた。
彼は膝をつき、ハルの足首をそっと守るように手を添える。
「……ハル様。あのような騒がしい連中より、俺を見てほしい。……俺は、貴方の死角をすべて潰す」
「フェンくんまで……。あはは、みんなありがとう。でも、怪我だけはしないでね?」
ハルがバルコニーの手すりから身を乗り出し、階下の騎士たちに優しく微笑みかける。
朝日に照らされたハルの姿は、まさに降臨した聖母のようであり、その場にいた数百人の獣人たちは一斉に沈黙した。
「……神だ……」
「今日、俺はこの光景を見るために生まれてきたんだ……」
獣人にとって、これほど純粋で強力な「癒やし」を放射する存在を目の当たりにするのは、一生に一度あるかないかの奇跡だ。
彼らはもはや、ハルのためなら、どんな過酷な任務も、どんな死地も、喜んで駆け抜ける「忠実な僕」へと作り替えられていた。
「ハル、あまり刺激しないでやってくれ。……これ以上は、彼らの理性が持たない」
苦笑するギルバートだったが、その彼自身も、ハルの側に立って「この特等席は俺のものだ」という圧倒的な優越感を全身から放っていた。
こうして、騎士団の朝稽古は「ハル様を拝む神聖な儀式」へと変貌を遂げた。
ハルの異世界ライフは、ますます「愛され」の濃度を増していく。
「……おや、ハル様。本日は少々お早いお目覚めですね」
背後から音もなく現れたジークが、手際よくハルの身なりを整えていく。
ハルは目を擦りながら、階下で繰り広げられている異様な光景に釘付けになった。
「ジークさん、今日のみんな、なんだか……すごく張り切ってませんか?」
「ええ。ハル様が見学に来られる可能性があると聞き、彼らの『野性』が目覚めてしまったようです」
ハルがギルバートたちに伴われて中庭のバルコニーに姿を見せた瞬間、訓練場の空気が爆発した。
「ハル様が見ておられるぞ! 全員、最高の武勇を示せ!」
ギルバートの号令と共に、獣人騎士たちが一斉に動き出す。
この世界において、強い獣人が己の肉体や技を披露する行為は、単なる訓練ではない。それは、上位個体や「守るべき番」に対して行う、根源的な求愛と忠誠のアピール(デモンストレーション)なのだ。
「ハル様、見ててください! 俺の槍捌き、世界一速いですから!」
銀狼のカイルが、目にも止まらぬ速さで木人を突き抜く。
そのたびに銀色の尻尾が風を切り、ハルへ向けて「褒めて!」と言わんばかりの熱視線を送ってくる。
「……ふん、速いだけが能ではない。ハル、真の強さというものを見せてやろう」
隣国から居座り中の虎の王子・タイガが、巨大な大剣を片手で軽々と振り回した。
一振りするたびに衝撃波が巻き起こり、周囲の石畳が微かに震える。
タイガはわざとハルの目の前で、隆起した腕の筋肉を強調するように大剣を構え直した。
「うわぁ……みんな、本当にかっこいい……」
ハルが素直に感嘆の声を漏らし、パチパチと拍手を送る。
その瞬間、ハルから放たれる「癒やし香」が、興奮で熱を帯びた風に乗って訓練場全体に霧散した。
「……っ! ハル様の、お褒めの言葉と……この香り……!」
「あああ……力が、力が湧いてくる……! いや、むしろ力が抜けそうだ……!」
ハルの純粋な賞賛を受けた騎士たちは、興奮と恍惚の板挟みになり、もはや訓練どころではなくなっていた。
ある者は鼻血を出しながら地面に伏し、ある者は感極まって獣の姿に戻り、ハルに向かって「もっと見て!」と吠え立てる。
そんな中、ハルの影の中からフェンが音もなく現れた。
彼は膝をつき、ハルの足首をそっと守るように手を添える。
「……ハル様。あのような騒がしい連中より、俺を見てほしい。……俺は、貴方の死角をすべて潰す」
「フェンくんまで……。あはは、みんなありがとう。でも、怪我だけはしないでね?」
ハルがバルコニーの手すりから身を乗り出し、階下の騎士たちに優しく微笑みかける。
朝日に照らされたハルの姿は、まさに降臨した聖母のようであり、その場にいた数百人の獣人たちは一斉に沈黙した。
「……神だ……」
「今日、俺はこの光景を見るために生まれてきたんだ……」
獣人にとって、これほど純粋で強力な「癒やし」を放射する存在を目の当たりにするのは、一生に一度あるかないかの奇跡だ。
彼らはもはや、ハルのためなら、どんな過酷な任務も、どんな死地も、喜んで駆け抜ける「忠実な僕」へと作り替えられていた。
「ハル、あまり刺激しないでやってくれ。……これ以上は、彼らの理性が持たない」
苦笑するギルバートだったが、その彼自身も、ハルの側に立って「この特等席は俺のものだ」という圧倒的な優越感を全身から放っていた。
こうして、騎士団の朝稽古は「ハル様を拝む神聖な儀式」へと変貌を遂げた。
ハルの異世界ライフは、ますます「愛され」の濃度を増していく。
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