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15話
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王宮での生活が始まって数週間。ハルには、ある一つの悩みがあった。
それは、日を追うごとに強まっていく、獣人たちの「距離感」だ。
「……あの、みなさん。さすがに五人で川の字(?)になって寝るのは、ベッドが壊れると思うんです」
ハルが自室の巨大な天蓋付きベッドを指差すと、そこには既に定位置を確保した猛者たちがいた。
右側には、ライオンの姿でハルの腰を抱くように丸まるギルバート。
左側には、ハルの腕の中に潜り込もうとする銀狼のカイル。
足元には、黒豹の姿で「重石」のように居座るジーク。
そして枕元では、モモンガのポポがハルの髪を巣に見立てて眠る準備を整えている。
(フェンは天井の梁の上で、気配を殺して見守っている)
「ハル様。これは『防衛陣形』です。貴方の香りが夜中に暴走し、他の飢えた獣人たちを呼び寄せぬよう、我々が蓋をしているのです」
ジークが、もっともらしい理屈を述べる。
実際、この世界において「癒やし香」の持ち主は、夜間の休息中に最も多くの香りを放出する。その香りに当てられた獣人が暴走するのを防ぐため、という建前はあるのだが……。
「でも、タイガさんまで……。隣の部屋ですよね?」
「壁が薄いのが悪い。……それに、隣国から来た俺をのけ者にするとは、薄情なやつらだ」
タイガは人の姿のまま、ベッドの端に腰掛け、不機嫌そうに尻尾を揺らしている。
彼はハルの「癒やし」に依存し始めており、少しでも距離が開くと、内なる「獣の衝動」が抑えきれなくなるのだ。
「……じゃあ、今日だけですよ?」
ハルが諦めてベッドの中央に潜り込むと、一斉に「ふんふん」と鼻息が聞こえてきた。
ハルの体温が上がり、布団の中に「癒やし香」が充満する。
「……っ、これだ。……この香りが、俺の魂の歪みを直していく……」
ギルバートが、ハルの首筋に鼻を寄せ、深く吸い込む。
ハルの放つ香りは、獣人たちにとってはただの心地よい匂いではない。それは、彼らの血の中に刻まれた「破壊への渇望」を、慈愛で塗り替える神聖な薬だ。
「……ハル。君は、自分の価値を分かっていない。……俺たちは、君がいない世界には、もう戻れないんだ」
ギルバートの低く、切実な声が耳元を掠める。
ハルはその言葉に、少しだけ胸が締め付けられた。
社畜だった頃の自分は、代わりのきく「部品」だった。でも、この世界では、彼らにとって自分は「唯一無二の光」なのだ。
ハルはそっと手を伸ばし、隣にいるギルバートのタテガミと、足元のジークの背中、そして腕の中のカイルの頭を同時に撫でた。
「俺も、みんながいてくれて嬉しいですよ。……だから、安心して寝てくださいね」
ハルの無垢な愛情がこもった言葉と、極上の撫で心地。
その瞬間、最強の獣人たちは揃って「ふにゃ……」と理性を溶かした。
その夜、王宮の宿舎は、ハルの放つかつてないほど濃厚な「癒やしの波動」に包まれ、周辺の森の獣たちまでが揃ってヘソ天で眠るという、奇跡のような平穏が訪れたのだった。
それは、日を追うごとに強まっていく、獣人たちの「距離感」だ。
「……あの、みなさん。さすがに五人で川の字(?)になって寝るのは、ベッドが壊れると思うんです」
ハルが自室の巨大な天蓋付きベッドを指差すと、そこには既に定位置を確保した猛者たちがいた。
右側には、ライオンの姿でハルの腰を抱くように丸まるギルバート。
左側には、ハルの腕の中に潜り込もうとする銀狼のカイル。
足元には、黒豹の姿で「重石」のように居座るジーク。
そして枕元では、モモンガのポポがハルの髪を巣に見立てて眠る準備を整えている。
(フェンは天井の梁の上で、気配を殺して見守っている)
「ハル様。これは『防衛陣形』です。貴方の香りが夜中に暴走し、他の飢えた獣人たちを呼び寄せぬよう、我々が蓋をしているのです」
ジークが、もっともらしい理屈を述べる。
実際、この世界において「癒やし香」の持ち主は、夜間の休息中に最も多くの香りを放出する。その香りに当てられた獣人が暴走するのを防ぐため、という建前はあるのだが……。
「でも、タイガさんまで……。隣の部屋ですよね?」
「壁が薄いのが悪い。……それに、隣国から来た俺をのけ者にするとは、薄情なやつらだ」
タイガは人の姿のまま、ベッドの端に腰掛け、不機嫌そうに尻尾を揺らしている。
彼はハルの「癒やし」に依存し始めており、少しでも距離が開くと、内なる「獣の衝動」が抑えきれなくなるのだ。
「……じゃあ、今日だけですよ?」
ハルが諦めてベッドの中央に潜り込むと、一斉に「ふんふん」と鼻息が聞こえてきた。
ハルの体温が上がり、布団の中に「癒やし香」が充満する。
「……っ、これだ。……この香りが、俺の魂の歪みを直していく……」
ギルバートが、ハルの首筋に鼻を寄せ、深く吸い込む。
ハルの放つ香りは、獣人たちにとってはただの心地よい匂いではない。それは、彼らの血の中に刻まれた「破壊への渇望」を、慈愛で塗り替える神聖な薬だ。
「……ハル。君は、自分の価値を分かっていない。……俺たちは、君がいない世界には、もう戻れないんだ」
ギルバートの低く、切実な声が耳元を掠める。
ハルはその言葉に、少しだけ胸が締め付けられた。
社畜だった頃の自分は、代わりのきく「部品」だった。でも、この世界では、彼らにとって自分は「唯一無二の光」なのだ。
ハルはそっと手を伸ばし、隣にいるギルバートのタテガミと、足元のジークの背中、そして腕の中のカイルの頭を同時に撫でた。
「俺も、みんながいてくれて嬉しいですよ。……だから、安心して寝てくださいね」
ハルの無垢な愛情がこもった言葉と、極上の撫で心地。
その瞬間、最強の獣人たちは揃って「ふにゃ……」と理性を溶かした。
その夜、王宮の宿舎は、ハルの放つかつてないほど濃厚な「癒やしの波動」に包まれ、周辺の森の獣たちまでが揃ってヘソ天で眠るという、奇跡のような平穏が訪れたのだった。
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