異世界転生した俺のフェロモンが「全種族共通の特効薬」だった件 ~最強の獣人たちに囲まれて、毎日代わりばんこに可愛がられています~

たら昆布

文字の大きさ
22 / 61

22話

しおりを挟む
美味しいハンバーグで胃袋を満たし、デザートのプリンまで完食したハルを待っていたのは、心地よい「食後の睡魔」だった。
暖かな午後の日差しが差し込む談話室で、ハルの頭がカクンと揺れる。

「……ふぁ……なんだか、急に眠気が……」

その一言が、静かな火花を散らしていた男たちの導火線に火をつけた。

この世界の獣人にとって、主や伴侶を「寝かしつける」という行為は、最高の信頼の証であり、同時に「自分こそが最もハルを安心させられる存在である」という序列を示す重要な儀式なのだ。

「ハル、眠いなら遠慮するな。俺のタテガミは、この国で最も弾力があり、かつ保温性に優れている。さあ、ここへ……」

ギルバートがいち早くライオンの姿に戻り、ハルの隣で悠然と横たわった。首周りの黄金の毛並みを広げ、極上のベッドを用意する。

「団長、抜け駆けは禁止です! ハル様、狼の毛並みは夏でも蒸れず、さらさらして気持ちいいですよ! ほら、俺を抱き枕にしてください!」

カイルも負けじと銀狼になり、ハルの足元から滑り込んでくる。

「……お黙りなさい。ハル様の繊細な首筋を支えるには、しなやかで筋肉質な黒豹の肢体こそが最適解です」

ジークまでもが侍従の仮面を脱ぎ捨て、黒豹の姿でハルの背後に回り込み、顎をハルの肩に乗せるようにして「枕」の座を主張した。

「ふん、どいつもこいつも甘いな。……ハル、野生の虎の腹は世界一柔らかい。ここへ埋もれろ」

タイガが巨大な虎の姿でハルの正面を塞ぎ、白黒の縞模様が美しい腹部をさらけ出した。最強の虎が腹を見せるのは、究極の降伏と愛の証だ。

「わ、わわっ、みんな、もふもふがいっぱいで……っ」

ハルは四方を巨大な獣たちに囲まれ、身動きが取れなくなった。
さらに、ハルの髪の中に潜り込んだポポが「キュイ!(ボクが目隠し代わりになるよ!)」と、その小さな体でハルの瞼を覆おうとする。

(……幸せだけど、これじゃ眠れないよ……!)

ハルが困惑しながらも、目の前にあったタイガの腹に顔を埋め、右側にいたギルバートのタテガミに手を伸ばし、背後のジークに寄りかかった瞬間。

「…………っ!!」

獣人たちに電流が走った。
ハルが眠りに落ちる直前、無意識に放たれる「究極の癒やし香」が、これ以上ない至近距離から彼らの脳を直撃したのだ。

「ああ……っ、これだ……。ハルの体温が、俺の血を鎮めていく……」
「……動けない。……このまま時が止まればいいのに……」

結局、枕の座を巡って争っていたはずの彼らは、ハルの香りに当てられ、揃って「ふにゃふにゃ」に骨抜きにされてしまった。
ライオン、狼、豹、虎。
大陸最強の肉食獣たちが、一人の人間の少年を囲んで、お互いの尻尾を絡ませ合いながら、幸せそうに「ゴロゴロ」と喉を鳴らして眠りにつく。

「……フェンくんも、おいでよ……」

夢うつつにハルが影に向かって手を差し出すと、天井の梁にいたフェンが、耐えきれず音もなく降りてきた。
彼は人型のまま、ハルの指先をそっと握り、その場に跪いて目を閉じる。

王宮の一角に現れた、世界で最も贅沢で、最も平和な「もふもふの山」。
その中心で、ハルはかつてないほど深い、安らかな眠りに落ちていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

塩対応だった旦那様が記憶喪失になった途端溺愛してくるのですが

詩河とんぼ
BL
 貧乏伯爵家の子息であったノアは家を救うことを条件に、援助をしてくれることとなったラインドール公爵家の若気当主のレオンに嫁ぐこととなった。  塩対応で愛人がいるという噂のレオンやノアを嫌う義母の前夫人を見て、ほとんどの使用人たちはノアに嫌がらせをしていた。  そんな中、レオンが階段から転落し、レオンは記憶を失ってしまう。すると――

『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。

春凪アラシ
BL
「君を一生幸せにする」――その言葉が、これほど厄介だなんて思わなかった。 チート宮廷魔術師×うさぎ獣人の道具屋。
毎朝押しかけてプロポーズしてくる天才宮廷魔術師・シグに、うんざりしながらも返事をしてしまったうさぎ獣人の道具屋である俺・トア。 
でもこれは恋人になるためじゃない、“一目惚れの幻想を崩し、幻滅させて諦めさせる作戦”のはずだった。 ……なのに、なんでコイツ、飽きることなく俺の元に来るんだよ? 
“うさぎ獣人らしくない俺”に、どうしてそんな真っ直ぐな目を向けるんだ――? 見た目も性格も不釣り合いなふたりが織りなす、ちょっと不器用な異種族BL。 同じ世界観の「「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます」を投稿してます!トアも出てくるので良かったらご覧ください✨

【完結】みにくい勇者の子

バナナ男さん
BL
ある田舎町で農夫をしている平凡なおっさんである< ムギ >は、嫁なし!金なし!の寂しい生活を送っていた。 そんなある日、【 光の勇者様 】と呼ばれる英雄が、村の領主様に突然就任する事が決まり、村人達は総出で歓迎の準備をする事に。 初めて会うはずの光の勇者様。 しかし、何故かムギと目が合った瞬間、突然の暴挙に……?     光の勇者様 ✕ 農夫おっさんのムギです。  攻めはヤンデレ、暴走ロケット、意味不明。 受けは不憫受け(?)だと思いますので、ご注意下さい。ノリよくサクッと終わりますm(__)m 頭空っぽにして読んで頂けると嬉しいです。

強面若頭は、懐っこいナースの献身に抗えない ―極道、はじめての恋を処方される―

たら昆布
BL
ウブで堅物な極道若頭×明るいわんこ系看護師

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

俺の居場所を探して

夜野
BL
 小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。 そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。 そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、 このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。 シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。 遅筆なので不定期に投稿します。 初投稿です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...