異世界転生した俺のフェロモンが「全種族共通の特効薬」だった件 ~最強の獣人たちに囲まれて、毎日代わりばんこに可愛がられています~

たら昆布

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23話

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その日の朝、王宮はかつてない「静寂」に包まれていた。
いつもなら、ハルが目覚める数分前からその部屋の扉の外には、溢れ出す「癒やし香」を一嗅ぎしようと騎士たちが列を作る。しかし、今朝はどれだけ鼻を利かせても、あの甘く清らかな香りが一切してこないのだ。

「……ハル? 起きているか?」

ギルバートが異変を感じて入室すると、そこにはベッドの上で顔を真っ青にし、力なく横たわるハルの姿があった。

「あ……ギルバートさん。おはよう、ございます……。なんだか、体が鉛みたいに重くて……」

ハルの声は細く、いつも彼の周りを漂っている光の粒子のような魔力が、すっかり消え失せている。

「ジーク! ポポを呼べ! 急げ!」
ギルバートの怒号が響き、瞬く間に主要メンバーがハルの寝室に集結した。
ポポはハルの胸の上に飛び乗ると、小さな手から銀色の魔力糸を伸ばし、ハルの体内を診断し始める。

「キュ……キュキュイ!? (大変だ! ハル様の『魔力貯蔵庫』が空っぽになってる!)」

ポポの鑑定によれば、この世界の「癒やし香」とは、ハルの生命力そのものだ。
しかし、ハルの魔力は「自力で生成する」だけでなく、「獣人たちの強力な生命エネルギーを吸着して循環させる」という特性を持っていた。

「要するに……ハル様は、俺たちに癒やしを与えすぎて、自分の中に溜めておくべき『元となるエネルギー』まで使い果たしてしまったということですか?」
ジークが、これまでにないほど動揺した様子で眼鏡を外す。

「キュイ!(そう! ハル様は優しすぎるから、みんなの毒素を吸い取りすぎて、自分のエンジンが止まっちゃったんだ。動かすには、ボクたちからの『直接給油』が必要だよ!)」

「直接給油……だと?」
タイガが金の瞳を鋭く光らせた。

この世界における魔力供給の最も効率的な方法は、皮膚の接触、あるいは「獣化」した状態での濃密な抱擁だ。
ハルを救うためには、彼らが持つ「野性の生命力」を、逆流させるようにハルへと注ぎ込まなければならない。

「……全くだ。俺たちが甘えすぎた報いだな」
フェンが影から現れ、迷うことなくハルの冷えた指先を自分の喉元に当てた。

「ハル様、恐れないでください。今から俺たちの『命』を貴方に分け与えます」

ギルバートは巨大なライオンに、カイルは銀狼に、タイガは虎に姿を変え、ベッドの上のハルを囲むようにして横たわった。
彼らは自身の魔力を極限まで高め、それを「情愛」に変えてハルの肌へと流し込む。

「あ……あったかい……。みんなの、鼓動が聞こえる……」

ハルは、左右から押し寄せる巨大な獣たちの体温と、その奥底にある「失いたくない」という切実な想いに包まれた。
獣人たちの剥き出しの生命力がハルの体内に入り込むと、止まっていた彼の魔力回路が、パチパチと火花を散らして再起動する。

数分後。
ハルの肌から、これまで以上に濃厚で、思わず涙が出るほど優しい「癒やし香」が、爆発的な勢いで溢れ出した。

「ふぅ……。元気、出てきました。みんな、ありがとう……」

ハルが力強く微笑んだ瞬間、エネルギーを注ぎ込みすぎてフラフラになった最強の男たちは、安堵と恍惚のあまり、ハルのベッドの周りで折り重なるようにして寝落ちしてしまった。

ハルは、自分を枕にするようにして眠るライオンや虎の頭をやさしく撫でる。
「癒やし」とは、与えるだけのものではない。
彼らからもらった温もりがあるからこそ、自分は輝けるのだと、ハルは深く理解したのだった。
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