異世界転生した俺のフェロモンが「全種族共通の特効薬」だった件 ~最強の獣人たちに囲まれて、毎日代わりばんこに可愛がられています~

たら昆布

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44話

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フェンの不穏な報告は、瞬く間に特使団の緊張を最高潮へと跳ね上げた。
ガリア帝国の地下深く、かつてこの地を支配していた古の魔力が、ハルの放つ強烈な「浄化の光」に弾かれるようにして暴走を始めていたのだ。

城を揺らす不気味な地響きと共に、石造りの廊下の隙間から黒い霧が噴き出す。

「――やはり、ただの不眠ではなかったか。ジーク、ハルを最優先で守れ。カイル、フェンは先行して地下の封印を確認しろ!」

ギルバートの鋭い指令が飛び、一瞬で「癒やしの特使団」は「鉄壁の戦闘集団」へと姿を変えた。ハルは状況が掴めず戸惑いながらも、必死にタイガの背中を見つめる。

「タイガさん、あれは……?」

「……俺たちの家系に伝わる、負の遺産だ。ハル、お前はここで待ってろ」
「嫌です、俺も行きます! そもそも、俺の力が原因で活性化しちゃったんなら、俺が止めなきゃ……!」

ハルの強い眼差しに、タイガは言葉を詰まらせた。そこへ、騒ぎを聞きつけた国王が、大剣を担いで現れる。病み上がりとは思えぬ力強い足取りだった。

「ハル殿の言う通りだ、タイガ。この災厄は、ハル殿の清浄な魔力があってこそ完全に消し去ることができる。……行くぞ、息子よ。ガリアの意地を見せてやる」

一行は、禍々しい魔力が噴き出す地下の大空洞へと足を踏み入れた。
そこには、巨大な黒い虎の形をした「呪いの塊」が、怨嗟の声を上げながら実体化しようとしていた。

「(……なんて冷たくて、悲しい魔力……)」

ハルが思わず胸を押さえる。その瞬間、黒い霧が触手のように伸び、最前線にいたタイガを襲った。

「ぐっ……!? この、野郎……!」
不浄な魔力に巻かれ、タイガの膝が折れそうになる。ガリアの誇りである猛虎の力が、呪いによって内側から腐食されようとしていた。

「タイガさん!!」

ハルが叫び、無意識に手をかざす。その瞬間、ハルの体から溢れ出したのは、これまでの「癒やし」とは一線を画す、眩いばかりの聖なる奔流だった。

「やめて……もう、苦しまないで!!」

ハルの祈りにも似た叫びが洞窟内に響き渡る。その光は、タイガの体にまとわりつく黒い霧を一瞬で焼き払い、同時に彼の潜在能力を強制的に覚醒させた。

「――あああぁぁぁ!!」

タイガの体から、黄金の雷鳴が爆発する。ハルの魔力をガソリンにして、タイガの魂が真の「守護虎」へと羽化したのだ。

「悪いな親父……。俺、こいつに守られてるだけなのは、もうやめにするわ」

黄金のオーラを纏ったタイガが、黒い影に向かって地を蹴る。その横では、ギルバートの剣が白銀に輝き、ジークの魔術が空間を固定する。

「ハル様、見ていてください。我らが貴方の盾となり、剣となる様を」

守護者たちが一致団結し、ハルの光を背に受けて巨大な悪意へと立ち向かう。
肩の上で、ポポもまた、ハルを守るように全身の毛を逆立て、小さな体から青白い魔力を放ち始めた。

「キュイッ……!!(誰も、ハルには触らせないんだから!)」

絶望的な闇の中で、ハルという「光」を中心にした、ガリア史上最大の共闘が幕を開けた。
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