異世界転生した俺のフェロモンが「全種族共通の特効薬」だった件 ~最強の獣人たちに囲まれて、毎日代わりばんこに可愛がられています~

たら昆布

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51話(三部開始、ギルバート編)

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王宮に朝の光が差し込む頃、城門の前には旅支度を整えた守護者たちの姿があった。ハルがこの世界に留まる決意を固めたことで、大陸各地に点在する聖域の「綻び」を修復するための、長い旅が始まろうとしていたのである。

ジークが広げた古い羊皮紙の地図には、ポポを含めた人数分である「7つ」の歪みが、不気味な黒い紋章となって大陸の各所に記されている。

「ハル様。これら全ての聖域を巡り、貴方の癒やしの力で浄化せねばなりません。それはこの世界の歪みを正すと同時に、貴方が真にこの地の主として定着するための、避けては通れぬ儀式でもあるのです」

ジークの厳かな説明に、ハルは静かに、けれど強い意志を込めて頷いた。

「わかった。みんなが守ってきたこの世界を、今度は俺が一緒に直したいんだ。……みんな、一緒に行ってくれる?」

ハルの言葉に、守護者たちはそれぞれの武器や魔導書を手に、一斉に膝を突いて忠誠を誓った。こうして、聖者守護団による大陸縦断の旅が始まった。最初に目指すのは、王都の北西に位置する、古の結界が眠る地「双子門の森」であった。

数日の旅路を経て一行が到着したその場所は、巨木が空を覆い、銀色の霧が立ち込める神秘的な森だった。しかし、森の中央にそびえ立つ石造りの巨大な門を前に、一行は足を止めることとなった。門には二つの手形が刻まれ、その周囲を拒絶の魔力が渦巻いている。

「……あ、これ、普通の魔法じゃ解けないよ。すごく古い、選別の結界だね」

ヨシュアが杖を握り直し、門に浮かび上がる青白い古代文字を覗き込んだ。彼は難しい魔法術式を読み解く時のような顔をしながら、ハルの顔を見て告げる。

「『等しい二つの魂だけを通して、三つ以上の魂が混ざると道は閉ざされる』……だって。つまり、ハルと一緒にここを通れるのは、僕たちのうち誰か一人だけみたいなんだ」

ヨシュアがその事実を告げた瞬間、森の静寂が、守護者たちの間に走る火花のような緊張感によって塗り替えられた。ハルの「隣」という特等席を巡り、全員の瞳に静かな執念が宿る。

「……ハル様の護衛なら、俺の影が適任でしょう。邪魔な気配は全て俺が消します」
フェンが静かに、けれど断固とした意志を込めて言った。

「ハル様、私こそが貴方の盾として、この道を切り拓く栄誉をいただきたい。どうか、私に命じてください」
カイルもまた、祈るような眼差しでハルを見つめる。

しかし、最も重厚な威圧感を放ちながら前に出たのは、ギルバートだった。彼は腰に帯びた大剣の柄を握り、仲間の守護者たちを、第一騎士団長としての峻烈な眼差しで見渡した。

「ここから先は、未知の領域だ。魔物の気配も、これまでの比ではない。……団長である私が、責任を持ってハルを導く。これは命令ではなく、私の意志だ」

ギルバートのその言葉には、誰にも口を挟ませない圧倒的な気迫があった。彼はハルの前まで歩み寄ると、そっと大きな掌を差し出す。その手は、数多の戦場を潜り抜けてきた無数の傷跡がありながら、ハルに触れる時だけは、羽毛のように優しく震えていた。

「ハル。俺を信じて、ついてきてくれるか」

「……うん、ギルバートさん。お願いします。俺、ギルバートさんが隣にいてくれたら、何があっても怖くないから」

ハルがその手を取ると、門が共鳴し、眩い光が二人を包み込んだ。ポポも他の守護者と共に門の外に残される中、ハルとギルバートの二人だけが、霧の向こう側へと吸い込まれていった。

「……っ、ハル! 離れるなよ!」

門を抜けた瞬間、外界とは切り離された、凍てつくような寒気が支配する極寒の銀世界が広がっていた。視界を遮るほどの猛吹雪。ギルバートは迷うことなく、自らの厚手のマントを広げ、ハルの細い身体を丸ごと包み込むように抱き寄せた。

鎧の硬い感触と、そこから伝わってくるギルバートの熱い体温。ハルは、その逞しい腕の中で、自分の鼓動が早くなるのを感じていた。

「寒くないか。俺の側から一歩も離れるな。……ハル、お前を守り抜くことが、俺の全てだ」

「あ、ありがとう、ギルバートさん……。大丈夫、暖かいよ」

ギルバートは、吹雪を見据えるその瞳を険しくさせながらも、腕の中のハルを抱きしめる力だけは緩めなかった。騎士団長としての義務感と、今この瞬間だけはハルを独り占めできるという、無自覚な独占欲が彼の胸中で渦巻いていた。

二人きり、そして助けも呼べない極限の状況。結界に閉ざされた孤独な雪森で、ハルとギルバートの、魂の深い部分に触れる最初の試練が幕を開けた。
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