異世界転生して「誘惑」スキルを得たはずがなぜか脳筋騎士たちの「食欲」を刺激する体質になった件~俺のフェロモン肉の焼ける匂いか何かなの!?~

たら昆布

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15話

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「……はぁ。昨日のトカゲ退治、お疲れ様でした。ガイさん、喉は大丈夫ですか?」

翌朝、タクミはすっかり鎮火した(匂い的な意味で)自室で、ガイに冷たい水を差し出した。
昨日まで吹き荒れていた激辛スパイスの嵐は、嘘のように消え去っている。

ガイは水を一気に飲み干すと、ふぅ、と深い溜息をついた。
「……ああ。おかげで昨夜は、胃袋が火を噴く夢を見たぞ。……だがタクミ、今朝のお前は……なんだ。その、非常に『やる気』が出る匂いがするな」

「やる気……?」

タクミが自分の首筋をくんくんと嗅いでみる。
そこから漂っていたのは、目が覚めるようなシトラスの香り、それに少しのハーブ、そして……。

「……これ、炭酸? それに、栄養ドリンクの匂いが混ざったような……」

「そうだ。嗅いでいるだけで、全身の筋肉が喜んでいるのがわかる。……タクミ、お前、今度は『活力の源(エナジードリンク)』になったのか」

ガイの言葉通り、今のタクミから放たれているのは、疲労を瞬時に吹き飛ばすような、超・健康的な「元気の出る匂い」だった。

   * * *

その日の騎士団の訓練は、異様なほどのハイスピードで進んでいた。

「おらぁぁ! 腕立て伏せ、あと五百回追加だ!」
「全然疲れません、カシアン副団長! なんだか、タクミ君が横を通り過ぎるたびに、力がみなぎってくるんです!」

タクミが応援(という名の、ただの散歩)で練兵場を歩くだけで、バテていた騎士たちが「シャキーン!」という効果音が聞こえてきそうな勢いで復活していく。

「(……俺、ついに人間をやめて、歩くドーピング剤になったのかな……)」

タクミが遠い目をしていると、そこにフェリがひょっこりと現れた。

「タクミ様、順調ですね! 『誘惑』スキルの副次効果――『滋養強壮』のフェーズに入ったようです」

「フェリ! また勝手に……。滋養強壮って、俺は薬局か何かかよ」

「いえいえ。想い人が、タクミ様を『一生守り抜くために、もっと強くなりたい』と心から願った時、スキルはその願いに応えるんです。……つまり、あの団長さんの『タクミを独占するために鍛えなきゃ』という欲求に、タクミ様の体が反応しちゃってるわけですね!」

「……え。……ってことは、この匂い、ガイさんの気持ちの表れなの?」

タクミが驚いて振り返ると、そこにはいつにも増して激しい動きで剣を振るうガイの姿があった。
大剣が空を裂くたびに、強烈な風圧がタクミのところまで届く。

「……タクミィ! お前を見ていると、俺はあと三日は不眠不休で戦える気がするぞ!」

「いや、寝てください! 倒れたら元も子もないでしょ!」

ガイは訓練を切り上げると、汗を拭いながらタクミの元へ歩み寄った。
その顔は、これまでになく清々しく、そしてどこか「自信」に満ち溢れている。

「タクミ。……俺は決めたぞ」

「え、何をですか」

「お前のその『元気が出る匂い』。……これを、有効活用する方法だ。……今夜、俺と『夜通し』語り合おうではないか」

「…………。……はい?」

タクミの顔が、一気に真っ赤になった。
夜通し。語り合う。……それは、BL的な意味での「夜の演習」の隠語だろうか。
ガイの目は、いつになく真剣だ。

「俺とお前。二人きりの部屋で、朝日が昇るまで、お前の匂いを存分に浴びながら……。俺たちの『これからの献立』について、徹底的に議論するのだ!」

「結局、食べ物の話かよおおお!!」

タクミの絶叫が、元気いっぱいの練兵場に響き渡った。
ガイは「何を照れているんだ?」と言わんばかりに、タクミの肩をがっしりと抱き寄せる。

「……いや。……献立だけではない。……お前を、どうすれば一番幸せにできるか。……それを、一睡もせずに考え抜きたいのだ。……お前の匂いが、俺を眠らせてくれないからな」

「…………っ」

最後にさらっと、本気で甘い(けれどやっぱり少しエナジー成分の入った)セリフを吐くガイ。
タクミは、彼に抱かれたまま、「……じっくり、ゆっくり。……でも、この人、確実に『胃袋』以外でも俺を必要としてくれてるな」と、胸の奥が温かくなるのを感じた。

二人の夜は、まだ始まったばかり。
元気すぎる団長と、歩く栄養ドリンクなタクミの「寝られない夜」が幕を開ける。
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