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23話
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ヴァルさんからの情熱的な告白から数日。
僕の心は、春の陽だまりのように穏やかだった。
愛されているという確信は、僕に新しい活力を与えてくれた。
「よし! 今日は絶好の畑仕事日和ですね」
僕は、ヴァルさんが用意してくれた「専用の離宮」の裏庭に立っていた。
そこは元々、美しいけれどどこか冷たさのある観賞用の庭園だったけれど、僕はヴァルさんに頼んで、その一部を家庭菜園に変えさせてもらったのだ。
「……エリアン、本当にその格好でするのか?」
後ろで見守っているヴァルさんが、眉を寄せて言った。
僕は、動きやすいようにズボンの裾を捲り上げ、袖も肘まで捲っている。足元は泥だらけだ。
「当たり前ですよ。美味しい野菜を作るには、土と仲良くなるのが一番なんです」
僕はクワを手に、慣れない手つきで土を耕し始めた。
前世ではベランダ菜園程度だったけれど、この世界では僕の「浄化の力」が土にも影響を与えるらしく、僕が触れるだけで土がふかふかと柔らかくなっていくのがわかる。
「わあ、見てくださいヴァルさん! こんなにいい土になりました」
僕は嬉しくなって、土の付いた手のまま振り返った。
その拍子に、バランスを崩して尻餅をついてしまう。
「あわわ……」
「エリアン! だから言わんこっちゃない……」
ヴァルさんが慌てて駆け寄り、僕を抱き上げた。
おかげで、彼の漆黒の豪華なシャツには、僕の泥だらけの手の跡がベッタリと付いてしまった。
「あ……ごめんなさい、ヴァルさん! せっかくの服が……」
「……構わない。服などいくらでもある。……だが、君が怪我をするのは耐えられん」
ヴァルさんは溜息をつきながらも、僕の頬に付いた泥を指で優しく拭った。
その手つきが、なんだかとてもエロティックで、僕は顔が熱くなる。
「……泥んこですね、僕」
「ああ、ひどい有様だ。……だが、一生懸命な君は、どんな宝石よりも愛らしい」
ヴァルさんはそのまま、僕を横抱き(お姫様抱っこ、というやつだ)のまま、城の中へと運び始めた。
「えっ、ちょ、ヴァルさん!? 下ろしてください! 廊下が汚れちゃいます!」
「掃除させる。……それより、まずは君を綺麗にするのが先だ」
ヴァルさんが向かったのは、彼の私室にある巨大な大理石の浴場だった。
湯気が立ち上る中、彼は僕を床に下ろすと、自分も服を脱ぎ始めた。
「……え、あの、一緒に……入るんですか?」
「当然だ。……泥だらけの君を、隅々まで洗ってやらねばならないからな」
ヴァルさんの瞳が、怪しく光る。
そこには、僕を心配する気持ちと、それ以上に、僕を独占したいという剥き出しの欲求が見え隠れしていた。
「……あ、あの、自分でも洗えますから……っ」
「拒否は許さん。……私の大切な『宝物』を磨くのは、私の特権だ」
逞しい腕に抱き寄せられ、温かいお湯の中に沈み込む。
泥を洗い流すための時間は、いつの間にか、甘く熱い「愛の確認」の時間へと変わっていった。
王宮の片隅、僕たちの小さな楽園は、今日も幸せな熱を帯びている。
僕の心は、春の陽だまりのように穏やかだった。
愛されているという確信は、僕に新しい活力を与えてくれた。
「よし! 今日は絶好の畑仕事日和ですね」
僕は、ヴァルさんが用意してくれた「専用の離宮」の裏庭に立っていた。
そこは元々、美しいけれどどこか冷たさのある観賞用の庭園だったけれど、僕はヴァルさんに頼んで、その一部を家庭菜園に変えさせてもらったのだ。
「……エリアン、本当にその格好でするのか?」
後ろで見守っているヴァルさんが、眉を寄せて言った。
僕は、動きやすいようにズボンの裾を捲り上げ、袖も肘まで捲っている。足元は泥だらけだ。
「当たり前ですよ。美味しい野菜を作るには、土と仲良くなるのが一番なんです」
僕はクワを手に、慣れない手つきで土を耕し始めた。
前世ではベランダ菜園程度だったけれど、この世界では僕の「浄化の力」が土にも影響を与えるらしく、僕が触れるだけで土がふかふかと柔らかくなっていくのがわかる。
「わあ、見てくださいヴァルさん! こんなにいい土になりました」
僕は嬉しくなって、土の付いた手のまま振り返った。
その拍子に、バランスを崩して尻餅をついてしまう。
「あわわ……」
「エリアン! だから言わんこっちゃない……」
ヴァルさんが慌てて駆け寄り、僕を抱き上げた。
おかげで、彼の漆黒の豪華なシャツには、僕の泥だらけの手の跡がベッタリと付いてしまった。
「あ……ごめんなさい、ヴァルさん! せっかくの服が……」
「……構わない。服などいくらでもある。……だが、君が怪我をするのは耐えられん」
ヴァルさんは溜息をつきながらも、僕の頬に付いた泥を指で優しく拭った。
その手つきが、なんだかとてもエロティックで、僕は顔が熱くなる。
「……泥んこですね、僕」
「ああ、ひどい有様だ。……だが、一生懸命な君は、どんな宝石よりも愛らしい」
ヴァルさんはそのまま、僕を横抱き(お姫様抱っこ、というやつだ)のまま、城の中へと運び始めた。
「えっ、ちょ、ヴァルさん!? 下ろしてください! 廊下が汚れちゃいます!」
「掃除させる。……それより、まずは君を綺麗にするのが先だ」
ヴァルさんが向かったのは、彼の私室にある巨大な大理石の浴場だった。
湯気が立ち上る中、彼は僕を床に下ろすと、自分も服を脱ぎ始めた。
「……え、あの、一緒に……入るんですか?」
「当然だ。……泥だらけの君を、隅々まで洗ってやらねばならないからな」
ヴァルさんの瞳が、怪しく光る。
そこには、僕を心配する気持ちと、それ以上に、僕を独占したいという剥き出しの欲求が見え隠れしていた。
「……あ、あの、自分でも洗えますから……っ」
「拒否は許さん。……私の大切な『宝物』を磨くのは、私の特権だ」
逞しい腕に抱き寄せられ、温かいお湯の中に沈み込む。
泥を洗い流すための時間は、いつの間にか、甘く熱い「愛の確認」の時間へと変わっていった。
王宮の片隅、僕たちの小さな楽園は、今日も幸せな熱を帯びている。
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