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8話
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王国中が色とりどりの旗で飾られる「聖獣祭」の日がやってきた。
この日は、普段人里に姿を見せない聖獣たちが王宮へ集まり、平和を祈念する神聖な日だ。
アキは、聖獣番として用意された純白の式典服に身を包んでいた。
肩にはルル、ポケットにはポム、そして足元にはいつの間にか懐いた「もふもふのトカゲ(聖獣)」たちが群がっている。
「……アキ。その格好、似合いすぎている。……今すぐ脱いで私のマントにくるまれ」
「団長、式典の開始五分前に何言ってるんですか。あ、見てください、あっちに飛竜たちも来てますよ!」
アキが楽しそうに広場へ駆け出すと、それを見た聖獣たちが一斉にアキの元へと集まってきた。
まるでアキを中心にして、モフモフの竜巻が起きているような光景だ。
周囲の民衆からは「おお、伝説の聖獣使いだ!」と歓声が上がる。
だが、その輪に入れない男が一人。
「…………」
ゼクス団長だ。
彼がアキに一歩近づこうとするたび、聖獣たちは「シャーッ!」と威嚇し、あるいは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
その光景に、ゼクスの精神(メンタル)はボロボロだった。
「アキ……。やはり、私は貴様が必要だ。貴様がいないと、私はこの世界の生き物すべてに拒絶されたまま、孤独に死ぬことになる……」
「大げさですよ、団長! ほら、ルルにガムを渡せば少しは――」
その時。
例の隣国のセレス王子が、着飾った姿で再び現れた。
「やあ、アキ君! 今日は一段と輝いているね。どうだい、この祭りが終わったら、私の国で『聖獣の王』として迎えられたいと思わないかい? 毎日君を抱きしめて眠る権利もセットだ」
セレスがアキの手を取ろうとした、その瞬間。
ゼクスの理性の糸が、ブツンと音を立てて切れた。
「……全軍、聞け!!」
ゼクスの怒声が広場中に響き渡り、オーケストラの演奏が止まった。
彼は大股でアキのもとに歩み寄ると、聖獣たちの威嚇すら力業でねじ伏せ、アキの腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。
「アキは私の『番(つがい)』だ!! 異論がある奴は、この場で私と剣を交えてもらおう!!」
静まり返る広場。
アキの顔は、ゆでだこのように真っ赤になった。
「だ、だ、だんちょー!? 何言ってるんですか!? 『番』って、それ、結婚みたいな意味じゃ……!」
「そうだ! 貴様を私の側から離さないためには、この国の法で縛るしかないと判断した。今この瞬間、全聖獣と全国民の前で、貴様を私の婚約者として登録する!」
ゼクスはそう叫ぶと、懐から取り出した「誓約の魔法石」がはめ込まれたバングルを、アキの手首に無理やり嵌めた。
それは、外そうとするとゼクスの魔力が反応して「主(ゼクス)」を呼び寄せるという、とんでもない執着アイテムだった。
「……ポム、今のなんて言ったポム?」
『……「お前は俺の獲物だ」って、全世界に向けて叫んだポムね。こいつ、バカポムか?』
ルルも呆れ果てていたが、当のゼクスは、アキを誰にも触れさせまいと背後から抱きしめ、周囲を殺気で威嚇している。
そして。
特等席でこの様子を見ていた聖女リナは、あまりの尊さに鼻血を噴き出し、ついに失神した。
「……これ、あとでリナに絶対怒られるやつだ……」
アキは、逃げられないほど強く回されたゼクスの腕の中で、もはや諦めにも似た心地よさを感じ始めていた。
恋愛の発展は遅かったはずなのに、外堀だけがマッハの速度で埋まっていく。
アキの「普通」な日常は、完全に崩壊したのだった。
この日は、普段人里に姿を見せない聖獣たちが王宮へ集まり、平和を祈念する神聖な日だ。
アキは、聖獣番として用意された純白の式典服に身を包んでいた。
肩にはルル、ポケットにはポム、そして足元にはいつの間にか懐いた「もふもふのトカゲ(聖獣)」たちが群がっている。
「……アキ。その格好、似合いすぎている。……今すぐ脱いで私のマントにくるまれ」
「団長、式典の開始五分前に何言ってるんですか。あ、見てください、あっちに飛竜たちも来てますよ!」
アキが楽しそうに広場へ駆け出すと、それを見た聖獣たちが一斉にアキの元へと集まってきた。
まるでアキを中心にして、モフモフの竜巻が起きているような光景だ。
周囲の民衆からは「おお、伝説の聖獣使いだ!」と歓声が上がる。
だが、その輪に入れない男が一人。
「…………」
ゼクス団長だ。
彼がアキに一歩近づこうとするたび、聖獣たちは「シャーッ!」と威嚇し、あるいは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
その光景に、ゼクスの精神(メンタル)はボロボロだった。
「アキ……。やはり、私は貴様が必要だ。貴様がいないと、私はこの世界の生き物すべてに拒絶されたまま、孤独に死ぬことになる……」
「大げさですよ、団長! ほら、ルルにガムを渡せば少しは――」
その時。
例の隣国のセレス王子が、着飾った姿で再び現れた。
「やあ、アキ君! 今日は一段と輝いているね。どうだい、この祭りが終わったら、私の国で『聖獣の王』として迎えられたいと思わないかい? 毎日君を抱きしめて眠る権利もセットだ」
セレスがアキの手を取ろうとした、その瞬間。
ゼクスの理性の糸が、ブツンと音を立てて切れた。
「……全軍、聞け!!」
ゼクスの怒声が広場中に響き渡り、オーケストラの演奏が止まった。
彼は大股でアキのもとに歩み寄ると、聖獣たちの威嚇すら力業でねじ伏せ、アキの腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。
「アキは私の『番(つがい)』だ!! 異論がある奴は、この場で私と剣を交えてもらおう!!」
静まり返る広場。
アキの顔は、ゆでだこのように真っ赤になった。
「だ、だ、だんちょー!? 何言ってるんですか!? 『番』って、それ、結婚みたいな意味じゃ……!」
「そうだ! 貴様を私の側から離さないためには、この国の法で縛るしかないと判断した。今この瞬間、全聖獣と全国民の前で、貴様を私の婚約者として登録する!」
ゼクスはそう叫ぶと、懐から取り出した「誓約の魔法石」がはめ込まれたバングルを、アキの手首に無理やり嵌めた。
それは、外そうとするとゼクスの魔力が反応して「主(ゼクス)」を呼び寄せるという、とんでもない執着アイテムだった。
「……ポム、今のなんて言ったポム?」
『……「お前は俺の獲物だ」って、全世界に向けて叫んだポムね。こいつ、バカポムか?』
ルルも呆れ果てていたが、当のゼクスは、アキを誰にも触れさせまいと背後から抱きしめ、周囲を殺気で威嚇している。
そして。
特等席でこの様子を見ていた聖女リナは、あまりの尊さに鼻血を噴き出し、ついに失神した。
「……これ、あとでリナに絶対怒られるやつだ……」
アキは、逃げられないほど強く回されたゼクスの腕の中で、もはや諦めにも似た心地よさを感じ始めていた。
恋愛の発展は遅かったはずなのに、外堀だけがマッハの速度で埋まっていく。
アキの「普通」な日常は、完全に崩壊したのだった。
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