聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布

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11話

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 「よしよし禁止令」が解けてから、ゼクスの甘え方はどこか必死さを帯びていた。
 そんな折、城の魔導院で調査を続けていた聖女リナが、顔色を変えてアキのもとへ駆け込んできた。

「アキ、大変……! 私の聖女としての魔力が安定したせいで、元の世界への『門』が一時的に開こうとしてるの!」

 その言葉に、アキの心臓が大きく跳ねた。
 
「帰れる……のか? 日本に?」
「うん。でも、次元の穴が維持できるのは、三日後の日食の間の数分だけ。それを逃したら、次はいつになるか分からないわ……」

 アキの脳裏に、日本のコンビニの明かりや、働いていたペットショップの仲間たちの顔が浮かぶ。
 だが、同時に、隣でピクリと肩を震わせた男の存在が、それ以上に重く心にのしかかった。

 ゼクスは、リナの話を黙って聞いていた。
 その顔は、出会った頃の「氷の貴公子」よりもさらに冷たく、無機質な仮面のようだった。

「……そうか。帰れるのか」

 ゼクスの声は、ひどく平坦だった。
 アキが何か言おうと彼を振り返った瞬間、ゼクスは無言でアキの手首を掴み、自分の部屋へと引きずっていった。

「だ、団長!? 痛いです、離してください!」
「…………」

 部屋に入った途端、ゼクスは背後で扉に鍵をかけ、アキを壁に押し付けた。
 逃げ場のない「壁ドン」。だが、そこにあるのはいつものコミカルな独占欲ではなく、どろりとした漆黒の絶望だった。

「帰すわけがないだろう。……貴様は私の婚約者だ。この国の、いや、私の『番』になると全国民の前で誓ったはずだ」

「それは団長が勝手に言ったことで……! それに、俺には向こうの世界にだって生活が……」

「捨てろ。そんなものはすべて」

 ゼクスの手が、アキの手首に嵌った「誓約のバングル」に触れる。
 彼が魔力を流し込むと、バングルから鎖のような光が伸び、アキの腕をベッドの柱へと繋ぎ止めた。

「団長……? これ、外して……。怖いですよ」

「怖い? ……私の方が怖い。貴様が消えて、またあの『誰も懐かない、誰も愛してくれない世界』に一人で取り残されるのが……死ぬほど恐ろしい」

 ゼクスがアキの肩に顔を埋める。
 震える彼の吐息が首筋に当たり、アキは彼が本気で泣きそうなのを悟った。
 最強の騎士団長が、たった一人の「無能力な人間」を失うことに、これほどまでに怯えている。

『……おい。黒髪。やりすぎだぞ』

 ルルがベッドの上で毛を逆立てて威嚇するが、ゼクスはそれを無視して、アキの耳元で呪文のように囁き続けた。

「三日間だ。日食が終わるまで、貴様をここから一歩も出さない。食事も、睡眠も、すべて私が管理する。……貴様を日本になど、一欠片も持っていかせはしない」

 アキは、繋がれた手首を見つめた。
 本来なら拒絶すべき行為なのに、彼にここまで「必要とされている」事実に、どこか逃れがたい悦びを感じてしまっている自分に気づく。

 その頃、扉の外ではリナが「あわわわ、シリアス展開!? 監禁エンド!? それも美味しいけど、アキの幸せを考えると……あああ、脳内会議がまとまらない!」と、悶絶しながら床を転げ回っていた。

 日食まで、あと三日。
 アキとゼクスの、命がけの「おこもり生活」が始まろうとしていた。
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