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12話
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監禁二日目の朝。アキが目を覚ますと、そこはいつもの「騎士団長室」ではなかった。
ゼクスが自らの魔力で一晩のうちに改装した、目も眩むような「至福の牢獄」だった。
足元には最高級の獣毛絨毯が敷き詰められ、部屋中にアキの好きな甘い花の香りが漂っている。
「……起きたか、アキ。さあ、朝食だ。今日は王宮の料理長を総動員して、貴様がかつて『食べたい』と言っていた『ぷりん』という菓子を再現させてみた」
ゼクスが、銀のトレイに乗った黄金色のデザートを差し出す。
バングルに繋がれた光の鎖は、ベッドからソファまで移動できる長さに調整されていた。
「……団長。こんなことしても、俺の気持ちは変わりませんよ?」
「いいや、変わるまで尽くす。貴様が『日本』という言葉を忘れるまで、この世の贅(ぜい)をすべて与えよう」
ゼクスはそう言うと、アキの隣に座り、スプーンでプリンを掬ってアキの口元へ運んだ。
「あーん」を強要する騎士団長の顔は、恐ろしいほど真剣で、かつてないほど「色気」に溢れている。
「ほら、食べろ。……それとも、口移しの方がいいか?」
「食べます! 自分で食べますから!」
アキは顔を真っ赤にしてプリンを口に運んだ。
……悔しいことに、絶品だった。
食後、ゼクスはアキを背後から抱きしめ、首筋に深く顔を埋めた。
彼の熱い吐息と、微かに震える指先がアキの肌をなぞる。
「アキ……。向こうの世界に、これほど貴様を愛し、これほど貴様を必要とする男がいるのか? 私がいなければ、ルルもポムも、ハクも、みな孤独に戻るのだぞ」
「それは……。でも、みんな自立してるし……」
『してないポム! アキがいなきゃ、ポムは明日から干からびて死ぬポム!』
『そうだ。我も、あの不味い宮廷料理には戻れん。アキのガムがなければ、この国を滅ぼすかもしれんぞ』
ルルとポムまで、ゼクスに買収されたのか、必死になってアキを引き留めてくる。
さらに、ゼクスはアキの手を自分の胸元へ導いた。
シャツのボタンをわざと二つほど外し、鍛え上げられた胸筋が露わになっている。
「……触れてみろ。私の心臓は、貴様が『帰る』と言うたびに、張り裂けそうなほど痛む。……この痛みを止めるのは、貴様の『よしよし』だけだ」
「…………っ」
反則だ。
冷徹な男が見せる、捨て身の誘惑。
アキの心は、猛烈な速度で揺れ動いていた。
文明の利器がある日本か、それとも、自分を狂おしいほど愛してくれるこの「モフモフと執着男」のいる世界か。
その時、部屋の外で「ああああ! 団長のはだけた胸元! アキの揺れる瞳! 葛藤! 悶絶! 最高ぉぉぉ!」と叫ぶリナの声が聞こえ、一気にムードが台無しになった。
「……団長。リナに筒抜けですよ」
「構わん。彼女には、貴様との『婚姻届』の証人になってもらう予定だ」
ゼクスの瞳には、まだ一筋の迷いもない。
日食まで、あと二日。
アキの防波堤は、ゼクスの「愛の波濤」によって、刻一刻と削り取られていた。
ゼクスが自らの魔力で一晩のうちに改装した、目も眩むような「至福の牢獄」だった。
足元には最高級の獣毛絨毯が敷き詰められ、部屋中にアキの好きな甘い花の香りが漂っている。
「……起きたか、アキ。さあ、朝食だ。今日は王宮の料理長を総動員して、貴様がかつて『食べたい』と言っていた『ぷりん』という菓子を再現させてみた」
ゼクスが、銀のトレイに乗った黄金色のデザートを差し出す。
バングルに繋がれた光の鎖は、ベッドからソファまで移動できる長さに調整されていた。
「……団長。こんなことしても、俺の気持ちは変わりませんよ?」
「いいや、変わるまで尽くす。貴様が『日本』という言葉を忘れるまで、この世の贅(ぜい)をすべて与えよう」
ゼクスはそう言うと、アキの隣に座り、スプーンでプリンを掬ってアキの口元へ運んだ。
「あーん」を強要する騎士団長の顔は、恐ろしいほど真剣で、かつてないほど「色気」に溢れている。
「ほら、食べろ。……それとも、口移しの方がいいか?」
「食べます! 自分で食べますから!」
アキは顔を真っ赤にしてプリンを口に運んだ。
……悔しいことに、絶品だった。
食後、ゼクスはアキを背後から抱きしめ、首筋に深く顔を埋めた。
彼の熱い吐息と、微かに震える指先がアキの肌をなぞる。
「アキ……。向こうの世界に、これほど貴様を愛し、これほど貴様を必要とする男がいるのか? 私がいなければ、ルルもポムも、ハクも、みな孤独に戻るのだぞ」
「それは……。でも、みんな自立してるし……」
『してないポム! アキがいなきゃ、ポムは明日から干からびて死ぬポム!』
『そうだ。我も、あの不味い宮廷料理には戻れん。アキのガムがなければ、この国を滅ぼすかもしれんぞ』
ルルとポムまで、ゼクスに買収されたのか、必死になってアキを引き留めてくる。
さらに、ゼクスはアキの手を自分の胸元へ導いた。
シャツのボタンをわざと二つほど外し、鍛え上げられた胸筋が露わになっている。
「……触れてみろ。私の心臓は、貴様が『帰る』と言うたびに、張り裂けそうなほど痛む。……この痛みを止めるのは、貴様の『よしよし』だけだ」
「…………っ」
反則だ。
冷徹な男が見せる、捨て身の誘惑。
アキの心は、猛烈な速度で揺れ動いていた。
文明の利器がある日本か、それとも、自分を狂おしいほど愛してくれるこの「モフモフと執着男」のいる世界か。
その時、部屋の外で「ああああ! 団長のはだけた胸元! アキの揺れる瞳! 葛藤! 悶絶! 最高ぉぉぉ!」と叫ぶリナの声が聞こえ、一気にムードが台無しになった。
「……団長。リナに筒抜けですよ」
「構わん。彼女には、貴様との『婚姻届』の証人になってもらう予定だ」
ゼクスの瞳には、まだ一筋の迷いもない。
日食まで、あと二日。
アキの防波堤は、ゼクスの「愛の波濤」によって、刻一刻と削り取られていた。
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