聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布

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13話

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 日食まで、残り二十四時間を切った。
 三日間続いた「至福の監禁」の締めくくりに、ゼクスはアキを城の最上階にあるバルコニーへと連れ出した。

 夜風が心地よく、空には二つの月が幻想的な光を放っている。
 バングルから伸びる鎖はまだアキの手首を縛っていたが、ゼクスはその鎖を優しく手繰り寄せ、アキを隣に座らせた。

「アキ……見てみろ。これが、貴様が守ってきた聖獣たちが住む国だ」

 眼下には、宝石を散りばめたような街の灯りが広がっていた。
 この数ヶ月、俺はただ巻き込まれただけだと思っていたけれど……。
 怪我を治した黒狼、仲直りさせたルル、そして、俺を必要だと言い続けてくれたこの男。
 いつの間にか、この世界には俺の「居場所」が溢れていた。

「……綺麗ですね、団長」

「ああ。だが、貴様がいなければ私にとってはただの暗闇だ」

 ゼクスは、静かにアキの手を取った。
 そして、これまで決して解かなかったバングルに指をかける。
 淡い光が弾け――アキの自由を奪っていた鎖が、音もなく消え去った。

「……団長? なんで……」

「……この三日間、貴様の瞳を見ていて気づいた。私は貴様を愛していると言いながら、貴様の笑顔を奪おうとしていただけだった」

 ゼクスは苦しげに瞳を閉じ、絞り出すような声で続けた。

「明日の正午、門が開く。……アキ、貴様を自由にする。日本に帰るがいい。……私は、貴様が幸せなら、それで……」

 その声は震えていた。
 嘘だ。全然「それでいい」なんて顔じゃない。
 ゼクスの頬を、一筋の涙が伝い落ちる。氷の貴公子と呼ばれた男が、一人の男を失う恐怖に耐えきれず、自ら身を引こうとしていた。

『……おいアキ。この男、情けないが本気だぞ』
『ポムも、こんなに悲しい匂い、嗅いだことないポム……』

 ルルとポムがアキの足元に寄り添う。
 アキは、自由になった自分の手首を見つめた。
 
 日本に帰れば、便利なスマホがある。美味しいコンビニ飯もある。
 でも、そこには俺がいないと「死ぬほど悲しむ」こんなに不器用な男はいない。
 俺がいないと、愚痴を聞いてもらえなくて荒れるモフモフたちもいない。

「……団長」

 アキは、自分からゼクスの胸元に飛び込んだ。
 驚いて目を見開くゼクスの服を、ギュッと握りしめる。

「帰りません。……というか、帰れませんよ。こんな顔させたまま放っておけるほど、俺、冷たくないですから!」

「……アキ? 今、何と……」

「ここに残ります! だから……その代わり、これからも毎日、俺が嫌になるくらい『よしよし』させてくださいね」

 アキが顔を上げてニカッと笑うと、ゼクスは数秒間呆然とした後、壊れ物を扱うような手つきでアキを抱きしめ返した。

「ああ……。ああ、アキ……! 二度と、二度と離さん……!」

 ゼクスの咆哮(ほうこう)に近い歓喜の声が、夜の空に響き渡る。
 それは、執着が「愛情」へと昇華した瞬間だった。

 一方その頃。
 
「ぎゃああああ! 選んだ! アキが『愛』を選んだぁぁ! 永久残留確定! 祝杯だ、今日は王宮の酒を全部持ってこぉぉぉい!」

 物陰でリナ聖女が狂喜乱舞し、持っていた記録水晶を感動のあまり握りつぶしていた。

 運命の日食を前に、二人の絆は、もう誰にも、どの次元の壁にも引き裂けないものになっていた。
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