聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布

文字の大きさ
21 / 24

21話

しおりを挟む
 隣国との騒乱から一ヶ月。王都は、かつてないほどの歓喜に包まれていた。
 今日は、騎士団長ゼクスと、聖獣番アキの「誓約の儀」——すなわち、この国で最も盛大な結婚式の日である。

 アキは、金糸で刺繍を施された特別な礼装に身を包んでいた。その背後には、正装(蝶ネクタイ)をしたルルやポム、そして巨大な体に花輪をかけたハクとバルドスが控えている。

「……アキ。準備はいいか?」

 扉を開けて入ってきたゼクスは、白銀の甲冑を纏い、神話の英雄のような神々しさを放っていた。だが、アキを一目見るなり、その表情は一瞬で「メロメロな愛妻家」へと崩れる。

「……美しすぎる。アキ、やはり式は中止だ。今すぐ貴様を抱えて、誰もいない聖なる森の奥へ隠居する」

「もう、団長! 今日まで準備してくれたリナやみんなに怒られますよ」

 アキが笑ってゼクスの手を引くと、二人は王宮の大バルコニーへと向かった。そこには、二人を祝福するために集まった数万の国民、そして空を埋め尽くすほどの聖獣たちの姿があった。

 式が最高潮に達したその時、聖女リナが神妙な面持ちで口を開いた。

「アキ、最後に一つだけ伝えておくわ。あなたの『動物に愛される力』……。それは、この世界があなたを選んだからなのよ」

「え……世界が?」

「この世界には、孤独な魂を癒やす『星の心』という欠片があるの。ゼクス団長が誰からも懐かれなかったのは、その欠片……つまり『アキ』という魂の半分を、ずっと待ち続けていたから。二人が出会うことで、この世界の魔力の循環は完成したのよ」

 リナの言葉と共に、アキの体が淡い光に包まれた。
 アキが聖獣たちを惹きつけたのは、彼がこの世界の「愛そのもの」の象徴だったから。そして、ゼクスがそのアキに異常なまでに執着したのは、欠けていた自分の魂を埋めるための本能だったのだ。

「……理(ことわり)などどうでもいい。アキが私の隣にいる、それだけが私の真実だ」

 ゼクスはアキの腰を力強く抱き寄せ、全方位に響き渡る声で宣言した。

「全生き物たちよ、聞け! アキは今日から私の伴侶だ! 彼を愛でる権利は私にあるが、彼が守るこの世界は、私が命に代えても守り抜く!!」

『おおぉぉぉん!!(訳:おめでとう!)』
『ポムーーー!!(訳:末長く爆発しろポム!)』

 聖獣たちの咆哮が空を震わせ、色とりどりの花の雨が降る。
 アキは、自分を愛おしそうに見つめるゼクスの瞳を見て、確信した。
 
 日本での生活も大切だったけれど、自分をこれほどまでに必要とし、愛してくれる人がいるこの場所が、俺の本当の「家」なんだ。

「……団長。これからも、ずっと側にいますね」

「……ああ。死が二人を分かつまで、いや、死んでも離さん」

 ゼクスはアキを情熱的に引き寄せ、ついに「誓いの口づけ」を交わした。
 今度は、邪魔をするトカゲも、シャッターを切る聖女も(一瞬だけ)空気を読み、静かな時間が流れた。

 ……数分後。
「あー! 今のベストショット! 国宝にするわよぉぉぉ!」
『おい黒髪、いつまでくっついてるポム! アキが苦しがってるポム!』

 結局、いつもの賑やかな騒ぎが戻ってくる。
 
 最強の騎士団長の重すぎる愛と、無自覚な聖獣番の少年の、甘くて騒がしい日々。
 二人の「よしよし」の物語は、これからもこの世界で永遠に続いていく。

                         ——完——
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...