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21話
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隣国との騒乱から一ヶ月。王都は、かつてないほどの歓喜に包まれていた。
今日は、騎士団長ゼクスと、聖獣番アキの「誓約の儀」——すなわち、この国で最も盛大な結婚式の日である。
アキは、金糸で刺繍を施された特別な礼装に身を包んでいた。その背後には、正装(蝶ネクタイ)をしたルルやポム、そして巨大な体に花輪をかけたハクとバルドスが控えている。
「……アキ。準備はいいか?」
扉を開けて入ってきたゼクスは、白銀の甲冑を纏い、神話の英雄のような神々しさを放っていた。だが、アキを一目見るなり、その表情は一瞬で「メロメロな愛妻家」へと崩れる。
「……美しすぎる。アキ、やはり式は中止だ。今すぐ貴様を抱えて、誰もいない聖なる森の奥へ隠居する」
「もう、団長! 今日まで準備してくれたリナやみんなに怒られますよ」
アキが笑ってゼクスの手を引くと、二人は王宮の大バルコニーへと向かった。そこには、二人を祝福するために集まった数万の国民、そして空を埋め尽くすほどの聖獣たちの姿があった。
式が最高潮に達したその時、聖女リナが神妙な面持ちで口を開いた。
「アキ、最後に一つだけ伝えておくわ。あなたの『動物に愛される力』……。それは、この世界があなたを選んだからなのよ」
「え……世界が?」
「この世界には、孤独な魂を癒やす『星の心』という欠片があるの。ゼクス団長が誰からも懐かれなかったのは、その欠片……つまり『アキ』という魂の半分を、ずっと待ち続けていたから。二人が出会うことで、この世界の魔力の循環は完成したのよ」
リナの言葉と共に、アキの体が淡い光に包まれた。
アキが聖獣たちを惹きつけたのは、彼がこの世界の「愛そのもの」の象徴だったから。そして、ゼクスがそのアキに異常なまでに執着したのは、欠けていた自分の魂を埋めるための本能だったのだ。
「……理(ことわり)などどうでもいい。アキが私の隣にいる、それだけが私の真実だ」
ゼクスはアキの腰を力強く抱き寄せ、全方位に響き渡る声で宣言した。
「全生き物たちよ、聞け! アキは今日から私の伴侶だ! 彼を愛でる権利は私にあるが、彼が守るこの世界は、私が命に代えても守り抜く!!」
『おおぉぉぉん!!(訳:おめでとう!)』
『ポムーーー!!(訳:末長く爆発しろポム!)』
聖獣たちの咆哮が空を震わせ、色とりどりの花の雨が降る。
アキは、自分を愛おしそうに見つめるゼクスの瞳を見て、確信した。
日本での生活も大切だったけれど、自分をこれほどまでに必要とし、愛してくれる人がいるこの場所が、俺の本当の「家」なんだ。
「……団長。これからも、ずっと側にいますね」
「……ああ。死が二人を分かつまで、いや、死んでも離さん」
ゼクスはアキを情熱的に引き寄せ、ついに「誓いの口づけ」を交わした。
今度は、邪魔をするトカゲも、シャッターを切る聖女も(一瞬だけ)空気を読み、静かな時間が流れた。
……数分後。
「あー! 今のベストショット! 国宝にするわよぉぉぉ!」
『おい黒髪、いつまでくっついてるポム! アキが苦しがってるポム!』
結局、いつもの賑やかな騒ぎが戻ってくる。
最強の騎士団長の重すぎる愛と、無自覚な聖獣番の少年の、甘くて騒がしい日々。
二人の「よしよし」の物語は、これからもこの世界で永遠に続いていく。
——完——
今日は、騎士団長ゼクスと、聖獣番アキの「誓約の儀」——すなわち、この国で最も盛大な結婚式の日である。
アキは、金糸で刺繍を施された特別な礼装に身を包んでいた。その背後には、正装(蝶ネクタイ)をしたルルやポム、そして巨大な体に花輪をかけたハクとバルドスが控えている。
「……アキ。準備はいいか?」
扉を開けて入ってきたゼクスは、白銀の甲冑を纏い、神話の英雄のような神々しさを放っていた。だが、アキを一目見るなり、その表情は一瞬で「メロメロな愛妻家」へと崩れる。
「……美しすぎる。アキ、やはり式は中止だ。今すぐ貴様を抱えて、誰もいない聖なる森の奥へ隠居する」
「もう、団長! 今日まで準備してくれたリナやみんなに怒られますよ」
アキが笑ってゼクスの手を引くと、二人は王宮の大バルコニーへと向かった。そこには、二人を祝福するために集まった数万の国民、そして空を埋め尽くすほどの聖獣たちの姿があった。
式が最高潮に達したその時、聖女リナが神妙な面持ちで口を開いた。
「アキ、最後に一つだけ伝えておくわ。あなたの『動物に愛される力』……。それは、この世界があなたを選んだからなのよ」
「え……世界が?」
「この世界には、孤独な魂を癒やす『星の心』という欠片があるの。ゼクス団長が誰からも懐かれなかったのは、その欠片……つまり『アキ』という魂の半分を、ずっと待ち続けていたから。二人が出会うことで、この世界の魔力の循環は完成したのよ」
リナの言葉と共に、アキの体が淡い光に包まれた。
アキが聖獣たちを惹きつけたのは、彼がこの世界の「愛そのもの」の象徴だったから。そして、ゼクスがそのアキに異常なまでに執着したのは、欠けていた自分の魂を埋めるための本能だったのだ。
「……理(ことわり)などどうでもいい。アキが私の隣にいる、それだけが私の真実だ」
ゼクスはアキの腰を力強く抱き寄せ、全方位に響き渡る声で宣言した。
「全生き物たちよ、聞け! アキは今日から私の伴侶だ! 彼を愛でる権利は私にあるが、彼が守るこの世界は、私が命に代えても守り抜く!!」
『おおぉぉぉん!!(訳:おめでとう!)』
『ポムーーー!!(訳:末長く爆発しろポム!)』
聖獣たちの咆哮が空を震わせ、色とりどりの花の雨が降る。
アキは、自分を愛おしそうに見つめるゼクスの瞳を見て、確信した。
日本での生活も大切だったけれど、自分をこれほどまでに必要とし、愛してくれる人がいるこの場所が、俺の本当の「家」なんだ。
「……団長。これからも、ずっと側にいますね」
「……ああ。死が二人を分かつまで、いや、死んでも離さん」
ゼクスはアキを情熱的に引き寄せ、ついに「誓いの口づけ」を交わした。
今度は、邪魔をするトカゲも、シャッターを切る聖女も(一瞬だけ)空気を読み、静かな時間が流れた。
……数分後。
「あー! 今のベストショット! 国宝にするわよぉぉぉ!」
『おい黒髪、いつまでくっついてるポム! アキが苦しがってるポム!』
結局、いつもの賑やかな騒ぎが戻ってくる。
最強の騎士団長の重すぎる愛と、無自覚な聖獣番の少年の、甘くて騒がしい日々。
二人の「よしよし」の物語は、これからもこの世界で永遠に続いていく。
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