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2話
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翌日の夕方、バイト先の『カフェ・エトワール』は、落ち着いたジャズが流れる穏やかな空気に包まれていた。
ここは駅から少し離れていることもあり、常連客が静かに読書や作業を楽しむための隠れ家的な場所だ。
カランカラン、とドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ。……あ、レオさん!」
入ってきた人物を見て、僕は思わず声を弾ませた。
そこに立っていたのは、昨日路地裏で助けたあの綺麗な人だった。
今日は深い青のキャップを深く被り、黒縁の伊達メガネをかけている。
服装もシンプルな白Tシャツにデニムという格好だが、隠しきれないスタイルの良さとオーラが店内に広がった気がした。
「こんにちは、千秋さん。本当に、来ちゃいました」
レオさんは少し照れくさそうに、でも嬉しそうに目を細めて笑った。
その顔を見て、僕は昨日の「撮影」という言葉を思い出す。
きっと彼は、最近巷で話題のアイドルグループ『GALAXY』のメンバーか何かに違いない。
あそこは一人一人が圧倒的なビジュアルを持っていることで有名だ。
最近は街の至る所に彼らのポスターが貼ってあるし、テレビをつければ必ず誰かが出ている。
(でも、あんなにキラキラしたスターが、こんな普通のカフェに一人で来るかな……?)
自分の中で「レオさん=アイドル」という疑惑が浮かびかけるが、目の前でメニューを一生懸命覗き込んでいる彼の姿は、どこか放っておけない友人のような雰囲気だった。
「お好きな席へどうぞ。今日は日替わりのシフォンケーキがおすすめですよ」
「じゃあ、それを。……あと、千秋さんの、おすすめのコーヒーもお願いします」
レオさんは一番奥の、周囲から死角になる席を選んで座った。
僕は丁寧に豆を挽き、コーヒーを淹れる。
彼がじっと僕の手元を見つめているのを感じて、少し緊張してしまった。
「お待たせしました。本日のコーヒーと、自家製シフォンです」
「わぁ、美味しそう……。いただきます」
レオさんはフォークを手に取ると、幸せそうにケーキを口に運んだ。
その食べ方がなんだか小動物のようで、僕はつい微笑んでしまう。
「千秋さん。あの、昨日は本当にありがとうございました。……僕、あの後、無事に仕事に戻れたんです」
「それは良かったです。撮影、大変だったんじゃないですか?」
僕がそう尋ねると、レオさんは一瞬動きを止め、少しだけ寂しげな顔をした。
「……大変なこともありますけど、僕には、どうしても叶えたい約束があるから。だから、頑張れるんです」
約束。その言葉の響きに、僕は胸の奥がちくりとした。
十年前、僕も同級生の誰かとそんな話をした気がする。
引っ越していった、泣き虫で可愛かった親友。
(……まさかな。レオさんはこんなに立派で綺麗なんだし)
僕は自分の考えを打ち消すように、空いたグラスに水を注ぎ足した。
レオさんはその後も、一時間ほどゆっくりと店に滞在してくれた。
時折、ノートを広げて何かを書き留めたり、スマホで音楽を聴いたりしている。
その真剣な表情は、テレビの向こう側で見かける『GALAXY』のレオに少しだけ似ている気がした。
「ごちそうさまでした。千秋さん、また来てもいいですか?」
会計を済ませる際、レオさんは少し不安そうに僕を見上げてきた。
「もちろんです。常連さん、大歓迎ですよ」
僕がそう言うと、彼は今日一番の笑顔を見せてくれた。
「……はい! 明日も、明後日も、絶対に来ます!」
その宣言通り、翌日も、その次の日も、レオさんは店に現れた。
店に来るたびに少しずつ、僕に対する警戒心が解けていくのが分かった。
そんなある日のことだ。
レオさんが店を出た直後、一台の黒い高級車が店の前に止まった。
中から現れたのは、モデルのように背が高い、銀髪の美青年だった。
彼は鋭い視線で店を一瞥すると、迷わずレオさんの座っていた席へと歩いてきた。
「……レオは、もう行ったか?」
低い、凛とした声。
その圧倒的な存在感に、僕は息を呑んだ。
彼は『GALAXY』のリーダー、シオンだった。
ここは駅から少し離れていることもあり、常連客が静かに読書や作業を楽しむための隠れ家的な場所だ。
カランカラン、とドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ。……あ、レオさん!」
入ってきた人物を見て、僕は思わず声を弾ませた。
そこに立っていたのは、昨日路地裏で助けたあの綺麗な人だった。
今日は深い青のキャップを深く被り、黒縁の伊達メガネをかけている。
服装もシンプルな白Tシャツにデニムという格好だが、隠しきれないスタイルの良さとオーラが店内に広がった気がした。
「こんにちは、千秋さん。本当に、来ちゃいました」
レオさんは少し照れくさそうに、でも嬉しそうに目を細めて笑った。
その顔を見て、僕は昨日の「撮影」という言葉を思い出す。
きっと彼は、最近巷で話題のアイドルグループ『GALAXY』のメンバーか何かに違いない。
あそこは一人一人が圧倒的なビジュアルを持っていることで有名だ。
最近は街の至る所に彼らのポスターが貼ってあるし、テレビをつければ必ず誰かが出ている。
(でも、あんなにキラキラしたスターが、こんな普通のカフェに一人で来るかな……?)
自分の中で「レオさん=アイドル」という疑惑が浮かびかけるが、目の前でメニューを一生懸命覗き込んでいる彼の姿は、どこか放っておけない友人のような雰囲気だった。
「お好きな席へどうぞ。今日は日替わりのシフォンケーキがおすすめですよ」
「じゃあ、それを。……あと、千秋さんの、おすすめのコーヒーもお願いします」
レオさんは一番奥の、周囲から死角になる席を選んで座った。
僕は丁寧に豆を挽き、コーヒーを淹れる。
彼がじっと僕の手元を見つめているのを感じて、少し緊張してしまった。
「お待たせしました。本日のコーヒーと、自家製シフォンです」
「わぁ、美味しそう……。いただきます」
レオさんはフォークを手に取ると、幸せそうにケーキを口に運んだ。
その食べ方がなんだか小動物のようで、僕はつい微笑んでしまう。
「千秋さん。あの、昨日は本当にありがとうございました。……僕、あの後、無事に仕事に戻れたんです」
「それは良かったです。撮影、大変だったんじゃないですか?」
僕がそう尋ねると、レオさんは一瞬動きを止め、少しだけ寂しげな顔をした。
「……大変なこともありますけど、僕には、どうしても叶えたい約束があるから。だから、頑張れるんです」
約束。その言葉の響きに、僕は胸の奥がちくりとした。
十年前、僕も同級生の誰かとそんな話をした気がする。
引っ越していった、泣き虫で可愛かった親友。
(……まさかな。レオさんはこんなに立派で綺麗なんだし)
僕は自分の考えを打ち消すように、空いたグラスに水を注ぎ足した。
レオさんはその後も、一時間ほどゆっくりと店に滞在してくれた。
時折、ノートを広げて何かを書き留めたり、スマホで音楽を聴いたりしている。
その真剣な表情は、テレビの向こう側で見かける『GALAXY』のレオに少しだけ似ている気がした。
「ごちそうさまでした。千秋さん、また来てもいいですか?」
会計を済ませる際、レオさんは少し不安そうに僕を見上げてきた。
「もちろんです。常連さん、大歓迎ですよ」
僕がそう言うと、彼は今日一番の笑顔を見せてくれた。
「……はい! 明日も、明後日も、絶対に来ます!」
その宣言通り、翌日も、その次の日も、レオさんは店に現れた。
店に来るたびに少しずつ、僕に対する警戒心が解けていくのが分かった。
そんなある日のことだ。
レオさんが店を出た直後、一台の黒い高級車が店の前に止まった。
中から現れたのは、モデルのように背が高い、銀髪の美青年だった。
彼は鋭い視線で店を一瞥すると、迷わずレオさんの座っていた席へと歩いてきた。
「……レオは、もう行ったか?」
低い、凛とした声。
その圧倒的な存在感に、僕は息を呑んだ。
彼は『GALAXY』のリーダー、シオンだった。
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