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13話
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夜が静まり返り、暖炉の火が穏やかな熾火に変わる頃。
ついに、一つの「作品」が完成した。
テーブルの上には、ガイアスが鍛え上げた銀の枠に、俺が魔導回路を刻み込んだ虹光石が収まっている。石は脈打つような七色の光を放ち、それを包む銀の蔓状の装飾は、まるで石を守るように優美な曲線を描いていた。
「……完璧です。ガイアスさん、あなたの腕前は騎士団長にしておくには惜しいですね。専門の職人でも、これほど精密な嵌め込みは難しいですよ」
俺は指先で銀の装飾をなぞり、感嘆の声を漏らした。
俺の刻んだ微細な魔力経路と、彼が作った台座の接点は、寸分の狂いもなく一致している。
「お前の描いた図面が正確だったからだ。……さあ、リィエル。早速つけてみてくれないか。サイズが合うか確認したい」
ガイアスはそう言うと、銀の鎖を手に取り、椅子に座る俺の背後へと回った。
ふわりと、彼の体温と、微かな鉄の匂いが俺を包み込む。
ガイアスの大きな手が、俺の首筋に触れないよう慎重に動き、鎖を前へと回してきた。
俺は思わず息を止める。
彼の指先が、耳の裏やうなじの皮膚をかすめるたび、そこから小さな火花が散るような、奇妙な熱が走った。
「……きゅう?」
足元で丸くなっていたシロが顔を上げ、不思議そうに俺たちを見上げている。
「……少し、動かないでくれ。鎖の留め金が、お前の髪に絡まないようにしたいんだ」
ガイアスの声が、いつもより低く、耳元で響く。
俺の銀髪を大きな手が優しく避け、冷たいはずの鎖が胸元に降りてきた。
だが、その鎖は彼の体温を吸っていたのか、驚くほど温かく肌に馴染んだ。
「よし。……似合っているぞ、リィエル」
ガイアスが手を離し、俺の正面に回り込んだ。
俺の胸元で、虹光石が静かに呼吸するように明滅している。それは俺の魔力と共鳴し、全身の魔力循環をかつてないほどスムーズに「最適化」していくのが分かった。
「……ええ。驚くほど馴染みます。魔力の出力も安定していますし、これなら不測の事態でも即座に防御フィールドを展開できそうです」
「ああ、お前を守る盾だ。……これで俺も、少しは安心して王都で仕事ができるというものだ」
ガイアスは満足げに腕を組み、眩しそうに俺を見つめている。
その瞳に映る俺は、果たして彼にとってどう見えているのだろうか。
単なる恩人か、あるいは守るべき希少種か。
(……このシステムには、まだ解析できない変数が多すぎる)
俺は胸元のペンダントをそっと握りしめた。
石の硬質さと、銀の滑らかさ。
それを作った男の、不器用なほどの真摯さ。
「……ありがとうございます、ガイアスさん。大切に使わせてもらいます」
「礼を言うのは俺の方だ。お前とこうして一つのものを作り上げる時間は、どんな勝利よりも俺を満たしてくれた」
ガイアスはそう言って、椅子から立ち上がった。
「夜も更けた。リィエル、お前も今日は疲れただろう。……シロ、お前も主人のベッドを温めてやれよ」
「きゅう!」
シロは返事をするように鳴き、俺の足元に体を擦り付けた。
ガイアスが客間に戻り、リビングに再び静寂が訪れる。
俺は一人、消えかけた暖炉の火を眺めながら、首元のペンダントに触れた。
石の輝きは、まるで小さな心臓の鼓動のようだ。
俺の世界は、一人で完成されていたはずだった。
他者の干渉は、すべてノイズでしかないと思っていた。
けれど、今。
俺の首元で優しく脈打つこの重みは、決して不快なノイズではなかった。
むしろ、それは俺の凍てついていた時間を、ゆっくりと解かしていくための、大切な「同期信号」のように思えた。
ついに、一つの「作品」が完成した。
テーブルの上には、ガイアスが鍛え上げた銀の枠に、俺が魔導回路を刻み込んだ虹光石が収まっている。石は脈打つような七色の光を放ち、それを包む銀の蔓状の装飾は、まるで石を守るように優美な曲線を描いていた。
「……完璧です。ガイアスさん、あなたの腕前は騎士団長にしておくには惜しいですね。専門の職人でも、これほど精密な嵌め込みは難しいですよ」
俺は指先で銀の装飾をなぞり、感嘆の声を漏らした。
俺の刻んだ微細な魔力経路と、彼が作った台座の接点は、寸分の狂いもなく一致している。
「お前の描いた図面が正確だったからだ。……さあ、リィエル。早速つけてみてくれないか。サイズが合うか確認したい」
ガイアスはそう言うと、銀の鎖を手に取り、椅子に座る俺の背後へと回った。
ふわりと、彼の体温と、微かな鉄の匂いが俺を包み込む。
ガイアスの大きな手が、俺の首筋に触れないよう慎重に動き、鎖を前へと回してきた。
俺は思わず息を止める。
彼の指先が、耳の裏やうなじの皮膚をかすめるたび、そこから小さな火花が散るような、奇妙な熱が走った。
「……きゅう?」
足元で丸くなっていたシロが顔を上げ、不思議そうに俺たちを見上げている。
「……少し、動かないでくれ。鎖の留め金が、お前の髪に絡まないようにしたいんだ」
ガイアスの声が、いつもより低く、耳元で響く。
俺の銀髪を大きな手が優しく避け、冷たいはずの鎖が胸元に降りてきた。
だが、その鎖は彼の体温を吸っていたのか、驚くほど温かく肌に馴染んだ。
「よし。……似合っているぞ、リィエル」
ガイアスが手を離し、俺の正面に回り込んだ。
俺の胸元で、虹光石が静かに呼吸するように明滅している。それは俺の魔力と共鳴し、全身の魔力循環をかつてないほどスムーズに「最適化」していくのが分かった。
「……ええ。驚くほど馴染みます。魔力の出力も安定していますし、これなら不測の事態でも即座に防御フィールドを展開できそうです」
「ああ、お前を守る盾だ。……これで俺も、少しは安心して王都で仕事ができるというものだ」
ガイアスは満足げに腕を組み、眩しそうに俺を見つめている。
その瞳に映る俺は、果たして彼にとってどう見えているのだろうか。
単なる恩人か、あるいは守るべき希少種か。
(……このシステムには、まだ解析できない変数が多すぎる)
俺は胸元のペンダントをそっと握りしめた。
石の硬質さと、銀の滑らかさ。
それを作った男の、不器用なほどの真摯さ。
「……ありがとうございます、ガイアスさん。大切に使わせてもらいます」
「礼を言うのは俺の方だ。お前とこうして一つのものを作り上げる時間は、どんな勝利よりも俺を満たしてくれた」
ガイアスはそう言って、椅子から立ち上がった。
「夜も更けた。リィエル、お前も今日は疲れただろう。……シロ、お前も主人のベッドを温めてやれよ」
「きゅう!」
シロは返事をするように鳴き、俺の足元に体を擦り付けた。
ガイアスが客間に戻り、リビングに再び静寂が訪れる。
俺は一人、消えかけた暖炉の火を眺めながら、首元のペンダントに触れた。
石の輝きは、まるで小さな心臓の鼓動のようだ。
俺の世界は、一人で完成されていたはずだった。
他者の干渉は、すべてノイズでしかないと思っていた。
けれど、今。
俺の首元で優しく脈打つこの重みは、決して不快なノイズではなかった。
むしろ、それは俺の凍てついていた時間を、ゆっくりと解かしていくための、大切な「同期信号」のように思えた。
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