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22話
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図書室でのメンテナンスを終えた後、リィエルはガイアスに伴われて食堂へと向かった。
大きな円卓の上には、既に色とりどりの小皿が並んでいる。だが、その中心で圧倒的な存在感を放っていたのは、純白の陶器に乗せられた色鮮やかな菓子の数々だった。
「リィエル、約束していた甘いものだ。王都で一番の腕を持つ菓子職人を呼んで、お前の好みに合いそうなものを作らせた」
「……職人を呼ぶなんて、リソースの過剰投入ですよ。俺は、その辺のパン屋の焼き菓子でも十分に満足できたのですが」
「はは、俺がそうしたかったんだ。ほら、シロも起きてきたぞ」
ガイアスの言葉通り、甘い香りに誘われたシロが、パタパタと小走りで食堂へ現れた。
シロはテーブルの脚を器用に登ると、リィエルの隣の席に陣取り、期待に満ちた銀色の瞳で皿を見つめる。
「シロ、お前は本当に鼻が利く。……さて、この透明な層を重ねたものは何だ? 視覚的な透過率が高くて、食べるのがもったいないな」
リィエルは、薄くスライスされた果実が幾層にも重なったゼリー寄せを手に取った。
一口運ぶと、ひんやりとした冷感と共に、数種類の果実の酸味が完璧な調和を保って溶け出していく。
「……っ。これは、驚いた。甘みのピークが時間差でやってくる設計になっている。……王都の製菓技術、侮れませんね」
「そうだろう? お前のその驚いた顔が見たかったんだ。……シロ、お前にはこっちのミルクムースだ。あまり急いで食べるなよ」
ガイアスが小さなスプーンでシロにムースを分け与えると、シロは「きゅう!」と歓喜の声を上げ、夢中で皿を舐め始めた。
穏やかな夕食の時間が過ぎ、外が完全な夜の帳に包まれた頃。
執事が恭しく大きな黒い箱を二つ、部屋へと運び込んできた。
「ガイアス様、ご注文の品が届きました。明日の星祭のための正装でございます」
「ああ、届いたか。……リィエル、これは俺からの贈り物だ。星祭にはこれを着て一緒に出かけてほしい」
リィエルが怪訝な顔をしながら箱を開けると、そこには深い夜空のような紺碧のシルクを基調とした、見たこともないほど繊細な仕立ての衣装が収められていた。
エルフの伝統的なシルエットを継承しつつ、袖口や襟元には王都の最新の流行を感じさせる銀の刺繍が施されている。
「……ガイアスさん。俺、何度も言っていますが、ただの引きこもり魔導士ですよ。こんな高価な装備、防御性能以前に緊張で心拍数が跳ね上がります」
「お前は自分の美しさを過小評価しすぎだ。……明日の夜、お前は誰よりも輝くはずだ。この衣装は、お前が作ったあのペンダントを最も引き立てるように誂えさせたんだからな」
ガイアスはそう言って、箱の中にあった銀色の細いリボンを手に取った。
「髪はこれで結ぼう。……明日は、俺がずっと隣にいる。どんな人混みも、お前の平穏を乱させはしない」
ガイアスの琥珀色の瞳には、一点の曇りもない誠実さが宿っていた。
リィエルは、自分の胸元で静かに光る虹光石のペンダントに触れた。
「……わかりました。一晩かけて、この衣装の着脱手順を脳内シミュレーションしておきます。……エスコートの方、よろしくお願いしますね、騎士団長様」
「ああ、任せておけ。相棒」
窓の外では、明日の祭りを待ちきれない人々が上げる小さな歓声が、心地よいノイズとなって風に混じっていた。
星降る夜まで、あとわずか。
大きな円卓の上には、既に色とりどりの小皿が並んでいる。だが、その中心で圧倒的な存在感を放っていたのは、純白の陶器に乗せられた色鮮やかな菓子の数々だった。
「リィエル、約束していた甘いものだ。王都で一番の腕を持つ菓子職人を呼んで、お前の好みに合いそうなものを作らせた」
「……職人を呼ぶなんて、リソースの過剰投入ですよ。俺は、その辺のパン屋の焼き菓子でも十分に満足できたのですが」
「はは、俺がそうしたかったんだ。ほら、シロも起きてきたぞ」
ガイアスの言葉通り、甘い香りに誘われたシロが、パタパタと小走りで食堂へ現れた。
シロはテーブルの脚を器用に登ると、リィエルの隣の席に陣取り、期待に満ちた銀色の瞳で皿を見つめる。
「シロ、お前は本当に鼻が利く。……さて、この透明な層を重ねたものは何だ? 視覚的な透過率が高くて、食べるのがもったいないな」
リィエルは、薄くスライスされた果実が幾層にも重なったゼリー寄せを手に取った。
一口運ぶと、ひんやりとした冷感と共に、数種類の果実の酸味が完璧な調和を保って溶け出していく。
「……っ。これは、驚いた。甘みのピークが時間差でやってくる設計になっている。……王都の製菓技術、侮れませんね」
「そうだろう? お前のその驚いた顔が見たかったんだ。……シロ、お前にはこっちのミルクムースだ。あまり急いで食べるなよ」
ガイアスが小さなスプーンでシロにムースを分け与えると、シロは「きゅう!」と歓喜の声を上げ、夢中で皿を舐め始めた。
穏やかな夕食の時間が過ぎ、外が完全な夜の帳に包まれた頃。
執事が恭しく大きな黒い箱を二つ、部屋へと運び込んできた。
「ガイアス様、ご注文の品が届きました。明日の星祭のための正装でございます」
「ああ、届いたか。……リィエル、これは俺からの贈り物だ。星祭にはこれを着て一緒に出かけてほしい」
リィエルが怪訝な顔をしながら箱を開けると、そこには深い夜空のような紺碧のシルクを基調とした、見たこともないほど繊細な仕立ての衣装が収められていた。
エルフの伝統的なシルエットを継承しつつ、袖口や襟元には王都の最新の流行を感じさせる銀の刺繍が施されている。
「……ガイアスさん。俺、何度も言っていますが、ただの引きこもり魔導士ですよ。こんな高価な装備、防御性能以前に緊張で心拍数が跳ね上がります」
「お前は自分の美しさを過小評価しすぎだ。……明日の夜、お前は誰よりも輝くはずだ。この衣装は、お前が作ったあのペンダントを最も引き立てるように誂えさせたんだからな」
ガイアスはそう言って、箱の中にあった銀色の細いリボンを手に取った。
「髪はこれで結ぼう。……明日は、俺がずっと隣にいる。どんな人混みも、お前の平穏を乱させはしない」
ガイアスの琥珀色の瞳には、一点の曇りもない誠実さが宿っていた。
リィエルは、自分の胸元で静かに光る虹光石のペンダントに触れた。
「……わかりました。一晩かけて、この衣装の着脱手順を脳内シミュレーションしておきます。……エスコートの方、よろしくお願いしますね、騎士団長様」
「ああ、任せておけ。相棒」
窓の外では、明日の祭りを待ちきれない人々が上げる小さな歓声が、心地よいノイズとなって風に混じっていた。
星降る夜まで、あとわずか。
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