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11話
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「……アルス様、もう、そこら中に跡が……。明日から雑用係として歩けません」
俺、セシルは、アルス様の広いベッドの中でシーツに包まりながら、消え入りそうな声を出した。
資料室での一件のあと、自室に連れ戻された俺を待っていたのは、文字通り「骨の髄まで愛でられる」ような執着の嵐だった。
アルス様は俺の腰を抱き寄せ、まだ熱を帯びた瞳で俺を見下ろしている。
最強の騎士が、今はただの一人の男として、俺を逃がさないように閉じ込めている。
「……歩く必要はない。俺が運ぶと言っただろう」
「そういう物理的な話じゃなくてですね……! 周りの騎士たちの視線が痛いんです。みんな『副団長、あいつを食ったな』って顔で見てくるんですよ!?」
「事実だ。文句があるなら俺に直接言えと伝えろ。……それとも、嫌だったのか?」
アルス様が、少しだけ不安そうに俺の頬を撫でる。
そのギャップ! さっきまで魔導師を壁に埋めていた男が、俺の顔色を伺っている!
萌え死ぬ。このギャップだけで白飯十杯はいける。
「嫌なわけないじゃないですか! むしろ、一生このベッドの住人になりたいくらいです!」
俺が勢いよく答えると、アルス様は満足げに鼻を鳴らし、俺の額に優しくキスを落とした。
……これ、本当に悪役令息ルートか? 甘すぎて溶けそうだ。
そんな幸せな空気を切り裂いたのは、扉を激しく叩く音だった。
「お二人さーん! 盛り上がってるところ悪いんだけど、緊急事態よ! 鼻血拭いて待ってる余裕もないわ!」
リリアーヌ様の、全く緊迫感のない叫び声。
俺とアルス様は慌てて身なりを整え(といっても俺はアルス様の私服を借りる羽目になったが)、扉を開けた。
そこには、大量の資料を抱えたリリアーヌ様が、目を皿のようにして俺たちの様子を観察していた。
「……あら、セシル様。その服、アルス様のよね? 肩が落ちてて……ああん、背徳感。ごちそうさまです」
「リリアーヌ。ふざけているなら叩き出すぞ」
アルス様が剣を帯び直しながら冷たく言い放つ。
リリアーヌ様は「ひっ」と短く悲鳴を上げ、すぐに真面目な顔(自称)に戻った。
「わかってるわよ。さっきの侵入者、やっぱり『教会』の過激派だったわ。彼ら、セシル様の中に眠る『負の魔力』を呼び覚まして、この国を混乱させようとしてる。ゲームのシナリオが、強制的にセシル様を悪役に仕立て上げようと歪み始めてるの」
リリアーヌ様の言葉に、室内の温度がスッと下がった。
本来、この世界はゲームだ。
セシルが悪役として死ぬことで物語が完結するシステム。
俺がアルス様に愛されることでそのフラグを折った結果、世界そのものが「修正」をかけようとしているらしい。
「……負の魔力だと? セシルにそんなものはない。こいつはただの、救いようのない変わり者だ」
アルス様が俺の肩を抱き、守るように引き寄せる。
その言葉、褒め言葉として受け取っていいんですよね?
「私だってそう信じたいわよ。でも、教会の司教たちは本気。次の夜会で、セシル様を『呪われた子』として告発するつもりよ。そうなれば、アルス様、あなたでも彼を守りきれなくなるかもしれない」
リリアーヌ様の瞳に、転生者としての切実な色が宿る。
彼女はこの世界を、そして登場人物たちを愛している。だからこそ、理不尽なバッドエンドを許せないのだ。
「告発……。つまり、僕が公開処刑されるフラグが復活したってことですか?」
俺が尋ねると、アルス様の手が、痛いくらいに俺の肩に食い込んだ。
「……させるか。そんなことは、絶対に」
アルス様の銀色の瞳が、夜の闇よりも深く、鋭く光る。
彼は俺の前に立ち、リリアーヌ様に宣言した。
「リリアーヌ、貴女に頼みがある。聖女の権限で、教会の動きを封じろ。……その間に、俺は『騎士のやり方』で奴らの根源を叩き潰す」
「……いいわ。その言葉、待ってた。セシル様の幸せは、私の同人誌……じゃなくて、私の魂の救いなんだから!」
リリアーヌ様は力強く頷いた。
最強のスパダリ騎士と、最強のメタ知識持ち聖女。
この二人がタッグを組めば、運命なんて紙屑同然だ。
(……あ、でも待って。二人ともやる気満々だけど、当の本人の僕はどうすれば?)
「セシル。お前は俺の側にいろ。一分一秒、視界から消えるな」
アルス様はそう言うと、俺の首筋にあるチョーカー(首輪)の魔石に指先で触れた。
そこから、彼の温かくも力強い魔力が流れ込んでくる。
「運命が邪魔をするなら、俺がその運命を斬る。……お前はただ、俺の愛だけを信じていればいい」
その力強い言葉に、俺は確信した。
この物語の主導権(ハンドル)を握っているのは、ゲームのシステムじゃない。
目の前の、俺への愛で狂いかけている、この最強の推しなんだ。
「……はい、アルス様。僕、どこまでもついていきます!」
甘い事後から一転、物語は国を揺るがす大きな渦へと巻き込まれようとしていた。
だが、俺の心は不思議と落ち着いていた。
だって、隣には世界で一番かっこいい「僕の騎士様」がいるのだから。
俺、セシルは、アルス様の広いベッドの中でシーツに包まりながら、消え入りそうな声を出した。
資料室での一件のあと、自室に連れ戻された俺を待っていたのは、文字通り「骨の髄まで愛でられる」ような執着の嵐だった。
アルス様は俺の腰を抱き寄せ、まだ熱を帯びた瞳で俺を見下ろしている。
最強の騎士が、今はただの一人の男として、俺を逃がさないように閉じ込めている。
「……歩く必要はない。俺が運ぶと言っただろう」
「そういう物理的な話じゃなくてですね……! 周りの騎士たちの視線が痛いんです。みんな『副団長、あいつを食ったな』って顔で見てくるんですよ!?」
「事実だ。文句があるなら俺に直接言えと伝えろ。……それとも、嫌だったのか?」
アルス様が、少しだけ不安そうに俺の頬を撫でる。
そのギャップ! さっきまで魔導師を壁に埋めていた男が、俺の顔色を伺っている!
萌え死ぬ。このギャップだけで白飯十杯はいける。
「嫌なわけないじゃないですか! むしろ、一生このベッドの住人になりたいくらいです!」
俺が勢いよく答えると、アルス様は満足げに鼻を鳴らし、俺の額に優しくキスを落とした。
……これ、本当に悪役令息ルートか? 甘すぎて溶けそうだ。
そんな幸せな空気を切り裂いたのは、扉を激しく叩く音だった。
「お二人さーん! 盛り上がってるところ悪いんだけど、緊急事態よ! 鼻血拭いて待ってる余裕もないわ!」
リリアーヌ様の、全く緊迫感のない叫び声。
俺とアルス様は慌てて身なりを整え(といっても俺はアルス様の私服を借りる羽目になったが)、扉を開けた。
そこには、大量の資料を抱えたリリアーヌ様が、目を皿のようにして俺たちの様子を観察していた。
「……あら、セシル様。その服、アルス様のよね? 肩が落ちてて……ああん、背徳感。ごちそうさまです」
「リリアーヌ。ふざけているなら叩き出すぞ」
アルス様が剣を帯び直しながら冷たく言い放つ。
リリアーヌ様は「ひっ」と短く悲鳴を上げ、すぐに真面目な顔(自称)に戻った。
「わかってるわよ。さっきの侵入者、やっぱり『教会』の過激派だったわ。彼ら、セシル様の中に眠る『負の魔力』を呼び覚まして、この国を混乱させようとしてる。ゲームのシナリオが、強制的にセシル様を悪役に仕立て上げようと歪み始めてるの」
リリアーヌ様の言葉に、室内の温度がスッと下がった。
本来、この世界はゲームだ。
セシルが悪役として死ぬことで物語が完結するシステム。
俺がアルス様に愛されることでそのフラグを折った結果、世界そのものが「修正」をかけようとしているらしい。
「……負の魔力だと? セシルにそんなものはない。こいつはただの、救いようのない変わり者だ」
アルス様が俺の肩を抱き、守るように引き寄せる。
その言葉、褒め言葉として受け取っていいんですよね?
「私だってそう信じたいわよ。でも、教会の司教たちは本気。次の夜会で、セシル様を『呪われた子』として告発するつもりよ。そうなれば、アルス様、あなたでも彼を守りきれなくなるかもしれない」
リリアーヌ様の瞳に、転生者としての切実な色が宿る。
彼女はこの世界を、そして登場人物たちを愛している。だからこそ、理不尽なバッドエンドを許せないのだ。
「告発……。つまり、僕が公開処刑されるフラグが復活したってことですか?」
俺が尋ねると、アルス様の手が、痛いくらいに俺の肩に食い込んだ。
「……させるか。そんなことは、絶対に」
アルス様の銀色の瞳が、夜の闇よりも深く、鋭く光る。
彼は俺の前に立ち、リリアーヌ様に宣言した。
「リリアーヌ、貴女に頼みがある。聖女の権限で、教会の動きを封じろ。……その間に、俺は『騎士のやり方』で奴らの根源を叩き潰す」
「……いいわ。その言葉、待ってた。セシル様の幸せは、私の同人誌……じゃなくて、私の魂の救いなんだから!」
リリアーヌ様は力強く頷いた。
最強のスパダリ騎士と、最強のメタ知識持ち聖女。
この二人がタッグを組めば、運命なんて紙屑同然だ。
(……あ、でも待って。二人ともやる気満々だけど、当の本人の僕はどうすれば?)
「セシル。お前は俺の側にいろ。一分一秒、視界から消えるな」
アルス様はそう言うと、俺の首筋にあるチョーカー(首輪)の魔石に指先で触れた。
そこから、彼の温かくも力強い魔力が流れ込んでくる。
「運命が邪魔をするなら、俺がその運命を斬る。……お前はただ、俺の愛だけを信じていればいい」
その力強い言葉に、俺は確信した。
この物語の主導権(ハンドル)を握っているのは、ゲームのシステムじゃない。
目の前の、俺への愛で狂いかけている、この最強の推しなんだ。
「……はい、アルス様。僕、どこまでもついていきます!」
甘い事後から一転、物語は国を揺るがす大きな渦へと巻き込まれようとしていた。
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だって、隣には世界で一番かっこいい「僕の騎士様」がいるのだから。
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