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14話
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晩餐会の中盤。ヴァルター様が他の領主から挨拶を受けている間、僕は少しだけその場を離れ、壁際のテーブルにある果物を見ていた。
村では見たこともないような、宝石のように輝く異国の果実。
「……美味しそうだなあ」
思わず独り言が漏れた、その時だった。
「おやおや、どこから紛れ込んだのかと思えば、ただの平民の小僧じゃないか」
背後からかけられた下卑た声に、僕はびくりと肩を揺らした。
振り返ると、派手な絹の衣装を着た三人の若い貴族たちが、僕を見下して笑っていた。
「公爵閣下もお変わりになられたものだ。生贄をただ殺すのではなく、着飾らせて連れ歩くのが最近の流行りなのかい?」
「ひどい趣味だ。……おい、小僧。呪われて腕が腐り始めるのはいつ頃なんだ? 見世物にしてくれるなら、金くらい払ってやるぞ」
彼らはクスクスと笑いながら、僕の肩を小突こうとした。
僕は一歩後ろに下がり、震える声で答える。
「……閣下は、そんなひどい人じゃありません。呪いだって……」
「ははっ、呪いだってなんだ? お前も化け物の仲間入りか?」
一人が僕の腕を強引に掴もうと手を伸ばした。
けれど、その手が僕に触れる直前――。
キィィィィン、という耳鳴りのような音が響き、周囲の温度が急激に下がった。
「――その汚い手を、今すぐ引け」
地獄の底から響くような声。
気がつくと、僕のすぐ後ろにヴァルター様が立っていた。
彼の全身から溢れ出す漆黒の魔力が、会場の空気を物理的に押し潰している。
「こ、公爵閣下……! い、いや、これはただの冗談で……」
「私のノアに触れようとした罪、万死に値する。……この場で壊死したいか?」
ヴァルター様が手袋を脱ごうとした。その動作だけで、若い貴族たちは腰を抜かして床にへたり込んだ。
呪紋が浮き出た彼の右手が、陽炎のように揺らめいている。
周囲の貴族たちも、恐怖のあまり悲鳴を上げて逃げ出した。
「閣下、ダメです!」
僕は咄嗟に、ヴァルター様の剥き出しになろうとしていた右手を両手で包み込んだ。
「……ノア、離せ。こいつらは……」
「閣下、僕を見てください! ……僕は平気です。汚い言葉なんて、全然平気ですから」
僕は必死に、彼の中に渦巻く怒りの奔流を吸い取った。
僕の手から伝わる温かさに、ヴァルター様の瞳の赤みが、ゆっくりと消えていく。
彼は深く、長く息を吐き出すと、腰を抜かしている男たちを見下して言い放った。
「……私のノアは、お前たちのようなゴミが触れていい存在ではない。……二度と、私の視界に入るな」
ヴァルター様は僕の手を引くと、騒然とする会場を堂々と横切り、中央のダンスフロアへと僕を導いた。
彼が怒ってくれたのは、僕のため。
その事実が、胸の奥を熱く焦がしていた。
村では見たこともないような、宝石のように輝く異国の果実。
「……美味しそうだなあ」
思わず独り言が漏れた、その時だった。
「おやおや、どこから紛れ込んだのかと思えば、ただの平民の小僧じゃないか」
背後からかけられた下卑た声に、僕はびくりと肩を揺らした。
振り返ると、派手な絹の衣装を着た三人の若い貴族たちが、僕を見下して笑っていた。
「公爵閣下もお変わりになられたものだ。生贄をただ殺すのではなく、着飾らせて連れ歩くのが最近の流行りなのかい?」
「ひどい趣味だ。……おい、小僧。呪われて腕が腐り始めるのはいつ頃なんだ? 見世物にしてくれるなら、金くらい払ってやるぞ」
彼らはクスクスと笑いながら、僕の肩を小突こうとした。
僕は一歩後ろに下がり、震える声で答える。
「……閣下は、そんなひどい人じゃありません。呪いだって……」
「ははっ、呪いだってなんだ? お前も化け物の仲間入りか?」
一人が僕の腕を強引に掴もうと手を伸ばした。
けれど、その手が僕に触れる直前――。
キィィィィン、という耳鳴りのような音が響き、周囲の温度が急激に下がった。
「――その汚い手を、今すぐ引け」
地獄の底から響くような声。
気がつくと、僕のすぐ後ろにヴァルター様が立っていた。
彼の全身から溢れ出す漆黒の魔力が、会場の空気を物理的に押し潰している。
「こ、公爵閣下……! い、いや、これはただの冗談で……」
「私のノアに触れようとした罪、万死に値する。……この場で壊死したいか?」
ヴァルター様が手袋を脱ごうとした。その動作だけで、若い貴族たちは腰を抜かして床にへたり込んだ。
呪紋が浮き出た彼の右手が、陽炎のように揺らめいている。
周囲の貴族たちも、恐怖のあまり悲鳴を上げて逃げ出した。
「閣下、ダメです!」
僕は咄嗟に、ヴァルター様の剥き出しになろうとしていた右手を両手で包み込んだ。
「……ノア、離せ。こいつらは……」
「閣下、僕を見てください! ……僕は平気です。汚い言葉なんて、全然平気ですから」
僕は必死に、彼の中に渦巻く怒りの奔流を吸い取った。
僕の手から伝わる温かさに、ヴァルター様の瞳の赤みが、ゆっくりと消えていく。
彼は深く、長く息を吐き出すと、腰を抜かしている男たちを見下して言い放った。
「……私のノアは、お前たちのようなゴミが触れていい存在ではない。……二度と、私の視界に入るな」
ヴァルター様は僕の手を引くと、騒然とする会場を堂々と横切り、中央のダンスフロアへと僕を導いた。
彼が怒ってくれたのは、僕のため。
その事実が、胸の奥を熱く焦がしていた。
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