『OS理論で異世界攻略記』~寝たきりだったぼくが、世界の仕組みを読み解いて“人生を再起動”した件 ~

ゐみ・ティルダ・アマリン。

文字の大きさ
5 / 16

第4話:夜を越えるために ── 焚き火という名の【初期灯火】

しおりを挟む
 草原を歩き続けていたが、周囲は驚くほど静かだった。
 風が草を揺らす音だけが耳に残る。

 生き物の気配がないことを、美園も春斗も肌で感じていた。

「……あそこ。少し窪んどる」

 美園が指さした先に、草が低くなった場所があった。
 風も夜露も、ここなら多少は避けられそうだ。

 三人はそこで足を止めた。

 春斗は壁のように立つ草を背に、ゆっくりと腰を下ろす。
 しのんはすぐ隣に寄り添い、春斗の服を掴んだまま離れない。

 美園が周囲を確認し終えると、「……ここなら、
 ちょっとは休めるねぇ」と、小さく息を吐いた。

 春斗は頷き
「……火をつけたい。夜は冷えるから」と、静かに言った。

 美園がカバンを抱え直す。
「火……どうやって? ライターもマッチもなかよ」

 春斗は少し考え、「美園さん、カバンの中に……
 金属っぽいもの、ありますか?」と尋ねた。

「金属……あ、これ」
 美園は、食べ終えたおにぎりを包んでいた
 アルミホイルを取り出した。

 春斗は受け取り、しのんに向き直る。
 「しのんちゃん、前に杖から抜き取った電池は、
 まだ持ってるかな?」

 しのんは、ポケットから単三電池を取り出し
「……はい」と差し出した。

 春斗は優しく微笑む。
「ありがとう。これでね火をつけてみるよ。
 ちょっと見ててね」

 しのんはこくりと頷き、春斗の隣に座り直した。

 春斗はアルミホイルを細く裂き、手の届く範囲に
 ある乾いた枯れ草を少しだけ集めた。
 指先が震えるが、なんとか形を整える。

「……いくよ」

 アルミの細線を電池に触れさせる。

 パチッ。

 火花が走り、枯れ草の一部が黒く焦げた。
 春斗は震える指でそっと風を送る。

 焦げた部分が赤く光り、じわりと火種が生まれた。

 美園が息を呑む。
「……ほんとに、ついた……」

 春斗は枯れ草を少しずつ重ねていく。
 炎が小さく立ち上がった。

 美園は周囲を見回し、手の届く範囲に
 落ちていた細い枯れ枝を拾ってくる。
「これくらいなら……大丈夫やろ?」

 春斗は頷き「ありがとう。これで……火が育つ」
 と枝を慎重に乗せた。

 炎が大きくなり、3人の顔を暖かく照らす。
 しのんは、火に向かって小さな手をそっとかざし、
「……あったかい……」と微笑んだ。

 美園は焚き火を見つめながら
「助かったよ。ほんとにねぇ」と静かに言った。
 その声には、わずかに柔らかさが混じっていた。

 春斗は火を見つめていた。
 炎の揺らぎが、さっきまでの喧騒とは
 別世界のように静かだ。

 ふと地面を割るように突っ込んできた雷角サイの姿が蘇る。
 既に2度も死にかけた。それでも今ここにいる。

 その事実を理解した瞬間、ふっと足の感覚が抜けた。
 生き残った実感が、遅れて押し寄せてきた反動だった。

 美園が気づき、そっと肩に手を置いた。

「……寒さだけやなかね。さっきから
 足が言うこと聞いとらんとやろ?」

 春斗は唇を噛む。
「……ごめんなさい。迷惑かけてばっかりで」

 美園は首を振る。
「迷惑とか言わんでよか。
 生き残るために、みんな必死なんよ」

 しのんが春斗の服をそっと掴み直す。
「……はると、おにーちゃん、だいじょうぶ?」

 春斗は微笑んだ。
「大丈夫。ありがとう」

 焚き火の炎が揺れ、3人の影が草原に伸びる。

 春斗は静かに息を吸い、胸の奥に
 溜まっていたものを吐き出すように言った。

「……わけもわからず死んでたまるか。
 理不尽に殺されてやるもんか。
 何があっても、生き残ってやる……!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる

邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。 オッサンにだって、未来がある。 底辺から這い上がる冒険譚?! 辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。 しかし現実は厳しかった。 十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。 そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について

国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”  人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...