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お兄様が出発した日の午後、これからの事を話すため、お父様が師匠を連れてきてくれた。
お父様は仕事のため、私とメイのふたりで応接室に入る。中には、鍛えられた筋肉が目立つ男性と、ロバートがいた。

「オパール家長女、プルメリアでございます。よろしくお願い致します。」
「ジェイソン·エメラルドだ。騎士団長を務めている。さて、堅苦しい挨拶は終わりにして、普通に話そうか。身を守る為に剣を習いたいと言うことで良かったな?」
「はい!」
「でもな、身を守る為ならば、剣ではないほうがいいと思うぞ。」
「え?」
「騎士と違い、令嬢は常に剣を携帯している訳ではないからな。」
「あっ!」
「考えもしなかったか。ははは!大人びているとは聞いたが、まだまだだな!」

師匠は大きな身体を揺らして笑った。

師匠…好みだったのに…。
邪な考えとかではなく、ただ純粋に好みの人に教えてもらったほうが、やる気が出ると思ったのに!

「では、別の先生を探して頂かなくてはなりませんね……」
「そんな事ないぞ。剣だけで騎士団長にはなれんからな。体術も教えられるぞ。」
「!!ぜひお願いいたします!」
「おっ!やる気だな。じゃあ、まずそのまま外を走れ!」
「このまま?」

師匠は笑顔でこちらを見ている。
今の私はゴテゴテのドレスを着ていた。今日は話だけの予定だったからだ。

「そうだ!ドレスで走れるようになったら、その後に体術を教えてやる!」
「えっと…靴は…」
「そのままだ。」
「……ハイヒール…」
「ん?やらないのか?」
「エメラルド騎士団長様、失礼を承知で言わせて頂きます。それは、あまりに、」
「……行ってきます。」

ロバートは止めようとしてくれたのだろうけど、私は部屋を出て外に向かった。後ろからはメイがついてくる。

「プルメリア様!着替えましょう!」
「いいえ!師匠はこのまま走れと仰ったわ。」
「でも!」

途中、カルアに会った。

「プルメリア様、お話は終わったのですか?」
「いいえ、これからちょっと走ってくるわ。」
「……え?」

カルアは目が点になり、一瞬固まった。そして、メイがカルアに説明しているようだが、それを気にせず、私は外へと向かう。

「プルメリア様、お待ちください。」

いつも冷静なカルアが取り乱していたわ。こういう姿が見れるなら、走りに行くのも、悪くないわね。

ハイヒールで走るという未知のことが不安だったが、気持ちを切り替えるしかない。
走る事を、断ることは出来るかもしれないし、それが正解かもしれない。もしかしたら、からかわれているだけかもしれない。でも自分で決めた事、撤回する事も嫌だし、やる気があると見せたかった。そして、何か意味があると信じて走る事にした。







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