異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ

文字の大きさ
68 / 134

52

しおりを挟む
街は賑やかで、人が行き交い、道の両隣には屋台もある。

「お祭りみたい。」
「この辺はいつもこの状態だな。祭りはもっと人が増える。」
「来たことがあるのですか?」
「騎士団が警備に当たるから、仕事でな。仕事以外では、舞踏会に出なくてはならないから来れないな。」
「お祭りの日は王城でも舞踏会が開かれますものね。」
「今年はリアも参加できるな。」
「はい。少し不安ですが、楽しみでもあります。」
「エスコートは俺がするからな。」
「仕事があるのでは?」
「仕事があったら、誰と出るつもりだ?」
「それは、まだ…。」
「リアの横は俺だ。しかも、社交会デビューになるのだろう?」
「まぁ、そうなりますね。」
「それこそ、俺が隣りにいたい。」
「ジェイク…。嬉しいです。余計に楽しみになりました。ジェイクが一緒に行ってくれるのだと思ったら、不安もなくなります。」
「それは良かった。」

私達は手を繋いだままぶらぶら歩く。

「あ、たこ焼き!焼きそば!じゃがバター!クレープも!」
「ハハッ。食べ物ばかりだな。」

ジェイクに笑われたが、気にしない。
家では食べられないものが沢山ある。
クレープは家で出るが、上品にお皿に盛られている。
そうではない!
クレープは、たっぷり生クリームを、歩きながら食べたいのだ!

「ジェイク。お昼はどうする予定ですか?」
「まだ決めていないが?」
「それなら、」

私が食べ歩きを希望すると、了承してくれた。

「まずはクレープです。ジェイクは何にしますか?私は生クリームスペシャルで!」
「はい。」
「俺は甘いものより、ソーセージ入りがいい。」
「はい。」

店員さんは2つのクレープをパパッと作って渡してくれた。支払いをしようとするとジェイクに止められる。

「今日はリアの誕生日だろう。そうでなくても、リアに払わせる気はない。」
「でも…」
「高給取りだから安心しろ。」
「…ふふふっ。ありがとうございます。」

雑貨屋の前を通ると、天然石のアクセサリーが置かれていた。

「私、こういうの好きだったんですよね。」
「好きだった?…ああ、そういうことか。覗くか?」
「良いのですか?」
「もちろんだ。」

私は、ウキウキしながら見て回る。

「これは、グレームーンストーン。実物は初めて見たわ。綺麗ね。」
「いらっしゃいませ。お客さんよく分かりましたね。…絆、円満などの意味を持つから、恋人に送るのに丁度いいですよ。」
「あ、すみません。もう一度言ってもらえますか?」

私は、最後の方が聞き取れず、商品から顔を上げて聞き直したが、店員はニッコリ笑っただけだった。

「これを頂こう。」

私の横からジェイクが財布を出しながら、私が見ていたティアドロップ型のネックレスを指す。

「え?」
「これが気に入ったのだろう?」
「いえ、別にそうではなくて。それに、買うなら自分で買いますよ。手持ちもありますし。」

お父様から、自由に使っていいとお金はある程度貰っているので、私はきちんと財布を持ってきていた。
学園や家にいると、ほとんど使わないので、使うのを楽しみにしていたところもある。

「彼女さん、そういうのは彼氏さんに買ってもらいなよ。彼氏さんだって自分のお金で、自分の目の色をしたアクセサリーを贈りたいはずだよ!」

見ていたグレームーンストーンの色は、ジェイクの目の色と同じだった。
だから、私も見入ってしまったというのは確かだ。

「そういう事だ。」
「ジェイク…。それなら、私からもプレゼントさせてくださいね。私の目の色の物。」
「今日はリアの誕生日だったはずだが?」
「では、ジェイクの誕生日の前祝いと言うことで。」
「まだ、2ヶ月も先だぞ?」
「お願い…。」

ジッとジェイクを見つめると、ジェイクが折れた。

「…分かった。」
「ふふっ。形は何がいいでしょうか?」
「リアに任せる。」
「ブレスレット?ネックレス?カフス?ピン?ゔーん…。」

ブレスレットも、ネックレスも動きの邪魔になる?気にならない人もいるだろうけど…。
カフスやピンは騎士服に使えないわよね?せっかく買うならいつも使えるものがいいわよね…。

なかなか決められず色々見ていると、私が考えている間、店内を見ていたジェイクが話しかけてきた。

「やはり、俺が決めていいか?」
「すみません。なかなか決められなくて…。」
「いや、よく考えて選んでくれているのは嬉しいし、ずっと見ていられる。そうではなくて。」
「ん?何か気に入ったのがありました?」
「ああ。買ってくれるなら、これがいい。」

それは、シルバーの四角い台座にタンザナイトがはめられたネックレスだった。

「ネックレスは動くときに邪魔になりませんか?」
「…もしかして、そういう事を考えて悩んでいたのか?」
「ええ。仕事に差し支えがなくて、いつも身につけられる物はないかなと…。」
「リア。」
「はい?」
「抱きしめていいか?」

!!!

一気に顔が赤くなる。

「な、な、なんて事を。ここでは駄目です!」
「では、後でな。」
「あ、後!?」
「今、していいのか?」
「…あ、とでお願いします。」

しない選択は無いのね…。

店員に笑われた。

「これなら大きくもないし、動きに影響はない。何よりこの石の色が、リアの目にしか見えない。」
「あ、ホントですね。彼女さんの目をそのまま取り出したような…。いや、表現が悪いな。すみません。」
「いや、俺もそう思ったからな。」
「では、これを。」
「はい。チェーンは長さと太さを決められます。こちらから選んでください。」

チェーンは6種類あった。
私はトップが鎖骨辺りに来る細いチェーンを、ジェイクはトップが胸辺りにくる長めのチェーンを選んだ。

店員は2つのネックレスをそれぞれ紙袋に入れてくれた。

「ありがとうございました!」

私達は、街歩きを再開した。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました

Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。 そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。 それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。 必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが… 正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

転生令嬢、シスコンになる ~お姉様を悪役令嬢になんかさせません!~

浅海 景
恋愛
物心ついた時から前世の記憶を持つ平民の子供、アネットは平凡な生活を送っていた。だが侯爵家に引き取られ母親違いの姉クロエと出会いアネットの人生は一変する。 (え、天使?!妖精?!もしかしてこの超絶美少女が私のお姉様に?!) その容姿や雰囲気にクロエを「推し」認定したアネットは、クロエの冷たい態度も意に介さず推しへの好意を隠さない。やがてクロエの背景を知ったアネットは、悪役令嬢のような振る舞いのクロエを素敵な令嬢として育て上げようとアネットは心に誓う。 お姉様至上主義の転生令嬢、そんな妹に絆されたクーデレ完璧令嬢の成長物語。 恋愛要素は後半あたりから出てきます。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜

みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。 悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。 私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私はただのモブ。 この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。 ……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……? ※2025年5月に副題を追加しました。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...