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王城に着くと、リカルドはプリムローズをエスコートする。その後ろから、プルメリアが微笑みながら付いている。
何処からともなく、息がもれるのが聞こえてくる。
何?
プリムローズは周りを見ると、皆こちらをうっとりと見ている。
…あ!お母様か。
自分で納得し頷いていると、リカルドが小声で話しかけてきた。
「なんとなく考えている事は分かるけれど、違うと思うよ。」
「え?」
「きっと、『お母様が注目されているのね』とか考えていたのではないかな?」
「…その通りです。」
「正確には、半分は合っているかな。」
「?」
「エメラルド嬢も注目されているという事だよ。」
「まさか。ありえません。」
「何故?」
「何故って…。」
「君も自分が分かっていないね。」
会場に着くと、プリムローズ達はリカルドへの挨拶の為にやってくる貴族たちに囲まれる。
プルメリアともいつの間にか離れてしまった。
「すまないね。今回はデビューエスコートという大切な仕事があるんだ。また後日。」
リカルドは、周りに集まっている貴族たちに言った。集まった人たちは、渋々離れる。
「外交官としての仕事は良いのですか?」
「それはこの場でどうこうしなくても大丈夫だよ。必要な挨拶は、付き合ってもらうけどね。」
「分かりました。」
少しすると、王族が入場してきた。数段階段を上がった壇上のイスの前に立つ。
プリムローズの父、ジェイクも階段に控えている。
王の挨拶が終わると、王への挨拶の列が出来る。
プリムローズ達も挨拶に向かう。
「リカルド外交官とプリムローズ·エメラルド様」
陛下の前まで行くと、名前が呼ばれ、一通りの挨拶を終えると、陛下から1言。
「プリムローズ·エメラルド嬢。婦人によく似ている。美しくなったな。」
「ありがとうございます。」
私達は陛下の前を離れ、他の方への挨拶回りもした。
その挨拶の時に何度も言われたのが、先程陛下にも言われた『婦人に似ている。美しい。』
褒められているのだろうが、複雑な気持ちになった。
お母様は美しいし、似ていると言われるのは嬉しいわよ。嬉しいはずなんだけど…。
プリムローズは、俯く。
「大丈夫かい?疲れたかな?」
「…少し。」
「飲み物でも取ってこよう。」
「いいえ。少し外の風に当たって来ても良いですか?」
「では、私も行こう。」
「ありがとうございます。」
しかし、途中でリカルドは呼び止められ、他の招待客と会話が始まってしまった。
「すまないね。すぐに行くから。」
プリムローズはひとりでバルコニーへ出た。そこからは庭が見える。階段があり降りることができそうだ。
少し、行ってみようかな。
大丈夫。ノアもいる筈だし。
プリムローズは庭へ降りた。
すると、後ろから声をかけられる。
「プリムローズ様。」
「ノア。」
「あまり、会場からお離れにならない方がよろしいかと。」
「でも、ノアがいてくれるなら安全でしょう?少しだけだから。」
「…分かりました。すぐに戻りますよ?」
「ええ。ありがとう。」
プリムローズの少し後ろをノアがついて歩く。
「…ノア。私はきちんとできているかしら?」
「…」
「皆、私がお母様に似て美しいと言うのよ。それは、嬉しいの。嬉しいのだけれど…。」
「プリムローズ様と、プルメリア様は違います。自信をお持ちください。」
「ノア、ありがとう。………私、貴方が好き。」
「それは、」
「親愛のではないわ。恋愛の好きよ。」
「そうですか。」
「他にはないの?」
「勘違いです。年齢をお考えください。私は、40過ぎのおじさんです。」
「でも、心がときめくのだもの。」
「私は、影です。危険を伴いますので、恋愛をする気はございません。」
「…以前、メランが言っていたわ。貴方が独身の理由は少し違うと。」
全く、姉上は…。
「どんな理由にせよ。プリムローズ様をそういう対象に見る事はありません。そもそも、身分が違います。」
「でも…」
プリムローズは俯いた。
「おわかりですね。…そろそろ会場に戻られては如何ですか?」
「…諦めないから。」
プリムローズが小声で言ったその言葉は、ノアには聞こえていなかった。
そして、会場に戻るプリムローズは、後ろから付いてきてくれているノアの事を考える。
仕事ではない独身の理由…。
遊びたいから?
人を好きになれないから?
メランの勘違いだったとか?
あとは、えーと…
………結婚できない人をすき?
プリムローズは、勢いよく振り返った。
そこにはノアは居らず、すでに姿を消していた。
何処からともなく、息がもれるのが聞こえてくる。
何?
プリムローズは周りを見ると、皆こちらをうっとりと見ている。
…あ!お母様か。
自分で納得し頷いていると、リカルドが小声で話しかけてきた。
「なんとなく考えている事は分かるけれど、違うと思うよ。」
「え?」
「きっと、『お母様が注目されているのね』とか考えていたのではないかな?」
「…その通りです。」
「正確には、半分は合っているかな。」
「?」
「エメラルド嬢も注目されているという事だよ。」
「まさか。ありえません。」
「何故?」
「何故って…。」
「君も自分が分かっていないね。」
会場に着くと、プリムローズ達はリカルドへの挨拶の為にやってくる貴族たちに囲まれる。
プルメリアともいつの間にか離れてしまった。
「すまないね。今回はデビューエスコートという大切な仕事があるんだ。また後日。」
リカルドは、周りに集まっている貴族たちに言った。集まった人たちは、渋々離れる。
「外交官としての仕事は良いのですか?」
「それはこの場でどうこうしなくても大丈夫だよ。必要な挨拶は、付き合ってもらうけどね。」
「分かりました。」
少しすると、王族が入場してきた。数段階段を上がった壇上のイスの前に立つ。
プリムローズの父、ジェイクも階段に控えている。
王の挨拶が終わると、王への挨拶の列が出来る。
プリムローズ達も挨拶に向かう。
「リカルド外交官とプリムローズ·エメラルド様」
陛下の前まで行くと、名前が呼ばれ、一通りの挨拶を終えると、陛下から1言。
「プリムローズ·エメラルド嬢。婦人によく似ている。美しくなったな。」
「ありがとうございます。」
私達は陛下の前を離れ、他の方への挨拶回りもした。
その挨拶の時に何度も言われたのが、先程陛下にも言われた『婦人に似ている。美しい。』
褒められているのだろうが、複雑な気持ちになった。
お母様は美しいし、似ていると言われるのは嬉しいわよ。嬉しいはずなんだけど…。
プリムローズは、俯く。
「大丈夫かい?疲れたかな?」
「…少し。」
「飲み物でも取ってこよう。」
「いいえ。少し外の風に当たって来ても良いですか?」
「では、私も行こう。」
「ありがとうございます。」
しかし、途中でリカルドは呼び止められ、他の招待客と会話が始まってしまった。
「すまないね。すぐに行くから。」
プリムローズはひとりでバルコニーへ出た。そこからは庭が見える。階段があり降りることができそうだ。
少し、行ってみようかな。
大丈夫。ノアもいる筈だし。
プリムローズは庭へ降りた。
すると、後ろから声をかけられる。
「プリムローズ様。」
「ノア。」
「あまり、会場からお離れにならない方がよろしいかと。」
「でも、ノアがいてくれるなら安全でしょう?少しだけだから。」
「…分かりました。すぐに戻りますよ?」
「ええ。ありがとう。」
プリムローズの少し後ろをノアがついて歩く。
「…ノア。私はきちんとできているかしら?」
「…」
「皆、私がお母様に似て美しいと言うのよ。それは、嬉しいの。嬉しいのだけれど…。」
「プリムローズ様と、プルメリア様は違います。自信をお持ちください。」
「ノア、ありがとう。………私、貴方が好き。」
「それは、」
「親愛のではないわ。恋愛の好きよ。」
「そうですか。」
「他にはないの?」
「勘違いです。年齢をお考えください。私は、40過ぎのおじさんです。」
「でも、心がときめくのだもの。」
「私は、影です。危険を伴いますので、恋愛をする気はございません。」
「…以前、メランが言っていたわ。貴方が独身の理由は少し違うと。」
全く、姉上は…。
「どんな理由にせよ。プリムローズ様をそういう対象に見る事はありません。そもそも、身分が違います。」
「でも…」
プリムローズは俯いた。
「おわかりですね。…そろそろ会場に戻られては如何ですか?」
「…諦めないから。」
プリムローズが小声で言ったその言葉は、ノアには聞こえていなかった。
そして、会場に戻るプリムローズは、後ろから付いてきてくれているノアの事を考える。
仕事ではない独身の理由…。
遊びたいから?
人を好きになれないから?
メランの勘違いだったとか?
あとは、えーと…
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プリムローズは、勢いよく振り返った。
そこにはノアは居らず、すでに姿を消していた。
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