16 / 142
16 ピクニック
しおりを挟む
「本当に行くんだな…。」
朝の支度を終えて、玄関に行くとリック兄様が、ボソッと呟いた。
「そうですよ?リック兄様、どうしました?」
「家族で何かするとか、母様がいなくなってから初めてだから驚いてる。」
「え?そうなのですか?」
「そうなんだよ。父上は仕事で、休みがほとんど無かったし、帰りも遅かったから。」
「え?では、今回は無理してくれたんですかね…。」
お父様、本当に大丈夫だったのかな…?
「それは、リーナに誘われたからだよ。俺らでは、こうはいかない。」
「そんなことないと思いますが。」
「そんな事あるんだな~。」
「では、誘った事はあるのですか?」
「「それは…。」」
リック兄様とリオン兄様が顔を見合わせる。
「したことがないなら、分からないではないですか。」
「「…」」
「今日は、せっかく皆で行くのです。楽しみましょう。兄様達行きますよ。」
私は兄様達の手を掴み、外に出ようと歩き出した。
「リーナ。まだ父上が来てないよ。」
「…あ、そうでした。」
「リーナ…。」
後ろから、悲しそうな声が聞こえる。
振り返ると、お父様の姿があった。
「ごめんなさい。お父様。」
「謝られると、さらに…。」
「皆で出かけられるのが嬉しくて、つい…。」
「良いんだよ。分かっている。仕事にかまけて、家族との時間を蔑ろにしていた。私が悪いのだ。リックとリオンも今まですまなかったね。」
その言葉にパトリックもダリオンも目を丸くした。
もしかしてお父様、さっきの話を聞いていたのかな?
「さぁ、行こうか。」
外に出ると、アルは馬車の屋根へ止まり、ルーフは御者席に陣取った。
外の空気を感じたいらしい。
御者は驚いていたが、理由を話すと納得してくれた。
「自分も犬を飼っているので、分かります。何故か風とか好きですよね。」
「ふふっ。そうなの。なぜなのかしら。」
私達は、2台ある前の馬車に乗り込んだ。後ろの馬車はそれぞれの侍女と荷物が乗る。
私は、ピクニックへ行くだけなのに、キャンプ並みの荷物の多さに驚いていた。
「お父様。今日は日帰りでしたよね?」
「そうだよ。」
「あの荷物は?」
「色々いるだろう?パラソルに、テーブル、イス、お茶セット、食器etc…。」
「それ、殆どいらないと思います。」
「いや、いるでしょう。」
「いるよな。」
お父様と兄様達は、荷物の多さに疑問を持っていない。
この世界では、きっとこれが普通なんだ…。
「リーナの記憶ではどんな持ち物なんだ?」
前世ではどうだったかという事よね?
「私が思っているピクニックの道具は、皆が座れるくらいの大きさのシートにお弁当と水筒です。」
「それだけか?」
「はい。」
「野営訓練の様だな。」
「野営訓練ですか?」
「騎士の訓練の1つだよ。騎士は野宿することもあるからね。」
「学校でも、男は勉強の一環として経験するぞ。」
「男は?女生徒はしないのですか?」
「しないよ。」
「何故ですか?」
「汚れるし、大変だろ?」
「でも、野宿する様な事態が起こるかもしれませんよ?経験しておいて損はないと思いますが?」
「女性騎士を目指すとかない限り、そんな事態は起こらないと思うよ。」
「そうでしょうか。」
「そうだよ。」
出発から2時間後、目的地に着いた。
馬車から降りると、目の前に花が広がっている。
「これって、芝桜!?」
「知っているのか?」
「前世で、私が好きだった花です。こちらでも見れるなんて!」
「それは良かった。来たかいがあったな。」
「お父様とお母様の思い出の場所に私の好きな花…。何か勝手に運命を感じます。」
「そうか。」
「父上と母様の思い出の場所なのか?」
「そうですよ。新婚の時にいらしたそうです。」
「ふたりのそういう話初めて聞いた。」
「僕も。」
「ゴホン。…恥ずかしいからその話はやめようか。」
「…母様との話、聞きたいです。」
リオン兄様が小声で話す。
「そ、そうか?それなら…」
お父様は何かを察したのか、恥ずかしがりながらも、思い出話を話し始めた。
「…というわけなんだ。」
お父様は顔を赤くしている。
「聞いてるこっちが恥ずかしい。」
リック兄様は溜息をついているが、リオン兄様は話を聞けて満足そうだ。
「聞けてよかった。父上、また僕達の知らない母様の話を教えてね。」
「もちろんだ。」
「良いな~。私も恋したいな~。」
「「「まだ、早い!!」」」
私がそう言うと、3人に勢いよく否定される。
「あら?恋に年齢は関係ありませんよ?」
「「「まだ、3歳だろ!?」」」
「むぅ…。中身は大人。」
「大人は『むぅ』とか言わない。」
「むぅ!」
大人な筈なんだけど…。やっぱり実年齢に引っ張られる事もあるのは確かだ。
その後は、話をしている間に侍女たちが準備をしてくれていた軽食を取ることになった。
ちなみに、ルーフとアルはついた瞬間に動き出し、外を満喫している。
現在、ルーフは芝の所に身体をグリグリこすりつけ、アルは、私達の頭上を大きく旋回している。
朝の支度を終えて、玄関に行くとリック兄様が、ボソッと呟いた。
「そうですよ?リック兄様、どうしました?」
「家族で何かするとか、母様がいなくなってから初めてだから驚いてる。」
「え?そうなのですか?」
「そうなんだよ。父上は仕事で、休みがほとんど無かったし、帰りも遅かったから。」
「え?では、今回は無理してくれたんですかね…。」
お父様、本当に大丈夫だったのかな…?
「それは、リーナに誘われたからだよ。俺らでは、こうはいかない。」
「そんなことないと思いますが。」
「そんな事あるんだな~。」
「では、誘った事はあるのですか?」
「「それは…。」」
リック兄様とリオン兄様が顔を見合わせる。
「したことがないなら、分からないではないですか。」
「「…」」
「今日は、せっかく皆で行くのです。楽しみましょう。兄様達行きますよ。」
私は兄様達の手を掴み、外に出ようと歩き出した。
「リーナ。まだ父上が来てないよ。」
「…あ、そうでした。」
「リーナ…。」
後ろから、悲しそうな声が聞こえる。
振り返ると、お父様の姿があった。
「ごめんなさい。お父様。」
「謝られると、さらに…。」
「皆で出かけられるのが嬉しくて、つい…。」
「良いんだよ。分かっている。仕事にかまけて、家族との時間を蔑ろにしていた。私が悪いのだ。リックとリオンも今まですまなかったね。」
その言葉にパトリックもダリオンも目を丸くした。
もしかしてお父様、さっきの話を聞いていたのかな?
「さぁ、行こうか。」
外に出ると、アルは馬車の屋根へ止まり、ルーフは御者席に陣取った。
外の空気を感じたいらしい。
御者は驚いていたが、理由を話すと納得してくれた。
「自分も犬を飼っているので、分かります。何故か風とか好きですよね。」
「ふふっ。そうなの。なぜなのかしら。」
私達は、2台ある前の馬車に乗り込んだ。後ろの馬車はそれぞれの侍女と荷物が乗る。
私は、ピクニックへ行くだけなのに、キャンプ並みの荷物の多さに驚いていた。
「お父様。今日は日帰りでしたよね?」
「そうだよ。」
「あの荷物は?」
「色々いるだろう?パラソルに、テーブル、イス、お茶セット、食器etc…。」
「それ、殆どいらないと思います。」
「いや、いるでしょう。」
「いるよな。」
お父様と兄様達は、荷物の多さに疑問を持っていない。
この世界では、きっとこれが普通なんだ…。
「リーナの記憶ではどんな持ち物なんだ?」
前世ではどうだったかという事よね?
「私が思っているピクニックの道具は、皆が座れるくらいの大きさのシートにお弁当と水筒です。」
「それだけか?」
「はい。」
「野営訓練の様だな。」
「野営訓練ですか?」
「騎士の訓練の1つだよ。騎士は野宿することもあるからね。」
「学校でも、男は勉強の一環として経験するぞ。」
「男は?女生徒はしないのですか?」
「しないよ。」
「何故ですか?」
「汚れるし、大変だろ?」
「でも、野宿する様な事態が起こるかもしれませんよ?経験しておいて損はないと思いますが?」
「女性騎士を目指すとかない限り、そんな事態は起こらないと思うよ。」
「そうでしょうか。」
「そうだよ。」
出発から2時間後、目的地に着いた。
馬車から降りると、目の前に花が広がっている。
「これって、芝桜!?」
「知っているのか?」
「前世で、私が好きだった花です。こちらでも見れるなんて!」
「それは良かった。来たかいがあったな。」
「お父様とお母様の思い出の場所に私の好きな花…。何か勝手に運命を感じます。」
「そうか。」
「父上と母様の思い出の場所なのか?」
「そうですよ。新婚の時にいらしたそうです。」
「ふたりのそういう話初めて聞いた。」
「僕も。」
「ゴホン。…恥ずかしいからその話はやめようか。」
「…母様との話、聞きたいです。」
リオン兄様が小声で話す。
「そ、そうか?それなら…」
お父様は何かを察したのか、恥ずかしがりながらも、思い出話を話し始めた。
「…というわけなんだ。」
お父様は顔を赤くしている。
「聞いてるこっちが恥ずかしい。」
リック兄様は溜息をついているが、リオン兄様は話を聞けて満足そうだ。
「聞けてよかった。父上、また僕達の知らない母様の話を教えてね。」
「もちろんだ。」
「良いな~。私も恋したいな~。」
「「「まだ、早い!!」」」
私がそう言うと、3人に勢いよく否定される。
「あら?恋に年齢は関係ありませんよ?」
「「「まだ、3歳だろ!?」」」
「むぅ…。中身は大人。」
「大人は『むぅ』とか言わない。」
「むぅ!」
大人な筈なんだけど…。やっぱり実年齢に引っ張られる事もあるのは確かだ。
その後は、話をしている間に侍女たちが準備をしてくれていた軽食を取ることになった。
ちなみに、ルーフとアルはついた瞬間に動き出し、外を満喫している。
現在、ルーフは芝の所に身体をグリグリこすりつけ、アルは、私達の頭上を大きく旋回している。
431
あなたにおすすめの小説
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~
いとうヒンジ
ファンタジー
ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。
理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。
パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。
友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。
その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。
カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。
キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。
最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む
凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる