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100 迷惑な伯爵

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大会が始まるのを待っていると、後ろの方から大きな声で話す男と女の声が聞こえた。

「ふん!待たせやがって。私を誰だと思っているんだ!」
「全くですわ!」
「私は伯爵だぞ!馬車を先に停めるくらいなんてこと無いだろうが!来て早々、腹が立つ!一番上に座るぞ!平民共に見下ろされてたまるか!」

貴族が最上段に座る理由…

そんな事だろうと思ったけど、すべてがそういう方ではないと思いたいわね。
…ま、私には関係ないか。

サリーナは、その伯爵とやらを見ることもなく、訓練場にアイザックを探していた。

「おい、そこの女!おい!」

可哀想に、誰か絡まれてるわ。

「おい!聞こえぬのか!1番前の女だ!」

一番前の女ね…。そんなのたくさんいるわよ。

「犬と鳥を連れたやつ!私が声をかけているんだ!返事をしろ!」

犬?鳥?

サリーナは、そこでやっと周りを見た。
すると、周りに動物はルーフとアルだけ。

「まさか…私の事だったの?」

サリーナは、メルとハリーに小声で確認すると、メルとハリーは苦々しい顔をしている。

「その様です。」
「どういたしますか?」

面倒くさい。
…無視でいいわね。

「…放っておいていいかしらね?」
「「承知いたしました。」」

サリーナは、視線を戻し訓練場に出てきている騎士達を見た。

「おい!私は伯爵だぞ!返事をしないとは何様だ!!」

男は、一際大きい声で叫んだ。
サリーナ達に周りからの視線が刺さる。

本当に迷惑…。

「もしかして、私の事でしょうか?」

サリーナが振り向くと、男は目を見開いた後、下卑た笑みを浮かべた。

この男、悪い評判しか聞かないゲッター伯爵。一緒にいる方は、奥様ではないわね…。

「こちらへ来い!」

あら?顔を見せたのに、私の事を分からないの?
服装も化粧も違うとはいえ、舞踏会での挨拶済みよ?
それに、ルーフとアルもいるのに。

「何故でしょうか?」
「こちらの方がよく見える。ほら、隣へ。」
「遠慮いたします。」
「は?伯爵の私が言っているのだぞ!?」
「もう始まりますので、今からの移動は、周りの方の迷惑になります。」
「私が言っているのだから来い!」

嫌だよ!誰が行くか!

「さ…お嬢様。」

メルが呼び方を変えた。

ナイス、メル!
私の事を分からないなら、面倒くさいからそのままの方がいい。

「席を変えますか?」
「そうね。このままでは他の方の迷惑になってしまうわ。皆さん、騒がしくしてごめんなさい。」

周りに謝り、私達はその場を去ろうと席を立った。

「はじめからそうすればいいんだ!早く来い!」

まだ何か叫んでいるが、気にしない。

サリーな達は、反対側の観覧席に行こうと歩き出す。

その時…

「どこに行くんだ!耳が聞こえんのか!!」
…「「「「「きゃあー♡」」」」」…

ゲッター伯爵の怒鳴り声と同時に女性達の悲鳴が聞こえた。







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