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102 特別席

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「ここで見ていてくれ。」

連れて行かれたのは、観客席枠から出た戦いのフィールドのすぐ脇。
ダリオンがそこに椅子を持ってきた。

ここ?近くない!?

「リーナ。バリアは張っておいてくれよ?」
「あ、そうですよね。分かりました。」

そりゃ、こんなに近かったら武器や人が飛んでくるかも?

「身体にそわせてではなく、少し余裕を持って張っておきましょう。」
「そうだな。それがいい。では、行ってくるよ。行こう、リオン。」
「ああ。」
「おふたりとも、健闘を祈っております。」

ふたりは、にっこり笑って軽く手を振ってから他の騎士たちの所へ戻って行った。

その背中を見て、ふと思った。

それにしても、一般の騎士になりたい人が婚約者を特別席に座らせて良いのかしら?

“今は第2王子だからいいのよ。”

その声を聞いて、横を見るとパールが来ていた。

“パール。”
“それに、騎士団長さんと隊長さんにこちらへ来る許可をもらったときに、『特別席を作っていいぞ。』って言われていたから大丈夫よ。”
“許可?そうよね…。開始時間を遅らせてまで対応するなら許可が必要よね。”
“アイザックくんは飛び出していったけど、リオンがすぐに対応してくれてたからね。”
“さすが、リオン兄様。”
“アイザックくんは、リーナの元に行くのに必死だったから。”
“…それも、愛されていると分かって嬉しいわ。”

サリーナの頬がほんのり赤くなる。

“はい、はい。ほら、始まったわよ。”
“う~ん…ザック様とリオン兄様は、いないわね。”

何組かの戦いが始まったが、二人の姿はない。

“きっと、控室に戻ったのだと思うわ。出番は最後の方みたい。”
“そうなの?”
“え~と、何だっけ?…ソード?シット?…あれ?”
“シード?”
“それ!シード枠だって言っていたわ。”
“ふふふっ。そう、楽しみね。…そういえば、今日は、魔法なしの試合なのよね?”
“そうよ。魔力操作が変わって、基本の魔力量が増えてきているとはいえ、騎士内での魔法力は差が激しいから使用禁止らしいわよ。リーナにアイザックくんの強さを見せられないのが、残念。”
“そんなに凄いの?”

私は、昔のキャンプの時からザック様の魔法をきちんと見たことがないが、魔力量が格段に増えたのは分かる。

“今度見せてもらったら?”
“そうね。機会があれば?”

そんな機会、早々なさそうだけど…。

“前に行ったあそこに行けばいいじゃない。飛んでいけば、すぐでしょ?”
“そうね。お父様に聞いてみましょう。もちろん、ザック様から許可を得てからね。”
“アイザックくんが許可を出せば、使えるんじゃない?王子様よ?”
“…そうでした。”



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