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108 黒豹

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「どういうことかしら?」

パールの顔が引きつっている…様に感じる。

「聞こえなかった?マイスウィート。」

黒豹は機嫌の良さそうな声で再びパールに話しかけた。

「聞こえているわよ。何故、私をその恥ずかしい呼び名で呼ぶのか聞いているのよ。」

恥ずかしい呼び名…パール、はっきり言うわね。

「一目惚れっていうの?君を見た瞬間に、『俺の番は、この子だ!』って思っちゃったんだよね~。」
「迷惑も良い所ね。」
「つれないところも俺好み!」
「は!?」

パールの物言いに動じていない!?

「えーと、話し中ごめんなさいね。」

この子はどういう子なのかしら。

「アンタは、マイスウィートと同じ匂いがするな。ん?クンクン…そっちの男もか?」

黒豹は、ザック様の方向の匂いもかぐ。

「そりゃそうよ。私の主達だもの。」
「なるほど、だからか!マイスウィートの主殿、失礼しました。」
「その呼び方やめてくれるかしら?」

パールが、心底嫌そうに言う。

「名前を知らないし、似合ってると思うんだけどな~。」
「…リーナ、気分が悪いわ。帰りましょう。」
「…帰るの?」
「帰るの!」
「ちょっと待て!」

帰るというパールの事をルーフが止めた。

「何よ。」
「俺は戦いに来たんだ。帰るならひとりで帰れ。」
「あなただけ残ればいいじゃない。ほら、相手も出てきたんだし。」

パールは、鼻で黒豹を指した。

「そいつは戦う気がなさそうだから嫌だ。」
「我儘な犬ね。」
「犬って言うな。」

パールとルーフは睨み合う。

最近は良い距離を保っていたのに、関係性は変わらないのね…。

「ふたりとも落ち着いてね。」
「そうだ。話はできそうだし、もう少し話してみたらどうだ?」
「アイザックくん!これのどこが話ができそうなのよ!?リーナをあげないわよ!?」
「それは困る…。」
「あげるって…私は物ではないわよ。」
「リーナぁぁぁ~。帰りましょ~。」

パールがこちらへ泣きついてくる。それを宥めて、私は黒豹に話しかけた。

「黒豹くん。」
「どうした?主殿。」
「私はサリーナよ。貴方の主ではないから、そちらでよんでね。」
「はい、サリーナ。」

あら、素直…。

「先程も説明をしてくれていたけれど、いくつか質問をいい?」
「もちろん。」
「貴方の自己紹介をお願いできる?」
「自己紹介?」
「あなたのことが分からないと、この子が怖がってしまうわ。」

私はパールを撫でた。

「そうか、ごめん。マイスウィート。」
「だから!その呼び方!」
「さっきも言ったけど、名前が分からないからそう呼ぶよ。それとも、名前を教えてくれる?」
「嫌よ。」
「じゃ、マイスウィートだ。」
「…」

パールは諦めたのか、黙ってしまった。


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