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132 黒幕の存在

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空に向かって、手を挙げていたアイランは首を傾げた。

「………あれ?」
「雨…止まないわね。」
「そ、そんな筈はないわ!ちょっと!その手を離しなさいよ!」
「うーん…逃げないかしら?」
「心配なら足でも何でも掴んでなさい!」
「それでは、お言葉に甘えて。」

サリーナは、アイランの腰に抱きついた。

「ちょっと!くっつき過ぎよ!離れて!」
「はぁ…。」

サリーナは溜息をつき、アイランの腰にあった大きなリボンを掴んだ。

「これでいいかしら?」
「いいわ!それじゃ、やるわよ!」

アイランは、両手を空に向けた。

「うぬぬぬぬぬぬ!!!」

アイランは、顔に力を入れて真っ赤にしている。

雨に変化はない。

「…止まないわね。」
「そんな筈…。」
「この雨、貴方が降らしたのよね?」
「そうよ!隣の国の魔法使いと一緒に…」
「隣の国の魔法使い?」

サリーナは先程の偉そうな男に視線を送る。

「そいつじゃないわよ。」

サリーナの視線に気づいたアイランが否定する。

「リーナ。こっちは終わった。」

その時、アイザックがサリーナとアイランの方にやってきた。

「ザック様。実は…」

サリーナは、アイザックにアイランの話を伝えた。

「なるほど。…その魔法使いの名前は?」

アイザックがアイランに問いかける。

「知らないわ。」
「聞かなかったの?」
「必要ないでしょ?」

…そうかなぁ?

「…名前が分かれば、何とかなったかもしれないが…。それで、どうやって雨を降らせたんだ?」
「教えないわよ!」
「…説明ができないのか?」
「ち、違うわよ!できるに決まっているじゃない!」

説明、できなそうね…。

アイランの様子を見て、サリーナとアイザックは顔を見合わせた。

「良いように使われただけだろうな。」
「そのようですね…。しかし、魔法が強くなっていたのは確かです。何か、」

サリーナはアイランに問いかけようと見て、ある物に気づいた。

「それは?」

サリーナが指したのは、右手小指にはめられていた指輪だ。

「これ?かわいいでしょう?その魔法使いに貰ったのよ。」
「…ザック様。」

なぜ、今まで気付かなかったのだろう。

「この指輪に強い魔力を感じます。」

アイザックはサリーナの言葉に頷き、アイランに視線を向ける。

「その指輪外してくれないか?」
「なんでよ!嫌よ!」
「そうか、それなら…」
「痛!」

アイザックはアイランの腕をひねり上げ、指輪を無理やり外し取った。

「ちょっと!なんてことすんのよ!最低ね!」
「犯罪者に一度でもチャンスをやったんだ。十分だろう?……………やはり。俺は、この指輪に込められた魔力の持ち主を知っている。」
「え?」
「隣国の宰相『ミン』だ。」






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