上 下
140 / 142

136 [雨の終わり〜アイザックside〜]

しおりを挟む
アイザックは、騎士団長と共に陛下への報告に来ていた。

「隣国のミンだと?」
「ええ。」
「はあ…面倒なことだな。」
「それでは、まだやることが残っていますので、失礼します。」
「ああ。」

陛下の御前を離れるその時、アイザックは、ふと窓が視界に入り、あることに気づいた。

「雨が止んでいる?」
「なんだと!?」

その場にいた全員が窓の外を見た。

「本当だ!」
「止んでいる!」
「彼奴等を倒したからか?」

その騒ぎの中、パールはアイザックの足を軽く叩いた。

「どうした?」

アイザックは身を屈め、パールの顔に自分の耳を近づける。

“リーナよ。”

「そうか、リーナが…。」

アイザックは駆け足でサリーナの元へ向かった。

隣国の兵へと続く扉を越えると、ハンス隊長もサリーナも姿が見えなかった。

「リーナ?」

周りを見回すと、サリーナとルーフがこちらへやって来るのが見えた。

「リーナ!」
「ザック様。お話は終わったのですね。」
「ああ。それより、リーナ説明してくれるか?」

雨はどうやって、止ますことができたのだ?

「戻ったら説明しますね。」

サリーナはアイザックへ笑顔を向けた。

終わった…のか?

「分かった。…兵たちの拘束を解いてくる。」
「はい。」



アイザックが後処理を終えた後、再び王の御前へやってきた。
そして、サリーナからの説明を聞いた。

「そうか。この杭が。」

王がサリーナが持ってきた杭に手を伸ばすと、騎士団長が止めに入る。

「触れて何事か起こる事もあるかもしれません。お止めになった方がよろしいかと。」
「ふむ。ジャック、どうだろうか?」
「私も、同意見です。詳しく調べ終えるまで厳重に保管し、残りの杭も回収しましょう。」
「そうだな。団長、頼むぞ。」
「は!騎士団をすぐに向かわせます。」

俺が見たところ、魔力も残っていなそうだ。そこまでする必要はなさそうだが?

アイザックがサリーナを見ると、サリーナも何か言いたそうだ。

しかし、用心に越したことはないか。

蓋付きの箱が運ばれてきて、サリーナはその中へ杭を入れる。

「サリーナ嬢、協力感謝する。後の事はこちらでやろう。アイザック、送ってあげなさい。」
「はい。」

エスコートする為、アイザックがサリーナの手を出すと、その手を取ったサリーナは小声でアイザックへ問いかけた。

「ザック様。杭の場所と扉を繋げなくてよろしいのでしょうか?」
「リーナ?」
「まだ体調の変化もございませんし。」

本当に大丈夫なのか?
しかし、今日は魔力を使いっぱなしだ。りーなを休ませてあげたい。

「ザック様?」
「やはり、リーナの体調が心配だから、今日はもう…」
「どうした?何かあるなら言いなさい。」

手を取ったまま、動かないアイザックとサリーナに王は声をかけた。

「はあ…。実はリーナが」

ため息をつきながら話すと、宰相である公爵からも体調に関する心配をされ、サリーナは否定している。

結果、送ったら扉は閉じ、騎士達は自力で帰ってくるということになった。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

勇者のこども

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:1,512pt お気に入り:1

ハカリ島,

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

記憶がないっ!

青春 / 連載中 24h.ポイント:965pt お気に入り:1

邪魔者というなら私は自由にさせてもらいますね

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:248pt お気に入り:3,663

BLはファンタジーだって神が言うから

BL / 完結 24h.ポイント:418pt お気に入り:30

赦(ゆる)されぬ禁じられた恋

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:418pt お気に入り:4

不完全防水

BL / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:1

あなた方は信用できません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:31

進芸の巨人は逆境に勝ちます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:1

処理中です...