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夢の中の約束

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 目を開けたら隣にツッチーがいた。
 ビックリして飛び起きたら、知らない部屋が視界に飛び込んできてまたビックリした。
 ログハウスのような広い部屋に、大きなベッド。使い古されたタンスとドレッサー、すぐ横の壁には出窓がある。
 外を覗くと赤レンガで囲った小さな花壇があった。色とりどりのお花が咲いて、数匹の蝶々がふわふわと飛んでいた。

「ツッチー、ツッチー!」

 慌ててツッチーを揺すって起こすと、大きな手が伸びてきて頭の上に着地した。

「どうした」
「何か知らない家にいるの! 何で!? 仕事部屋にいたはずなのに!」
「またそれか」
「へ?」
「おまえは自由になって俺と夫婦になっただろ」
「いつ!?」
「今でもそうやって意識が混濁する日がある。無理もないか。それだけ悲惨だったからな、あの頃は」
「……混濁?」
「つーか今日は休みなんだ。もう少しのんびりしようや」

 ポンポンとシーツを叩いて横になるよう促してきた。何が何だか分からないけど、ごろんと寝転んだら片腕でぎゅっと抱きしめてくれた。

「アキラ」

 優しい声と温もりがここにある。
 夢にまでみた幸せがここにある。
 そうだ、私は奴隷時代を乗り越えてツッチーと夫婦になったんだ。

「ツッチー」

 ようやく思い出した私はツッチーに抱きついた。
 さも当然に受け止めてくれる。
 こんな私を受け入れてくれる。
 これが私の、今の日常なんだ。

「おまえは何年経っても甘えん坊だな」
「だめ?」
「いいや、おまえの唯一の場所だろ。嬉しいよ」
「むふふ」

 もっとぎゅっと抱きしめた。
 このまま溶け合えたらいいのにって思うくらい幸せ。
 でもぐううっとお腹の虫が盛大に鳴った。

「腹へった」
「ご飯食べてゴロゴロしよう!」
「何だその幸せな休日は」

 少し惜しい気もするけど、二人一緒に起き上がって、腕を組んでリビングへ向かった。

「朝ごはん何食べたい?」
「パンケーキ」
「他は?」
「アキラ」
「あうッ! 照れるっ! 張り切って作っちゃうぞ!」

 気合いが入ったところで、キッチンへ向かうとツッチーもついてきた。
 朝ごはんの準備を始めても、後ろから引っ付いて離れてくれない。
 何て幸せな日なんだ。

「引っ付くとやりにくいよ」
「ゆっくりでいいさ」
「甘えん坊はどっちかな」
「お互いだろ」

 何でもない会話をしながら、お湯を沸かしたり、パンケーキの材料を用意したり。
 そろそろ焼こうとフライパンを棚から取り出したら、ふわっと体が浮いた。

「やっぱり先にアキラを食う」

 そう言ってシンクの上に座らせた。
 食うってことは今からセックスするってこと。
 キス以上のことシテない。
 もう我慢しなくていいんだ。
 やっとキモチイイことをシテもらえる。触れてもらえる。
 そう意識すると、ミルクを思い出した。あの味を思い出すだけで、欲しくて欲しくてたまらないと、熱く疼いてしまう。

「……いいか?」

 こんなのもう、答えなんて決まってる。

「ツッチー」

 目の前にいるツッチーに手を伸ばしたら抱きしてめてくれた。ガッチリと逞しい体に腕を回して、「抱いて」と呟いた。
 でも寝室で……っていう言葉が出る前に、ガシッと後頭部を掴まれた。
 強引に顔を上げられて、勢いよく唇が触れ合う。

「んーっ!?」

 触れ合ったまま離れない。
 息継ぎのタイミングも全然無くて、息を止めてるのが苦しくて。
 やめてくれの思いで、ツッチーの腕をギュッと掴んだ。やめてくれなかった。
 息を止めてることに限界がきて、ツッチーの肩を押し返したけど、逆に肩を掴まれてそのまま押し倒された。
 ツッチーの体格に合わせて広いキッチンにしといて良かったと思った。
 あれ?

「はぁ」

 息継ぎの為に唇が離れてくれたけど、息を整えるので精一杯。そんな状態なのに、すぐに二回目のキスをしてきた。
 また触れ合ったまま離れない。
 苦しさでじんわりと涙が出てくる。
 耐えれなくて胸を押し返しても、その手を掴まれて、シンクに押し付けられた。

「……ッ」

 限界を越えて息継ぎをしたら、隙間からツッチーの舌がヌルリと入ってきた。
 生暖かさと柔らかさにずくんと疼いた。

「んぐぅ」

 ぐぐもった声が出てくる。
 でもそんなことは知ったことじゃないって勢いで舌を絡めてきた。

「……んぅ! ふぁ……」

 ツッチーの舌が私の舌裏を舐め上げる。
 くすぐったいような感覚が走って、握り合ってる手に力が入った。
 そのまま舌全体を絡めて、上顎に触れてきた。
 微かな反応を確かめながら、じっとりと責めてくるツッチーの舌に、身体も頭の中もドロドロに溶けたみたいに熱くて。
 ゆっくりと、優しく、キモチイイを促す舌のせいで、ずっと欲しいって思ってたキモチイイをイヤでも思い出した。

「……んんッ」

 スイッチが入ったのが分かった。
 舌が絡まれば絡まるほどアソコがジンジンする。
 腫れぼったい熱がアソコに集中していく。
 それがもっと欲しくて、ツッチーの舌に自分のを絡めた。
 でもスルリと離れてしまった。

「……感じやすくなったな」
「……あっ」

 カプッと首筋に噛み付かれた。
 歯で肉を挟んだまま舌でペロペロと舐める。
 止まらないゾワゾワに、呼吸が荒くなっていく。

「……これ、……すき、かも」
「……こうか?」
「んッ!」

 イタズラっぽく喉を噛んだ後、おでことおでこをコツンと引っ付けてきた。
 今は何もされてない。
 それなのに、ソコの熱も疼きも、グルグル回り続けて止まらない。
 高熱が出た時のように熱くて、頭が沸騰しそうで。
 苦しくて、上手く呼吸が出来なくて……でも、これ、キモチイイ。

「……からだ、……あつい」
「あつい?」
「……うん」
「……ちゃんと言葉にしろ。いつまで経ってもこのままだ」
「やだ」
「言え」

 ツッチーの手が体をまさぐりながら、下着を脱がしてきた。
 恥ずかしくてもどかしいけど、少し足を開くと太い指がアソコに触れた。
 クリトリスをぐにぐにと揉んで擦って……
 キスでダメなのに、それまでされちゃったら、イッてしまいそうで。
 でも、あと少しが足りない。
 ツッチーの指から生まれるものを追い掛けるけど、あと少しが埋まらなくて。
 イキそうでイケないもどかしさが襲ってくる。

「あと少しが欲しいんだろ? 言え」

 苦しくて、もどかしくて、熱くて、燃えてしまいそうで。
 このまま燃えたいと思ったから素直にオネダリした。

「……いかせて……」
「イイコだ」

 お願いを言葉にしただけなのに、体中が痺れてきた。
 柔らかい舌がねっとりと絡んでくる。
 ツッチーの味が広がる。
 ツッチーの指が中にある。
 それがゾクゾクゾクゥッとキテ、もう少しが満たされた。

「んっ、んぅ!」

 思わずギューッと握り締める。
 ソコがジンジン疼いて、指をぎゅうぎゅうに締め付けて今にも果てそうで。
 ヤバいっていうストッパーがかかったけど、やっともらえるキモチイイを前にしたらストッパーなんて無意味だ。

「……んァ……んぅッッ!」

 キモチイイことを体中に染み渡らせた。
 スゥっと唇が離れていく。
 イッたのに全身の熱が下がってくれない。
 逆にツッチーが視界に写っただけで、たったそれだけで、また身体が痺れてきた。
 キスや指だけじゃ全然足りない。
 もっともっと奥まで欲しい。

「……ツッチー……」

 ギューッと服を握り締める。
 ソコがジンジン疼いて、もっと奥まで欲しいってヒクヒクしてる。

「アキラ」

 ツッチーと目があった。
 それだけで疼く熱をどう処理していいのか分かんない。
 だから早く私を……
 あれ? 前にも……こんなこと……
 こういうことを、して……

「アキラ」

 頬を撫でてきた手に意識を戻した。

「イッたんだろ?」
「……んッ…」
「まだ足りないのか」

 大きい手が輪郭を撫でる。
 ゾクッときた体は大きく跳ねた。

「撫でただけでもイキそうだな」
「まだ……シテ……ほしい……」
「ああ、俺も、我慢の限界」

 熱っぽくなった体を抱き抱えて寝室へと思いきや、ダイニングテーブルへ。
 その上に下ろして、服を脱ぎ捨てていく。
 あまりにも急かされた様子に、ポカンとしてしまったけど、それだけ我慢してたと思うと、キュッとソコが疼いた。

「アキラ、いくぞ」
「うん、早くぅ」

 お互い裸になった。
 開いた足の間にツッチーがきて、ソコにナニを押し当てた。
 入り口を確認するように動いたソコから濡れっぽい音が聞こえる。
 キスと指で果てたんだ。
 濡れて当たり前なんだけど、少し赤くなった顔を腕で隠した。
 その腕を掴まれて、テーブルに縫い付けられた。

「アキラっ」

 グッと入ってくるナニの感覚に、恥ずかしさはどっかへ飛んでってしまった。

「あっ、……あっ!」

 ずっと欲しかった、ずっと我慢してたキモチイイことが……そう思えば思うと、耐えきれない何かが身体を襲う。
 熱っぽい身体からまた汗が吹き出した。
 ガクガクとした震えも止まらない。
 呼吸がうまく出来なくて、荒い息もとまらなくて。
 まだ奥まで入ってない。
 まだソコに当てられただけ。
 それなのに!

「あああっ!」

 ソコがビクビクッとケイレンした。
 それでも奥にくる。
 少しずつ、奥に。
 私の奥に触れてくる!
 イッて敏感になりすぎたアソコに入っていく。
 固くて太い熱が……私にに触れて……
 キモチイイが終わらない。

「あっ、だめ! すっごいの、これ! ツッチー、ツッチー!」

 気持ちよすぎて涙が溢れ出た。
 これ以上はたまんなくて、首を左右に振って、やめてとお願いしたら、ピタリと止まって頬っぺたに手を置かれた。
 
 沸騰していた熱が一気に下がるほどの冷たさに、目を見開いた。
 夢から覚めた気分だ。

「……なん、で」
「時間だ」
「そっか」
「……ツッチー……」
「……起きたのか」

 繋いだままの私の手に、ツッチーがキスをした。
 よく分かんないけど、これ以上は無理なんだと思った。
 何だろう、現実なのに変な感じ。
 それとも、これが夢?
 ああ、終わりたくない。
 
「いっちゃうの?」
「ああ」
「私も違う人の所にいっちゃうの」
「ああ」
「もう会えないね」
「ああ」
「さみしいよ」
「俺もだよ」
「うそつき」
「どうか、どうかその時が来ても嘆かないでくれ。そうなったからこそ得られたものもある。そう信じてる」
「何のこと」
「お前は、お前の道を歩め。精一杯生きて、世界中の誰よりも幸せになるんだ。夢を叶えるんだ。約束だ」

 そんな勝手な約束、守りたくないけど、何度も頷いた。
 それしか出来ない。
 それがこの人の願いなら、頷くしか出来ない。
 一緒にいたいなんて口が裂けても言えない。

「ごめんね、ありがとう」
「何も辛いことなんてないさ。先に行ってる。ただ、それだけのこと。それだけのことなんだ」
「それでも、出会えて、良かった」
「すきだよ、ずっと」
「俺もすきだ、ずっと、ずっとな」

 ぎゅうぎゅうに手を握りしめた。
 でも温もりが離れていく。
 せっかくここまできたのに。
 もっともっと欲しいのに。

「やだよ! やっぱりやだ!」
「……生まれ変わったら、……次は夫になりてぇな。でもお前を徹底的に甘やかしてダメにしそうだ」
「いっしょにいくのっ、ひとりにしないで」
「まっ、どちらにせよ、俺はお前を愛しーーー」

 聴こえない言葉。
 届かない想い。
 消えていく光を必死に掴む。
 でも、すり抜けて、何一つ掴めなかった。
 もっと話したいのに。
 この人に触れてたいのに。
 まだ声を聞きてたいのに。
 離れたくないのに。
 この想いは、空を切るばかり。

 でも、それでも、わたしは……、

「おねがいっ……おいて……いかないで……」
「お前を置いて何処にもいかねーよ」

 やっと掴めた手をぎゅっと握り締めた。


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