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一章
8話 協力者探し
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「協力者…?」
「先程言っただろう。下界人の協力者がいると」
神は地上界を下界とわざわざと蔑んだ呼び方でいい、そこに住む人間を下界人と呼んでいる。
「お前も聖女なら神殿で習っておるだろうが、神は下界に干渉することは禁じておる」
「ええ…神々の戦いの影響でこの地上界の【地盤】はとても脆くなってしまった。だから神々が降臨するだけでも【地盤】に大きな負荷をかけてしまう。だから主神は禁じているのですよね」
「そうだ。ゆえに界層を行き来しても影響を与えない存在として“我”は作られた。神の遣いとして、主神の目としての役割を果たすことが我の存在意義なのだ!」
「…そうですか」
熱く語る神獣にアマリエはなんとなく同情的な視線を送った。
(使いパシリで作られたってことなんだけど、本人は誇りを持ってるみたいだし…)
この世界には大きく分けて、神界、地上界、冥界の3つ“界層”がある。
それぞれの干渉を禁止しているのは、別の界層同士の揉め事を回避する意味合いもあるが、世界の均衡を守るという事が目的である。
今、地上界は穢れという存在がある。
これは地上界の地盤が脆くなっていると表れだ。
穢れの浄化とは脆くなった地盤を修復する作業のこと。
それの作業を怠れば、地盤の崩壊は進む。
それは地上界が無くなることを意味する。
だるま落としのように地上界という界層が弾き飛ばされると、残った2つの界層が隣接するわけだが、神界に亡者が溢れかえるような事態になる。
生者と亡者の垣根が無くなるのはかなり混沌した状態だ。
世界が破綻したといっても過言ではない。
そうすると主神はどう対処するのか…
(恐ろし過ぎて考えたくもない…)
アマリエは嫌な考えを頭から追い払うように、ブンブンと首を振った。
「それでだ。地上界での協力者探しはお前に一任することになった」
「わかりました…で、協力者を探し出せたら、その者はどうなるのですか?」
「さてな。その者への処遇は主神が決めることだからな…我にもわからん」
「そうですか…」
「事情は呑み込めたか?そろそろ我は戻らねばならん」
「ち、ちょっと待ってください!!こんな谷底に置いてけぼりって無いでしょう!?」
身を翻した銀獅子にアマリエは慌ててしがみついだ。
「ああ…では近くの村でも送ってやるか」
その必死さにやや引き気味になりながら銀獅子はそう言った。
「ありがとうございます!!」
「では乗れ」
「はい!!」
伏せをした銀獅子の背中に乗る。
ふかふかの手並みに思わず顔を埋めたくなる。
「では、行くぞ」
銀獅子は立ち上がると、アマリエを乗せて空をかけた。
どっぷりと日が落ちており、夜空に月が出ていた。
近くで見える大きな満月に、アマリエは思わず手を伸ばす。
はたっと自身の掌を見ると、聖紋が薄くなっていた。
銀獅子は地上にアマリエを降ろした。
「1つ忠告だ。神力が途絶えた今、お前の器にある神力で賄うしかない。よく見定めて使うことだ」
「…わかりました」
途端に不安になって、アマリエはギュッと自分の拳を握りしめた。
銀獅子はそんなアマリエの様子に何が言いたげに口をパクパクする。
「あ…なんだ…その…またな」
歯切れ悪くそう言うと、銀獅子は前足に力を込めて、一気に空にかけていった。
(気使わせてしまったかしら)
不安が顔に出でいたのかもしれない。
しかし、去り際の銀獅子の狼狽えた姿を思い出したアマリエは、可笑しくなって思わず笑った。
「なんか元気が出たわ」
アマリエは明かりが灯る方角に歩き出した。
「先程言っただろう。下界人の協力者がいると」
神は地上界を下界とわざわざと蔑んだ呼び方でいい、そこに住む人間を下界人と呼んでいる。
「お前も聖女なら神殿で習っておるだろうが、神は下界に干渉することは禁じておる」
「ええ…神々の戦いの影響でこの地上界の【地盤】はとても脆くなってしまった。だから神々が降臨するだけでも【地盤】に大きな負荷をかけてしまう。だから主神は禁じているのですよね」
「そうだ。ゆえに界層を行き来しても影響を与えない存在として“我”は作られた。神の遣いとして、主神の目としての役割を果たすことが我の存在意義なのだ!」
「…そうですか」
熱く語る神獣にアマリエはなんとなく同情的な視線を送った。
(使いパシリで作られたってことなんだけど、本人は誇りを持ってるみたいだし…)
この世界には大きく分けて、神界、地上界、冥界の3つ“界層”がある。
それぞれの干渉を禁止しているのは、別の界層同士の揉め事を回避する意味合いもあるが、世界の均衡を守るという事が目的である。
今、地上界は穢れという存在がある。
これは地上界の地盤が脆くなっていると表れだ。
穢れの浄化とは脆くなった地盤を修復する作業のこと。
それの作業を怠れば、地盤の崩壊は進む。
それは地上界が無くなることを意味する。
だるま落としのように地上界という界層が弾き飛ばされると、残った2つの界層が隣接するわけだが、神界に亡者が溢れかえるような事態になる。
生者と亡者の垣根が無くなるのはかなり混沌した状態だ。
世界が破綻したといっても過言ではない。
そうすると主神はどう対処するのか…
(恐ろし過ぎて考えたくもない…)
アマリエは嫌な考えを頭から追い払うように、ブンブンと首を振った。
「それでだ。地上界での協力者探しはお前に一任することになった」
「わかりました…で、協力者を探し出せたら、その者はどうなるのですか?」
「さてな。その者への処遇は主神が決めることだからな…我にもわからん」
「そうですか…」
「事情は呑み込めたか?そろそろ我は戻らねばならん」
「ち、ちょっと待ってください!!こんな谷底に置いてけぼりって無いでしょう!?」
身を翻した銀獅子にアマリエは慌ててしがみついだ。
「ああ…では近くの村でも送ってやるか」
その必死さにやや引き気味になりながら銀獅子はそう言った。
「ありがとうございます!!」
「では乗れ」
「はい!!」
伏せをした銀獅子の背中に乗る。
ふかふかの手並みに思わず顔を埋めたくなる。
「では、行くぞ」
銀獅子は立ち上がると、アマリエを乗せて空をかけた。
どっぷりと日が落ちており、夜空に月が出ていた。
近くで見える大きな満月に、アマリエは思わず手を伸ばす。
はたっと自身の掌を見ると、聖紋が薄くなっていた。
銀獅子は地上にアマリエを降ろした。
「1つ忠告だ。神力が途絶えた今、お前の器にある神力で賄うしかない。よく見定めて使うことだ」
「…わかりました」
途端に不安になって、アマリエはギュッと自分の拳を握りしめた。
銀獅子はそんなアマリエの様子に何が言いたげに口をパクパクする。
「あ…なんだ…その…またな」
歯切れ悪くそう言うと、銀獅子は前足に力を込めて、一気に空にかけていった。
(気使わせてしまったかしら)
不安が顔に出でいたのかもしれない。
しかし、去り際の銀獅子の狼狽えた姿を思い出したアマリエは、可笑しくなって思わず笑った。
「なんか元気が出たわ」
アマリエは明かりが灯る方角に歩き出した。
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