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二章
1話 夜の街
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アマリエが辿り着いたのは、タルーデという街だった。
繁華街らしく、夜遅い時間帯に関わらず店はほとんど明かりが灯っていて、祭りさながらに露店が立ち並んでいた。
「揚げたてのポシュトフライはいかがですかぁー!」
「お客さん、カバルの串焼きはどう!」
店同士が負けじと声を張り上げて通行人を足止めをする姿や酔い潰れた通行人が路肩に寝転んでいる姿がちらほら見られた。
アマリエが暮らしている王都では、店の営業時間と酒の規制が厳しいので、考えられない夜の光景である。
最初は驚きはしたが、徐々にワクワクした高揚感で気分が上がった。
はじめて親に内緒で夜の街に遊びに来た子供のような気分だ。
しかし、別の通りに入るとその気分はだだ下がった。
通り過ぎる間際に、まるで品定めするような視線を送って者が多い。
流石にこの時間帯だとアマリエのようなうら若い女性の姿は少なかった。
居るのは派手な露出の高いドレスを纏った客引きの若い女性ぐらいだ。
アマリエは神殿で支給された飾りっ気のないローブ姿なのだが、彼女自身が整った顔立ちをしているので人目を引いてしまっていた。
アマリエは姉のイレーネと争うほどの地元では有名な美少女だった。
癖のないストンとした神秘的な銀髪、瞳は色素の薄い澄んだ青い色で目尻がやや下がっている。
控えめな薄紅色の薄い唇に柔らかな微笑みを浮かべるとまるで聖母を見ているような安らぎを与えた。
(聖職者がこんな時間に出歩いているから、物珍しいのね)
しかし自分の容姿に無頓着なアマリエはそう思い込んでいた。
「よう、聖職者の姉ちゃん!」
馴れ馴れしい態度で一人の男が声をかけてきた。
肌寒さのある初春だというのに黄ばんだ半袖のシャツにオーバーオール姿だ。
盛り上がった丸太のような二の腕、逞しい胸板、まさに筋肉隆々の大男だった。
酔いが回っているのか、その顔がかなり赤い。
「なんでしようか?」
酔っ払いを見上げながら、アマリエは言った。
「あんたはいくらだ?」
「…は?」
突然の不躾な問いに、アマリエの思考は停止した。
「聖職者の格好とかそそられるよな、そういう嗜好の店なんだろう?」
ニヤニヤとした顔をした酔っ払いは、舐め回すような視線でアマリエを頭からつま先まで見下ろす。
「…いいえ。私は本当の聖職者なので、そういうお相手を探しているのであれば、他をあたってください」
きっぱりと断り、横をすり抜けようとしたがアマリエだったが、すかさず男は前に立ちはだかった。
そして、卑猥な笑みをさらに深める。
「そういうつれない態度もいいねー」
「ですから、違いますって…」
ぐいぐいと顔を近づけてくる男から後退る。
興奮気味に少し荒くなった息から鼻を突くような酒臭さがした。
「まぁ、ホントの聖職者でも構わねぇぜ。こういう所に来るってことは、あんたもそういう気があんだろう?」
そう言って酔っ払いは、アマリエの手首を強く掴んだ。
「っ!やめてください!」
アマリエは掴まれた痛みに顔を顰めながら声を上げた。
しかし、酔っ払いは手を離さない。
通行人がちらっと2人を見るが、この街では男女のいざこざは日常茶飯なので見て見ぬ振りをして通り過ぎていく。
「いーから来いって!」
苛つきながら酔っ払いがアマリエの手をグイグイと引っ張った。
何度も違うと言っているのに、力でものを言わすつもりのようだ。
それは自分本位の身勝手なイレーネの姿を彷彿させた。
するとアマリエの中でふつふつと怒りが沸き起こった。
アマリエは手首にしていた魔法具に触れた。
(エレクトリック・ヒット…)
心の中で詠唱を唱える。
それに応えるように魔法具から青白い電気が帯び始めた。
「やめろ」
その時、静かにアマリエを制止する声がした。
繁華街らしく、夜遅い時間帯に関わらず店はほとんど明かりが灯っていて、祭りさながらに露店が立ち並んでいた。
「揚げたてのポシュトフライはいかがですかぁー!」
「お客さん、カバルの串焼きはどう!」
店同士が負けじと声を張り上げて通行人を足止めをする姿や酔い潰れた通行人が路肩に寝転んでいる姿がちらほら見られた。
アマリエが暮らしている王都では、店の営業時間と酒の規制が厳しいので、考えられない夜の光景である。
最初は驚きはしたが、徐々にワクワクした高揚感で気分が上がった。
はじめて親に内緒で夜の街に遊びに来た子供のような気分だ。
しかし、別の通りに入るとその気分はだだ下がった。
通り過ぎる間際に、まるで品定めするような視線を送って者が多い。
流石にこの時間帯だとアマリエのようなうら若い女性の姿は少なかった。
居るのは派手な露出の高いドレスを纏った客引きの若い女性ぐらいだ。
アマリエは神殿で支給された飾りっ気のないローブ姿なのだが、彼女自身が整った顔立ちをしているので人目を引いてしまっていた。
アマリエは姉のイレーネと争うほどの地元では有名な美少女だった。
癖のないストンとした神秘的な銀髪、瞳は色素の薄い澄んだ青い色で目尻がやや下がっている。
控えめな薄紅色の薄い唇に柔らかな微笑みを浮かべるとまるで聖母を見ているような安らぎを与えた。
(聖職者がこんな時間に出歩いているから、物珍しいのね)
しかし自分の容姿に無頓着なアマリエはそう思い込んでいた。
「よう、聖職者の姉ちゃん!」
馴れ馴れしい態度で一人の男が声をかけてきた。
肌寒さのある初春だというのに黄ばんだ半袖のシャツにオーバーオール姿だ。
盛り上がった丸太のような二の腕、逞しい胸板、まさに筋肉隆々の大男だった。
酔いが回っているのか、その顔がかなり赤い。
「なんでしようか?」
酔っ払いを見上げながら、アマリエは言った。
「あんたはいくらだ?」
「…は?」
突然の不躾な問いに、アマリエの思考は停止した。
「聖職者の格好とかそそられるよな、そういう嗜好の店なんだろう?」
ニヤニヤとした顔をした酔っ払いは、舐め回すような視線でアマリエを頭からつま先まで見下ろす。
「…いいえ。私は本当の聖職者なので、そういうお相手を探しているのであれば、他をあたってください」
きっぱりと断り、横をすり抜けようとしたがアマリエだったが、すかさず男は前に立ちはだかった。
そして、卑猥な笑みをさらに深める。
「そういうつれない態度もいいねー」
「ですから、違いますって…」
ぐいぐいと顔を近づけてくる男から後退る。
興奮気味に少し荒くなった息から鼻を突くような酒臭さがした。
「まぁ、ホントの聖職者でも構わねぇぜ。こういう所に来るってことは、あんたもそういう気があんだろう?」
そう言って酔っ払いは、アマリエの手首を強く掴んだ。
「っ!やめてください!」
アマリエは掴まれた痛みに顔を顰めながら声を上げた。
しかし、酔っ払いは手を離さない。
通行人がちらっと2人を見るが、この街では男女のいざこざは日常茶飯なので見て見ぬ振りをして通り過ぎていく。
「いーから来いって!」
苛つきながら酔っ払いがアマリエの手をグイグイと引っ張った。
何度も違うと言っているのに、力でものを言わすつもりのようだ。
それは自分本位の身勝手なイレーネの姿を彷彿させた。
するとアマリエの中でふつふつと怒りが沸き起こった。
アマリエは手首にしていた魔法具に触れた。
(エレクトリック・ヒット…)
心の中で詠唱を唱える。
それに応えるように魔法具から青白い電気が帯び始めた。
「やめろ」
その時、静かにアマリエを制止する声がした。
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