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三章
1話 職探し
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“チャリン”と硬貨の音が虚しく響いた。
テーブルの上に転がった硬貨はたったの3枚。
数えるたびに1枚増えたらいいのにと現実逃避しながら、アマリエは何度も硬貨を数えた。
当然、数え直したところで300ミラルドしかないのは変わらない。
これではポシュトフライしか買えない。
アマリエは頭を抱えこんだ。
(はぁ…これからどうしよう…)
堕神の手がかりが魔国にあるかもしれないという情報を掴み、一歩前進した。
まだ入国禁止の魔国への潜入をどうするかという大きな問題があるが、それは二の次だ。
今は旅費がないという問題をどうにか解決しなければ事は進まない。
(明日には宿屋を出ないといけないのに…)
宿屋には3日分の宿泊代しか払っていない。
延滞するにもこの残金ではもちろん無理である。
(もう売れるものも手元にないし…)
しばらくあーだこーだと頭を巡らせていると、グーッと盛大に腹がなった。
(何か食べないと頭が回らないわよね)
アマリエはのろのろと立ち上がり、とぼとぼと食堂を向かった。
「そりゃ、働くしかないだろうよ。何を悩むことがあるんだい」
女将の飽きれたように言った。
あまりにも正論でアマリエはぐうの音も出ない。
12歳から大神殿の暮らしているアマリエは一般常識に欠けている所があった。
神殿で暮らしは閉鎖的で戒律が厳しい。
神殿独特のルールや常識があり、それは一般とは大きくかけ離れていた。
そのため一般的な仕事といってもどうすればいいのかわからず、途方に暮れていたのである。
「しかし短期間で稼ぐね…ここで働くのはいいけど、あんたの言う額はそうやすやすと稼げないよ」
「姉ちゃんは美人なんだし、夜の嬢でもすればいいんじゃねぇか?」
聞き耳を立てていた常連客が口を挟んだ。
「ちょいと、変なことを教えるんじゃないよ」
「そうだぜ、おっさん。あんなのは身売りされた子がやるような仕事だぞ」
店主も女将も常連客を窘めた。
夜の嬢は酒を提供する店で接客する女性のことだが、広く捉えると娼婦のことを差す。
アマリエはタルーデに来た当初に娼婦と勘違いされて酔っ払いに絡まれたことを思い出して、露骨に顔を顰めた。
「じょ、冗談だって!」
常連客は3人の顔を見て、慌てて言った。
「お客さんは特技とかないんですかい?」
「特技ですか?」
アマリエはきょとんとした顔で店主に聞き返した。
「どうせなら特技を活かせる仕事に就いた方がいい」
「それなら治癒魔法が使えます」
考える間もなく、アマリエは即答した。
「なら冒険者ギルドに行くといいんじゃないかい?ねぇ、お前さん」
女将の言葉に店主はコクコクと頷いた。
「治癒魔法を使える冒険者は少ないからね。パーティーを組んでくれる奴はすぐに見つかるだろう。で、高ランクの依頼をこなせばすぐに金は貯まるさ」
「なるほど!では、さっそく行ってみます」
アマリエは女将から冒険者ギルドの場所を聞いて、宿屋を後にした。
テーブルの上に転がった硬貨はたったの3枚。
数えるたびに1枚増えたらいいのにと現実逃避しながら、アマリエは何度も硬貨を数えた。
当然、数え直したところで300ミラルドしかないのは変わらない。
これではポシュトフライしか買えない。
アマリエは頭を抱えこんだ。
(はぁ…これからどうしよう…)
堕神の手がかりが魔国にあるかもしれないという情報を掴み、一歩前進した。
まだ入国禁止の魔国への潜入をどうするかという大きな問題があるが、それは二の次だ。
今は旅費がないという問題をどうにか解決しなければ事は進まない。
(明日には宿屋を出ないといけないのに…)
宿屋には3日分の宿泊代しか払っていない。
延滞するにもこの残金ではもちろん無理である。
(もう売れるものも手元にないし…)
しばらくあーだこーだと頭を巡らせていると、グーッと盛大に腹がなった。
(何か食べないと頭が回らないわよね)
アマリエはのろのろと立ち上がり、とぼとぼと食堂を向かった。
「そりゃ、働くしかないだろうよ。何を悩むことがあるんだい」
女将の飽きれたように言った。
あまりにも正論でアマリエはぐうの音も出ない。
12歳から大神殿の暮らしているアマリエは一般常識に欠けている所があった。
神殿で暮らしは閉鎖的で戒律が厳しい。
神殿独特のルールや常識があり、それは一般とは大きくかけ離れていた。
そのため一般的な仕事といってもどうすればいいのかわからず、途方に暮れていたのである。
「しかし短期間で稼ぐね…ここで働くのはいいけど、あんたの言う額はそうやすやすと稼げないよ」
「姉ちゃんは美人なんだし、夜の嬢でもすればいいんじゃねぇか?」
聞き耳を立てていた常連客が口を挟んだ。
「ちょいと、変なことを教えるんじゃないよ」
「そうだぜ、おっさん。あんなのは身売りされた子がやるような仕事だぞ」
店主も女将も常連客を窘めた。
夜の嬢は酒を提供する店で接客する女性のことだが、広く捉えると娼婦のことを差す。
アマリエはタルーデに来た当初に娼婦と勘違いされて酔っ払いに絡まれたことを思い出して、露骨に顔を顰めた。
「じょ、冗談だって!」
常連客は3人の顔を見て、慌てて言った。
「お客さんは特技とかないんですかい?」
「特技ですか?」
アマリエはきょとんとした顔で店主に聞き返した。
「どうせなら特技を活かせる仕事に就いた方がいい」
「それなら治癒魔法が使えます」
考える間もなく、アマリエは即答した。
「なら冒険者ギルドに行くといいんじゃないかい?ねぇ、お前さん」
女将の言葉に店主はコクコクと頷いた。
「治癒魔法を使える冒険者は少ないからね。パーティーを組んでくれる奴はすぐに見つかるだろう。で、高ランクの依頼をこなせばすぐに金は貯まるさ」
「なるほど!では、さっそく行ってみます」
アマリエは女将から冒険者ギルドの場所を聞いて、宿屋を後にした。
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