戀の再燃〜笑わぬ循環器内科医は幸薄ワンコを永久に手離さない

暁月蛍火

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第3部 あの恋の続きを始める

8-5 ※

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 体を両手で抱えるようにして隠して、ちょこんと腰掛ける。最賀は適温のシャワーで足元を温めてから徐々に四肢へかけてから、髪を濡らしていく。陽菜の長く栗毛の髪にシャンプーでわしゃわしゃと優しい手付きで洗ってくれる。

「はああ、気持ち良い……」

 飼い主に洗われる犬の気持ちが良く分かる。陽菜は思わず声が漏れた。

「痒いところとか、ないか?」

「こめかみ?」

「仰せのままに?」

 リンスーの工程まで最賀は丁寧に陽菜の髪を労った。

「次、忠さんの番です」

「え? 俺?」

「んー、手付きが優しい」

「痒いところはありますか?」

「無い、強いて言えば触りたくて仕方がない」

 最賀をバスチェアに座らせて、陽菜が今度は髪を洗ってやる。意外に芯のある髪質に、白髪混じりで苦労が現れている。陽菜はシャンプーで満遍なく洗い、濯ぐ。

 体は?と最賀に聞かれて、陽菜は咄嗟に自分で洗うと伝える。まじまじと見られると、どうも恥ずかしくて身を縮めてしまう。

 最賀はきめ細かい泡で陽菜の体を丹念に洗い始めた。肌に泡が乗り、全身を隈無く触られると、変な声が出てしまいそうで。陽菜は前屈みになり、抵抗するが泡の滑りには敵わない。

「あ、ぬめぬめさせちゃ、っ」

「泡作ってやるから、ほら」

「ひぃんっ、指で弾いちゃ、ぁ、あ……っあ」

 腋窩から最賀の手が侵入すると、陽菜の双丘へ円を描いて、指先で軽く弾く。ビクッと体が跳ねて、甘い声が浴室に響いた。

「段々固くなってきたなあ」 

 捏ねる様にして、執拗に弄るせいで先端は芯を持ち始めた。最賀が耳元で情欲を含む声で呟くから、すっかり体は最賀に従順である。

 陽菜は体を捻って、最賀へ口付けを求めた。唇を食んで、それから口の中を舌が蹂躙する。生き物が陽菜の内部を犯して、淫らにさせるのだ。

「口の中、あっついなぁ……」

「うぅ、舌、で掻き回しちゃ、変になりますからぁ……ッ」

「そうか? 蕩けた顔、色っぽくて思わずいじめたくなるから」

「い、じわるッ!」

「はは、噛み付いても良いんだぞ?」

 陽菜が何を言っても、この男には通用しないらしい。陽菜の駄目や嫌を口にする反面、潤沢な秘所は肯定の証だと最賀は知っているからだ。

 最賀は陽菜の体の中心にある割れ目へ手を伸ばすと、入念に指先で確認し始めた。ぬるぬると泡でない淫液が内腿に伝い、悦びを感じている。はあ、と泣き出しそうな声で陽菜は最賀の愛撫を全身で受ける。

 そうして、ぬぷりと指が陽菜の隘路へ潜り込んで行った。湯船の梁へ片足を上げさせると、屈んだ最賀に丸見えだ。容赦無く蜜を絡めた武骨な指は出し入れを繰り返し始めた。

「そこ、っ気持ち良くなっちゃうから、だめですっ」

「風呂場だから好きに出してごらん?」

「ダメッ、そんな、指動かしちゃ、出るから……ッ!」

「ああ、風呂場じゃなくても沢山出ちゃっても良いぞ?」

 指の動きが抑揚を付けていくと、下腹部が熱を持つ。陽菜が内腿を痙攣させて爆ぜると同時に、甘ったるい声で鳴いてしまう。

 立っていられなくて、生まれたての仔鹿のように震わせて、最賀の肩に爪を立てる。そうしていないと、膝から崩れ落ちてしまいそうだ。

「あぁ、出ちゃ……ッ、止まらないですからぁ……」

 最賀の腕を濡らすくらい、蜜潮が出て行く。排泄にも似た感覚に、腰を揺らして誘ってしまう。
 強烈な快楽に、陽菜は唾液が飲み込めない。だらしなく口を開いて、嬌声を上げて、膣壁を轟かせて最賀の指を締め付ける。

「潮吹くくらい、気持ち良かった?」

 くつくつと喉を鳴らして笑みを浮かべる男に、陽菜は観念した。最賀は悪かった、と謝罪を口にしたが反省の色は窺えない。

 陽菜は力が入らず、最賀にしがみ付いていると浴槽にお湯が溜まっていたのか、そのまま湯船に誘導された。

「はあ……」

 強制的に与えられた快感のせいで、余韻が引かず辛い。溜まった疲労と重なって、陽菜は最賀へ体重を預けた。凭れるようにして最賀の体に包まれる。

「つい可愛過ぎて、ごめんな? 逆上せそうだからもうしないから」

「えっ」

「ん?」

「あ……ご、めんなさい……」

 もうしないと言う言葉に過剰反応してしまう。陽菜は我に返る。蜜潮を出すのは、体力も削られる上に絶頂と共に我を忘れてしまいそうになるのだ。

 羞恥心すら消え去って、只管に最賀が授ける極上の甘美に酔い痴れる。体の隅々を味わい尽くした最賀だけが知る、陽菜の弱い場所を的確に把握しているのだ。

 陽菜はずくずくと疼く腹奥が、最賀の言動一つ一つに反応してしまうことを未だに恥じている。最賀はその姿を観察しては、口酸っぱく恥じることじゃあないと諭す。
 恥じらう姿も可愛いが、と悪戯を覚えた子供のように笑うから、余計陽菜も意固地になる。

 体を開くことは、陽菜にとっては心を晒すことと同じ行為だ。

 最賀だからこそ、今では誰かと握手や抱き締められる行為に免疫はついたものの。一時期は他人に触れられることを過剰に反応したものだ。母から受けた虐待の傷は簡単には癒えず、人の目が気になって仕方が無く背を丸めて過ごしていたくらいである。

「うーん……可愛い誘い方、他の人に触らせてな……いや、何でもない」

「た、忠さんっ」

 陽菜は声がひっくり返ってしまった。何をするにも空回りするなんて、と手で顔を覆う。湯がゆらゆらと迷いと自信の無さを映す。

 田嶋とは、握手すら難しかった。手に汗がじわじわと滲んで背中は冷や汗でびっしょりだった。それくらい、拒絶反応が凄まじく陽菜は指先が触れた瞬間に直ぐ引っ込めた。気持ちが悪いと全身が田嶋と言う男を拒んだのである。

「わた、し……忠さん、だけです」

「ん?」

「他の人と付き合ったり……デートとか、してません」

「俺に気を遣わなくても」

「本当です、私……早く自立したくて、それに、母が入退院繰り返したり、弟達の引っ越しとか……その」

 自分で話しているうちに、惨めになって来る。自虐的にさえなる。最賀以外と手を繋いで、体を重ねる等選択肢も発想すら無かった。



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