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【序章】失意の日
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(一体....何が起きているの....?)
状況が、今一つ掴めない――。
ただ一つ、ハッキリしてる事は私の知らない内に、皇都は業火に包まれていたと言う状況のみ。
私が皇都を離れていた僅か、2時間にだ。
(最悪の日ね....。)
本当に最悪である。
本来なら、これから皇宮でリヴィア皇国、第1皇女たるエミリアに継承の儀の終了と15歳の誕生日を、祝って貰う予定になっていたのだから――。
しかし、私が継承の儀を行っている内に状況は急変していた。
継承の儀とは私達、リュウジュ王家に伝わるフォース・クリエイトの秘術を継承する儀式である....。
継承の儀は、リュウジュ王家で代々、受け継がれている創精石を受け継ぐ為に必要な儀式。
そして創精石とは特殊な固有技術を、造り出す為の原型となる秘石であった。
創精石は、古の技法により精製されたリュウジュ王家最大の秘宝。
創精石を継承し力を得た者は、フォース・マイスターと呼ばれ、リュウジュ王家に忠誠を誓い形成されたフォースを分け与えられた者は、フォース・コネクターと呼ばれていた。
リュウジュ王家では15歳になると同時に継承の権利を得るのだが....。
それを継承すると言う事は、フォース・クリエイトの力を継承すると同時に、王族としての義務と責任を、継承すると言う事でもあった。
故に継承は基本、その時代のリュウジュ王の判断により行われてきたのである。
ある者は、20代で継承の儀を行い、またある者は100歳を過ぎてから継承の儀を行ったと言う。
しかし王家の人間は約500年と言う比較的長めの寿命を持つが故に、100年と言えども、それは決して待つのが困難な年数ではなかったのである....。
それ故に、本来ならば継承は急を要するものではなく、成長の時を待って継承されるべきものだったのだが....。
しかし私には、その時を悠長に待つ事が出来なかったのである。
何故か?
その理由は、私が早急に力を欲していたからである。
私は少しでも早く、力を得たかったのだ。
足手まといにならない為の力が必要だったから。
何より私には....大切な者を、護る力が必要だったのである――。
その起因となったのは、今から10年前の母上の死――。
母上を失なった事が、全ての始まりだった。
私に力が無かったばかりに、母上は命を落としたのである。
海賊の襲撃によって――。
海賊の目的は、身代金目的の皇族の誘拐。
しかし海賊の襲撃があった日、不遇な事にエミリアと私は、皇族専用護衛車に同乗していたのである。
本来、母上達の力を持ってすれば海賊の襲撃の鎮圧など容易い筈だった....。
しかし――。
そこに1つのアクシデントが生じたのである。
そのアクシデントとは、追い詰められた海賊が、私とエミリアを捕らえ人質にした事であった。
それ故、私達の為に、近衛騎士団副隊長であった母上は苦渋の選択をする事になったのである。
その選択とは海賊に捕縛されると言う選択。
母上は海賊の要求に従い武装を解除した。
その結果、母上もまた海賊に捕らえられたのである。
しかし、母上は諦めていなかった。
母上は海賊達の隙を突いて、海賊達を倒す事に成功。
私達を見事に救出したのである。
その後、母上は見事、海賊達を捕縛したのだが....。
その対価は、決して安いものではなかった。
敗北を悟った海賊のリーダーが、私達を巻き込んで自爆しようとしたのである。
そして....非武装状態にあった母上は、爆発から私達を護るべく私達の盾となり....。
命を落とした。
もし、父上が別の護衛の任務に従事していなければ、こんな事にはならなかったのかも知れない。
いや....それ以上に、私にもっと力があったなら、きっと結果は違っていただろう。
私に力があれば――。
私達が捕まらなければ母上は、海賊達など容易く捕縛していた筈なのだから。
だからこそ私は少しでも早く、力を得たいと願った。
そして、私は継承権を得て早々、父上に創精石の継承の儀を執り行ってもらうよう願い出たのである。
当然すんなりと許可を得られた訳ではない。
しかし父上は、私の度重なる願い出に何かを感じたのか、数日前に漸く創精石の継承を許可してくれたのである。
そして、私は創精石継承を儀を執り行い無事に、継承を済ませた。
しかし、女性が継承する場合は少し問題があり、清めの儀も執り行う必要性もあったのである。
清めが必要な明確なる理由は、定かではないが、女性の場合、清めの儀を行わないと創精石が上手く、馴染まないと言うのが大まかな理由らしい。
そして、その結果、儀式終了まで僅かではあるが些か、多めに時間を要する事となったのだ。
その結果、儀式終了に至るまでに、要した時間は約2時間....。
その2時間が、この状況に至るまでの2時間となったのである。
私が、異変に気付いたのは継承を無事に終えた事を、父上に報告しようとした時に、通信が出来なかった事が切っ掛けだった――。
余りにも不自然だったからである。
幾ら連絡しても、父上やエミリアに連絡が取れない事がだ――。
それ故に私は、皇宮に何が起こっていると即座に感じたのである。
私は念の為、皇宮への直接移動機能であるダイレクト・シフトを発動させてみたが、予想通り機能しなかった。
通信不能な状況と、ダイレクト・シフトが可動しない状況。
それら2つが意味するものは、事は急を要する状況にあると言う事。
私は焦りを感じ、考えるより先にフォルト・スーツの高速移動モードを発動させた。
通信不能な状態も、ダイレクト・シフトが使用不可能な状態も本来、絶対に有り得ない事なのだから――。
ダイレクト・シフトは万が一の時に、脱出手段の要となる機能。
その緊急手段としての要たる機能が、使えないと言う事はつまり、それはリヴィア皇国のあらゆる防衛機能が、機能していない事を意味していたのである。
私は、今まで感じた事のない焦りを、感じながらも皇宮へと急いだ。
そして約20分後――。
私は皇都中枢部へと到着した。
しかし、皇都中枢部に到着した直後に私が見たものは、逃げ惑う人々の姿と、損壊した美しい街並み――。
そして、幾人もの人々の遺体。
私は目を覆いたくなった。
僅か数時間前からは、とても考えられない程に、街並みが変わり果てていたからである....。
ある者は、腕や足を欠損し、ある者は、胸に風穴が空けられ....また、ある者は頭部を半分喪失し....脳やら眼球やらが、溢れ落ちている状態――。
(ひ........酷すぎる....!)
私にはとても、そんな惨状を直視出来なかった。
皇都の中心部の主要となる防衛機能は、明らかに喪失している。
そこにあるのは、混沌とした状況だけ――。
だが、立ち止まる訳にはいかなかった。
私は進まなければならなかったのである。
二度と後悔をしない為に――。
私は意を決して中心部へと足を踏み入れた。
しかし、その直後の事である。
不意に緊急警報が私の耳に入り込んできたのだ。
緊急警報とは皇宮に、最悪なる状況が発生している事を知らせる警報。
それはつまり本来、決して発生してはならない緊急事態が、皇宮内で発生してると言う事を意味している。
どうやら状況は私が思っている以上に、深刻な状況らしい。
(通信出来ない事といい、ダイレクト・シフトが使用する事が出来ない事といい普通じゃない....。
何より、この皇都の惨状は一体何...!?)
正直、とても信じられない状況だった。
ダイレクト・シフト機能は、緊急脱出手段として、使用不能にならないように、幾重にもプロトクトが施されている。
そのプロテクトは例え、リアース銀河を統べる六大王家が反旗を翻し総力を結集したとしても、破れる類いのモノではない。
だが、それにも関わらず今現在、通信もダイレクト・シフトも機能していない状態がある。
(本来なら有り得ない話しだけど....何かしらの機能障害が生じているって事....?
それとも....強力な時空干渉フィールドでも発生しているの....?)
正直な所、どちらの可能性もプロテクトを無力化するには至らないだろう。
しかし原因が何であれ、事態が急を告げている事だけは確かだった。
(父上達が、護衛している筈だから、何れにしても事態は終結する筈....。)
だが何事にも、万が一が存在する。
私にとって母上の事が正しく、それだったのだから。
皇宮までは、まだ1000キロ以上の距離がある。
(兎に角、急がないと――!
【スピーディング・ブースト起動】)
焦りを感じつつ私は、移動速度を一気に加速させた。
これにより多少、建物などを破損させてしまうかも知れないが、状況が状況である。
私に加速機能使用する事への躊躇や、迷いはなかった。
音速を越える加速により周囲の空間が、音に切り裂かれる。
時間が、ゆっくり流れ――。
周囲の動きが、緩やかに見える。
だが、それでもダイレクト・シフトによる直接的な移動に比べたら、まだまだ皇宮までの道程は果てしなく遠いと言えた。
音速による移動でも、恐らく到着までに、数分程度の時を有するであろう。
だが、それが今、最善にして最大の体現可能速度である。
これ以上の速度で、移動しようものなら間違いなく、周囲の建物にも、そこに住まう者達にも多大なるダメージと影響を与えてしまうだろう。
もっと具体的に言うなら、これ以上の速度アップは都市破壊と、多数の死傷者を出す事に繋がってしまうのである。
幾ら急を有する状況とは言え、それはリヴィア皇家を護る使命を持つ者の1人として、避けて通りたいと言うのが本音だった。
(無事でいて....エミリア、父上――。)
私は祈る思いで、皇都を駆け抜ける。
音速で突き進む中、ダイレクト・ビジョン機能により周囲の光景が、意識内に映し出された。
周囲は何処まで行っても瓦礫と死者で満ちている――。
(酷い........酷すぎる!)
私は、変わり果てた皇都の姿を目にし怒りと、悲しみで胸が張り裂けそうになった。
私は許せなかったのである。
無垢な子供達や、無力な老人すらも、迷うことなく殺せる、その残忍なる行いを――。
(許せない....。)
私は、犯人を捕らえ、必ず償わせてると心に固く誓った。
しかし、奇妙な事が1つある。
何故か周囲に、この惨事をもたらした犯人らしき人物が、見受けられない。
(おかしい........。
普通なら見張りの1人ぐらいは居る筈なのに....?)
普通に考えて、有り得なかった。
目的が皇宮の強襲であれ、その他の何かであれ普通なら、その後の帰還がプランに入っている筈なのである。
だから、必ず脱出経路は確保している筈なのだ。
何せ、リヴィア皇国の皇都を強襲しているのだから。
故に有り得る訳がないのだ。
人であれ、マシンであれ、見張りが居ないなどと言う事は――。
(必ず居る筈....。
何処かに――)
私のフォルト・スーツは、光学迷彩機能や、熱センサー、振動センサー、データ偽装、擬似空間偽装等....。
様々な奇襲への備えが成されていた。
故に、もし何かしらの形で隠れていたとしても発見出来ない訳がないのである。
だが、そういった反応は見られない。
(まさか....帰還が視野に無いと言う事――??)
私は、想定した幾つかの可能性を、フォルト・スーツに転送する。
そして、その私の思考を読み取ったフォルト・スーツが幾つかの可能性を、私に示した。
その可能性の1つは、自爆による特攻である。
それと可能性が、もう1つ――。
普通に考えて、不可能に等しい可能性ではあるが、皇宮を占拠する前提で、今回の強襲を行った可能性だ。
(一体、何の為にそんな事を――?)
答えなど出ない。
何故なら所詮、それらは飽くまで可能性の1つに過ぎなかったからである。
何にせよ全ては実行犯に直接、問い質さなければ、分かりようもあるまい。
だが、それも時間の問題だろう。
私は皇宮の光景を見据えつつ、到着に備えた。
そして私が着地に備えて、速度を減少させた、その直後――。
見えない何かが、私の全身絡み付く。
「な、何――!!???」
だが、驚くべきは、その後だった。
フォルト・スーツの機能が、徐々に徐々にと凍結されて行く――。
(フォルト・スーツの機能が停止して行く....。
そ....そんな....まさか、これはイレイザーネット!??)
イレイザー・ネットとは、リヴィア皇国軍親衛騎士団に最近、配備された最新、捕縛兵装の1つである。
この武装は、リヴィア皇国の武装を含めたあらゆる武装の機能を停止させる為の武装――。
つまりは、相手を無力化し無駄な血を流さない様にと設計された捕縛兵装であった。
この兵装は、この銀河空域で使用されている現代科学の基本エネルギーたる光紫エネルギー・エグゼァの供給を、絶つ機能を有している訳だが....。
この武装が親衛騎士団にのみに配備されている理由は2つ――。
1つは万が一、リヴィア皇国の武装が流出した際の緊急対処の為――。
もう1つは、最も信頼の置けるのが親衛騎士団だからである。
(でも、何でこの兵装が使用されているの――!?)
私は動揺していた。
この兵装が使用されている理由は何か――?
考えられる可能性は、僅かに2つである。
第1の可能性は、親衛騎士団側で、それを使用する程の状況に直面し、使用したが、この兵装を回収する事が出来ず、このまま放置されていた可能性。
第2の可能性は、有り得ないと信じたいが、親衛騎士団内にリヴィア皇家を裏切り、反旗を翻した者が居る可能性――。
(このままでは不味い....武装が....フォルト・スーツが解除される....!)
私は、焦りを感じながらも取り敢えず、皇宮入り口前への着地を試み、何とか着地する。
だが、その直後だった。
物陰から3人の武装した男達が、姿を現したのは――。
その男達は、その武装や雰囲気からして、親衛騎士団の者ではない。
何より明らかに胡散臭く、善良な国民には程遠い感じがする。
そして、その直後、私は理解した。
彼らやイレイザー・ネットの反応を捕捉出来なかった訳が。
イレイザー・ネットが、この3人によって設置されたモノだとするならば、他の兵装を使用してる可能性は必然的に高まる。
恐らくは、探索機能を無力化するイレイズ・フィールド・システムを使用し、反応を消去していたのだろう。
それと少し気になる事が1つ。
私には、その3人の男達が持ち合わせる荒んだ空気を、以前にも感じた事があると言う事だ....。
その空気は、私の嫌いな香りを有する淀んだ空気。
私達を人質に取り、母上を死へと追いやる原因を作った....あの卑怯な海賊達と同じ雰囲気の空気である。
私は、警戒しようと3人の方を見据えたまま距離を取った。
しかし、現状が不測の事態だらけと言う事に、私は不意に気付く。
清めの儀を行った後、そのまま継承の儀を済ませた訳であるが....。
その後、父上達に通信をした事により異常事態が発覚した。
それにより....私は、着替える間も無いまま、フォルト・スーツを装着し皇都へと、直行する事になったのである。
つまり、フォルト・スーツが消失すれば私は、目前の3人と裸のまま対峙する事になってしまうのだ。
(不味い――!
取り敢えず、必要最低部分だけでも何とかしないと――!?)
私は即座にフォース・コネクターへと、アクセスする。
私は使い慣れているフォース・コネクターにアクセスした。
そうしたの理由は、創精石は継承したばかりで、上手く使いこなす自信がなかったからである。
私は瞬時に、サイバー・タイプの下着と、靴を精製すると、フォルト・スーツ消失前に、その身に纏った。
(危なかった....。
もう少し、気付くのが遅かったら間に合わなかった――。)
これから、どの様な対応をする事になるにせよ、全裸では色々と支障をきたす事は間違いない。
私は、深呼吸をして気を落ち着かせると、目前の得体の知れぬ3人に対して問いを発した。
「これは貴方達の仕業なのですか?」
だが、私の問いに対して、3人から返ってきたものは、答えではなく嘲笑う様な笑いだったのである――。
(一体、何を笑っているの?)
その笑いの意味する所が、私には分からなかった。
ただ....私にも、それとなく理解出来る事はある――。
それは――。
「ほぼ真っ裸だぜ、おぃ....。
今時の貴族様ってのは、きわどい格好が御好きなのかね?
なぁ....お前は、どう思うよ?」
「さぁな?
だが今、データで確認してみたんだが、その貴族様は親衛騎士団員であると同時に、御姫さんでもあるみたいだぜ??」
「なるほどねぇ....。
この国は特殊なんだっけな?
政治の皇族と、軍事の王族によって管理されてって話だったな....??
て、事は差し詰め、このお嬢ちゃんは、姫騎士様って所か....。
しかしまぁ、王族ってヤツは欲求不満なんだろよ♪
じゃなきゃ、好んで際どい格好なんぞする必要なんて無いからな?」
3人より放たれる、侮蔑に満ちた言葉。
(やはり、過去に閲覧したデータ通り、彼らのような者達は心身ともに荒んでいると言う事ですか――。)
私が、過去に閲覧したデータ....それは、この手の者達の大多数が、過剰にかかるストレスによって、荒んだ精神を形成していると言う事である。
そんな荒んだ精神を形成している彼らの様な人種は、誰かを見下すと言う行為により、自身の境遇から目を反らし、重度のストレスから身を守っているとの事らしい。
そして、そのストレスから身を守る方向性は、大きく分けて三種類。
食欲、性欲、睡眠欲のどれかを満たす事。
つまり、生物の原始的欲求を満足させる事である。
それ故だ。
彼らは過剰に肌を露出している私を、嘲笑ったのは――。
性的な欲求は、支配欲にも直結するが故に――。
「まぁ、それはそれとしてだ....ベッピンな姫さんよ、さっさと解除された物騒なモンをよこせや?」
不意に、顔中髭だらけの男が、私に言った。
その男とは最初に、私に対して口を開いた男である。
「そんな要求を、私が聞くと思っているのですか?」
フォルト・スーツを使えなくした事で自分達が、圧倒的優位に立っているとでも思っているのだろうか――?
私には、まだフォース・コネクターがある。
だとするなら、彼らを油断させて鎮圧するのが、最も効率的と言えるだろう。
しかし....私が、そう考えた直直後、私を特定する情報について語った細身の男が、薄気味悪い笑みを浮かべながら私に言った。
「当然、聞いてくれると思ってるから言ってんだよ、お・ひ・め・さ・ま――?」
男が、そう言うと同時――。
不意に何もない空間が歪み、全裸のまま拘束された一人の少女が現れる。
私は、その少女の事を知っていた。
彼女の名は、レミナ・ミア・ロークス。
周辺惑星を統べる貴族。
ロークス伯爵家の第三公女....今年で10歳になる少女である。
彼女は代々、私達の王家に仕え現在、親衛騎士団員見習いとして、修練に励んでいた。
....その彼女が、ここに居る。
そして、その彼女は何か普通ではなかった....。
レミナの目の焦点が、何処か合っていない。
レミナからは、自身の体を支えるだけの活力が、感じられなかったのである。
それは私の知るレミナの姿ではなかった。
レミナは、要領は決して良くは無いが、真っ直ぐで活発な少女である。
ならば何故、彼女はこんな状態になっているのだろうか――?
「・・・・・貴方達はレミナに一体、何をしたのですか!?」
「なーに、余りに聞き分けがないんでな....少し薬で黙らせてやったんだよ?
だが安心していいぜ。
服従剤を少し、飲ませただけだからよ....?」
不意に、そう言葉を発したのは、スキンヘッドの男だった。
(服従剤....何故そのようなものが!?)
それはかつて、反乱者鎮圧後にある辺境惑星間で用いられた服従を強制する事が出来る薬剤である。
そして、その薬剤投与により、確かに反乱を起こした者達の内から反乱の意志は消えた...。
しかし、その薬剤を投与され続けた結果、彼らから自我を失なう事となったのである。
そして、彼等は彼等を鎮圧した辺境惑星の貴族により、秘密裏に奴隷して売られる事となったが....。
その事が後に発覚。
結果として辺境惑星を統治する貴族は断罪され、服従剤と言う名の非人道的な薬剤は、精製法ごと永久に葬り去られたのである。
しかし――。
レミナに対して、その非人道的な薬剤が用いられている。
しかし、私には、その薬剤がどうして存在しているのかを考えている余裕は無かった。
「さてと――。
言わなくても分かっているだろうと思うが、俺らの言う事を聞いてくれるよな御姫様....?」
「わ....分かりました....。」
私は髭の男の言葉に従い、フォルト・スーツの起動リングを、彼らに向けて転がす。
しかし、その直後、男は私に対して続け様に言った。
「おぃおぃ、これだけじゃねぇだろよ?
知ってんだぜ、あんたらがフォースなんたらって、特殊な備品を使用して、奇妙な力を使えるって事はよ――?
さっさとよこせや、御姫さんよぉ....?」
(――!
そこまで情報が、漏洩していると言うのですか――?)
最悪の状況に、焦りを感じた私の右手が震える。
フォース・コネクターを、渡したら、この状況を打破する術を失ってしまう....。
それに....フォース・コネクターを渡したら、フォースにより精製したピコサイズのマシンにより構成されたサイバープロテクターの効力も消失する。
それはつまり、無法者達に裸体を晒さねばならないと言う事でもあった。
(そ....それだけは、嫌・・・・・!。)
私は、3人の無法者達を、睨み付ける。
が....その直後、スキンヘッドの男が、イヤらしい笑みを浮かべながら言った。
「そんな顔していいのかな???
言う通りにしないと、コイツがどうなるか分かんないぜ???」
スキンヘッドの男が、レミナの背後に回り込むと不意に、全裸の彼女の右足を持ち上げる。
そして彼は彼女の未開発の秘部を右手の指で無理矢理、押し広げた。
陰毛の無いレミナの綺麗な桃色の陰部が、私の前へと晒される。
「一体....何のつもりですか!?」
レミナは陰部を押し広げられた直後、その小さな陰部がヒクつき、レミナの小さな体が小刻みに震えた。
「あんたが俺達の要求を呑んでくれるなら、このチビッ子は解放するが、要求に従わないなら、このチビッ子を調教して、奴隷として売り捌くしかないって話だよ?」
「そ、そんな事をして、只で済むと思っているのですか!?」
「あぁ、あんたをどうにかするのは難しくても、この娘を連れて、ここからズラかるのは、意外と簡単だと思うぜ?
さて、どっちするね御姫さん....??」
状況が、今一つ掴めない――。
ただ一つ、ハッキリしてる事は私の知らない内に、皇都は業火に包まれていたと言う状況のみ。
私が皇都を離れていた僅か、2時間にだ。
(最悪の日ね....。)
本当に最悪である。
本来なら、これから皇宮でリヴィア皇国、第1皇女たるエミリアに継承の儀の終了と15歳の誕生日を、祝って貰う予定になっていたのだから――。
しかし、私が継承の儀を行っている内に状況は急変していた。
継承の儀とは私達、リュウジュ王家に伝わるフォース・クリエイトの秘術を継承する儀式である....。
継承の儀は、リュウジュ王家で代々、受け継がれている創精石を受け継ぐ為に必要な儀式。
そして創精石とは特殊な固有技術を、造り出す為の原型となる秘石であった。
創精石は、古の技法により精製されたリュウジュ王家最大の秘宝。
創精石を継承し力を得た者は、フォース・マイスターと呼ばれ、リュウジュ王家に忠誠を誓い形成されたフォースを分け与えられた者は、フォース・コネクターと呼ばれていた。
リュウジュ王家では15歳になると同時に継承の権利を得るのだが....。
それを継承すると言う事は、フォース・クリエイトの力を継承すると同時に、王族としての義務と責任を、継承すると言う事でもあった。
故に継承は基本、その時代のリュウジュ王の判断により行われてきたのである。
ある者は、20代で継承の儀を行い、またある者は100歳を過ぎてから継承の儀を行ったと言う。
しかし王家の人間は約500年と言う比較的長めの寿命を持つが故に、100年と言えども、それは決して待つのが困難な年数ではなかったのである....。
それ故に、本来ならば継承は急を要するものではなく、成長の時を待って継承されるべきものだったのだが....。
しかし私には、その時を悠長に待つ事が出来なかったのである。
何故か?
その理由は、私が早急に力を欲していたからである。
私は少しでも早く、力を得たかったのだ。
足手まといにならない為の力が必要だったから。
何より私には....大切な者を、護る力が必要だったのである――。
その起因となったのは、今から10年前の母上の死――。
母上を失なった事が、全ての始まりだった。
私に力が無かったばかりに、母上は命を落としたのである。
海賊の襲撃によって――。
海賊の目的は、身代金目的の皇族の誘拐。
しかし海賊の襲撃があった日、不遇な事にエミリアと私は、皇族専用護衛車に同乗していたのである。
本来、母上達の力を持ってすれば海賊の襲撃の鎮圧など容易い筈だった....。
しかし――。
そこに1つのアクシデントが生じたのである。
そのアクシデントとは、追い詰められた海賊が、私とエミリアを捕らえ人質にした事であった。
それ故、私達の為に、近衛騎士団副隊長であった母上は苦渋の選択をする事になったのである。
その選択とは海賊に捕縛されると言う選択。
母上は海賊の要求に従い武装を解除した。
その結果、母上もまた海賊に捕らえられたのである。
しかし、母上は諦めていなかった。
母上は海賊達の隙を突いて、海賊達を倒す事に成功。
私達を見事に救出したのである。
その後、母上は見事、海賊達を捕縛したのだが....。
その対価は、決して安いものではなかった。
敗北を悟った海賊のリーダーが、私達を巻き込んで自爆しようとしたのである。
そして....非武装状態にあった母上は、爆発から私達を護るべく私達の盾となり....。
命を落とした。
もし、父上が別の護衛の任務に従事していなければ、こんな事にはならなかったのかも知れない。
いや....それ以上に、私にもっと力があったなら、きっと結果は違っていただろう。
私に力があれば――。
私達が捕まらなければ母上は、海賊達など容易く捕縛していた筈なのだから。
だからこそ私は少しでも早く、力を得たいと願った。
そして、私は継承権を得て早々、父上に創精石の継承の儀を執り行ってもらうよう願い出たのである。
当然すんなりと許可を得られた訳ではない。
しかし父上は、私の度重なる願い出に何かを感じたのか、数日前に漸く創精石の継承を許可してくれたのである。
そして、私は創精石継承を儀を執り行い無事に、継承を済ませた。
しかし、女性が継承する場合は少し問題があり、清めの儀も執り行う必要性もあったのである。
清めが必要な明確なる理由は、定かではないが、女性の場合、清めの儀を行わないと創精石が上手く、馴染まないと言うのが大まかな理由らしい。
そして、その結果、儀式終了まで僅かではあるが些か、多めに時間を要する事となったのだ。
その結果、儀式終了に至るまでに、要した時間は約2時間....。
その2時間が、この状況に至るまでの2時間となったのである。
私が、異変に気付いたのは継承を無事に終えた事を、父上に報告しようとした時に、通信が出来なかった事が切っ掛けだった――。
余りにも不自然だったからである。
幾ら連絡しても、父上やエミリアに連絡が取れない事がだ――。
それ故に私は、皇宮に何が起こっていると即座に感じたのである。
私は念の為、皇宮への直接移動機能であるダイレクト・シフトを発動させてみたが、予想通り機能しなかった。
通信不能な状況と、ダイレクト・シフトが可動しない状況。
それら2つが意味するものは、事は急を要する状況にあると言う事。
私は焦りを感じ、考えるより先にフォルト・スーツの高速移動モードを発動させた。
通信不能な状態も、ダイレクト・シフトが使用不可能な状態も本来、絶対に有り得ない事なのだから――。
ダイレクト・シフトは万が一の時に、脱出手段の要となる機能。
その緊急手段としての要たる機能が、使えないと言う事はつまり、それはリヴィア皇国のあらゆる防衛機能が、機能していない事を意味していたのである。
私は、今まで感じた事のない焦りを、感じながらも皇宮へと急いだ。
そして約20分後――。
私は皇都中枢部へと到着した。
しかし、皇都中枢部に到着した直後に私が見たものは、逃げ惑う人々の姿と、損壊した美しい街並み――。
そして、幾人もの人々の遺体。
私は目を覆いたくなった。
僅か数時間前からは、とても考えられない程に、街並みが変わり果てていたからである....。
ある者は、腕や足を欠損し、ある者は、胸に風穴が空けられ....また、ある者は頭部を半分喪失し....脳やら眼球やらが、溢れ落ちている状態――。
(ひ........酷すぎる....!)
私にはとても、そんな惨状を直視出来なかった。
皇都の中心部の主要となる防衛機能は、明らかに喪失している。
そこにあるのは、混沌とした状況だけ――。
だが、立ち止まる訳にはいかなかった。
私は進まなければならなかったのである。
二度と後悔をしない為に――。
私は意を決して中心部へと足を踏み入れた。
しかし、その直後の事である。
不意に緊急警報が私の耳に入り込んできたのだ。
緊急警報とは皇宮に、最悪なる状況が発生している事を知らせる警報。
それはつまり本来、決して発生してはならない緊急事態が、皇宮内で発生してると言う事を意味している。
どうやら状況は私が思っている以上に、深刻な状況らしい。
(通信出来ない事といい、ダイレクト・シフトが使用する事が出来ない事といい普通じゃない....。
何より、この皇都の惨状は一体何...!?)
正直、とても信じられない状況だった。
ダイレクト・シフト機能は、緊急脱出手段として、使用不能にならないように、幾重にもプロトクトが施されている。
そのプロテクトは例え、リアース銀河を統べる六大王家が反旗を翻し総力を結集したとしても、破れる類いのモノではない。
だが、それにも関わらず今現在、通信もダイレクト・シフトも機能していない状態がある。
(本来なら有り得ない話しだけど....何かしらの機能障害が生じているって事....?
それとも....強力な時空干渉フィールドでも発生しているの....?)
正直な所、どちらの可能性もプロテクトを無力化するには至らないだろう。
しかし原因が何であれ、事態が急を告げている事だけは確かだった。
(父上達が、護衛している筈だから、何れにしても事態は終結する筈....。)
だが何事にも、万が一が存在する。
私にとって母上の事が正しく、それだったのだから。
皇宮までは、まだ1000キロ以上の距離がある。
(兎に角、急がないと――!
【スピーディング・ブースト起動】)
焦りを感じつつ私は、移動速度を一気に加速させた。
これにより多少、建物などを破損させてしまうかも知れないが、状況が状況である。
私に加速機能使用する事への躊躇や、迷いはなかった。
音速を越える加速により周囲の空間が、音に切り裂かれる。
時間が、ゆっくり流れ――。
周囲の動きが、緩やかに見える。
だが、それでもダイレクト・シフトによる直接的な移動に比べたら、まだまだ皇宮までの道程は果てしなく遠いと言えた。
音速による移動でも、恐らく到着までに、数分程度の時を有するであろう。
だが、それが今、最善にして最大の体現可能速度である。
これ以上の速度で、移動しようものなら間違いなく、周囲の建物にも、そこに住まう者達にも多大なるダメージと影響を与えてしまうだろう。
もっと具体的に言うなら、これ以上の速度アップは都市破壊と、多数の死傷者を出す事に繋がってしまうのである。
幾ら急を有する状況とは言え、それはリヴィア皇家を護る使命を持つ者の1人として、避けて通りたいと言うのが本音だった。
(無事でいて....エミリア、父上――。)
私は祈る思いで、皇都を駆け抜ける。
音速で突き進む中、ダイレクト・ビジョン機能により周囲の光景が、意識内に映し出された。
周囲は何処まで行っても瓦礫と死者で満ちている――。
(酷い........酷すぎる!)
私は、変わり果てた皇都の姿を目にし怒りと、悲しみで胸が張り裂けそうになった。
私は許せなかったのである。
無垢な子供達や、無力な老人すらも、迷うことなく殺せる、その残忍なる行いを――。
(許せない....。)
私は、犯人を捕らえ、必ず償わせてると心に固く誓った。
しかし、奇妙な事が1つある。
何故か周囲に、この惨事をもたらした犯人らしき人物が、見受けられない。
(おかしい........。
普通なら見張りの1人ぐらいは居る筈なのに....?)
普通に考えて、有り得なかった。
目的が皇宮の強襲であれ、その他の何かであれ普通なら、その後の帰還がプランに入っている筈なのである。
だから、必ず脱出経路は確保している筈なのだ。
何せ、リヴィア皇国の皇都を強襲しているのだから。
故に有り得る訳がないのだ。
人であれ、マシンであれ、見張りが居ないなどと言う事は――。
(必ず居る筈....。
何処かに――)
私のフォルト・スーツは、光学迷彩機能や、熱センサー、振動センサー、データ偽装、擬似空間偽装等....。
様々な奇襲への備えが成されていた。
故に、もし何かしらの形で隠れていたとしても発見出来ない訳がないのである。
だが、そういった反応は見られない。
(まさか....帰還が視野に無いと言う事――??)
私は、想定した幾つかの可能性を、フォルト・スーツに転送する。
そして、その私の思考を読み取ったフォルト・スーツが幾つかの可能性を、私に示した。
その可能性の1つは、自爆による特攻である。
それと可能性が、もう1つ――。
普通に考えて、不可能に等しい可能性ではあるが、皇宮を占拠する前提で、今回の強襲を行った可能性だ。
(一体、何の為にそんな事を――?)
答えなど出ない。
何故なら所詮、それらは飽くまで可能性の1つに過ぎなかったからである。
何にせよ全ては実行犯に直接、問い質さなければ、分かりようもあるまい。
だが、それも時間の問題だろう。
私は皇宮の光景を見据えつつ、到着に備えた。
そして私が着地に備えて、速度を減少させた、その直後――。
見えない何かが、私の全身絡み付く。
「な、何――!!???」
だが、驚くべきは、その後だった。
フォルト・スーツの機能が、徐々に徐々にと凍結されて行く――。
(フォルト・スーツの機能が停止して行く....。
そ....そんな....まさか、これはイレイザーネット!??)
イレイザー・ネットとは、リヴィア皇国軍親衛騎士団に最近、配備された最新、捕縛兵装の1つである。
この武装は、リヴィア皇国の武装を含めたあらゆる武装の機能を停止させる為の武装――。
つまりは、相手を無力化し無駄な血を流さない様にと設計された捕縛兵装であった。
この兵装は、この銀河空域で使用されている現代科学の基本エネルギーたる光紫エネルギー・エグゼァの供給を、絶つ機能を有している訳だが....。
この武装が親衛騎士団にのみに配備されている理由は2つ――。
1つは万が一、リヴィア皇国の武装が流出した際の緊急対処の為――。
もう1つは、最も信頼の置けるのが親衛騎士団だからである。
(でも、何でこの兵装が使用されているの――!?)
私は動揺していた。
この兵装が使用されている理由は何か――?
考えられる可能性は、僅かに2つである。
第1の可能性は、親衛騎士団側で、それを使用する程の状況に直面し、使用したが、この兵装を回収する事が出来ず、このまま放置されていた可能性。
第2の可能性は、有り得ないと信じたいが、親衛騎士団内にリヴィア皇家を裏切り、反旗を翻した者が居る可能性――。
(このままでは不味い....武装が....フォルト・スーツが解除される....!)
私は、焦りを感じながらも取り敢えず、皇宮入り口前への着地を試み、何とか着地する。
だが、その直後だった。
物陰から3人の武装した男達が、姿を現したのは――。
その男達は、その武装や雰囲気からして、親衛騎士団の者ではない。
何より明らかに胡散臭く、善良な国民には程遠い感じがする。
そして、その直後、私は理解した。
彼らやイレイザー・ネットの反応を捕捉出来なかった訳が。
イレイザー・ネットが、この3人によって設置されたモノだとするならば、他の兵装を使用してる可能性は必然的に高まる。
恐らくは、探索機能を無力化するイレイズ・フィールド・システムを使用し、反応を消去していたのだろう。
それと少し気になる事が1つ。
私には、その3人の男達が持ち合わせる荒んだ空気を、以前にも感じた事があると言う事だ....。
その空気は、私の嫌いな香りを有する淀んだ空気。
私達を人質に取り、母上を死へと追いやる原因を作った....あの卑怯な海賊達と同じ雰囲気の空気である。
私は、警戒しようと3人の方を見据えたまま距離を取った。
しかし、現状が不測の事態だらけと言う事に、私は不意に気付く。
清めの儀を行った後、そのまま継承の儀を済ませた訳であるが....。
その後、父上達に通信をした事により異常事態が発覚した。
それにより....私は、着替える間も無いまま、フォルト・スーツを装着し皇都へと、直行する事になったのである。
つまり、フォルト・スーツが消失すれば私は、目前の3人と裸のまま対峙する事になってしまうのだ。
(不味い――!
取り敢えず、必要最低部分だけでも何とかしないと――!?)
私は即座にフォース・コネクターへと、アクセスする。
私は使い慣れているフォース・コネクターにアクセスした。
そうしたの理由は、創精石は継承したばかりで、上手く使いこなす自信がなかったからである。
私は瞬時に、サイバー・タイプの下着と、靴を精製すると、フォルト・スーツ消失前に、その身に纏った。
(危なかった....。
もう少し、気付くのが遅かったら間に合わなかった――。)
これから、どの様な対応をする事になるにせよ、全裸では色々と支障をきたす事は間違いない。
私は、深呼吸をして気を落ち着かせると、目前の得体の知れぬ3人に対して問いを発した。
「これは貴方達の仕業なのですか?」
だが、私の問いに対して、3人から返ってきたものは、答えではなく嘲笑う様な笑いだったのである――。
(一体、何を笑っているの?)
その笑いの意味する所が、私には分からなかった。
ただ....私にも、それとなく理解出来る事はある――。
それは――。
「ほぼ真っ裸だぜ、おぃ....。
今時の貴族様ってのは、きわどい格好が御好きなのかね?
なぁ....お前は、どう思うよ?」
「さぁな?
だが今、データで確認してみたんだが、その貴族様は親衛騎士団員であると同時に、御姫さんでもあるみたいだぜ??」
「なるほどねぇ....。
この国は特殊なんだっけな?
政治の皇族と、軍事の王族によって管理されてって話だったな....??
て、事は差し詰め、このお嬢ちゃんは、姫騎士様って所か....。
しかしまぁ、王族ってヤツは欲求不満なんだろよ♪
じゃなきゃ、好んで際どい格好なんぞする必要なんて無いからな?」
3人より放たれる、侮蔑に満ちた言葉。
(やはり、過去に閲覧したデータ通り、彼らのような者達は心身ともに荒んでいると言う事ですか――。)
私が、過去に閲覧したデータ....それは、この手の者達の大多数が、過剰にかかるストレスによって、荒んだ精神を形成していると言う事である。
そんな荒んだ精神を形成している彼らの様な人種は、誰かを見下すと言う行為により、自身の境遇から目を反らし、重度のストレスから身を守っているとの事らしい。
そして、そのストレスから身を守る方向性は、大きく分けて三種類。
食欲、性欲、睡眠欲のどれかを満たす事。
つまり、生物の原始的欲求を満足させる事である。
それ故だ。
彼らは過剰に肌を露出している私を、嘲笑ったのは――。
性的な欲求は、支配欲にも直結するが故に――。
「まぁ、それはそれとしてだ....ベッピンな姫さんよ、さっさと解除された物騒なモンをよこせや?」
不意に、顔中髭だらけの男が、私に言った。
その男とは最初に、私に対して口を開いた男である。
「そんな要求を、私が聞くと思っているのですか?」
フォルト・スーツを使えなくした事で自分達が、圧倒的優位に立っているとでも思っているのだろうか――?
私には、まだフォース・コネクターがある。
だとするなら、彼らを油断させて鎮圧するのが、最も効率的と言えるだろう。
しかし....私が、そう考えた直直後、私を特定する情報について語った細身の男が、薄気味悪い笑みを浮かべながら私に言った。
「当然、聞いてくれると思ってるから言ってんだよ、お・ひ・め・さ・ま――?」
男が、そう言うと同時――。
不意に何もない空間が歪み、全裸のまま拘束された一人の少女が現れる。
私は、その少女の事を知っていた。
彼女の名は、レミナ・ミア・ロークス。
周辺惑星を統べる貴族。
ロークス伯爵家の第三公女....今年で10歳になる少女である。
彼女は代々、私達の王家に仕え現在、親衛騎士団員見習いとして、修練に励んでいた。
....その彼女が、ここに居る。
そして、その彼女は何か普通ではなかった....。
レミナの目の焦点が、何処か合っていない。
レミナからは、自身の体を支えるだけの活力が、感じられなかったのである。
それは私の知るレミナの姿ではなかった。
レミナは、要領は決して良くは無いが、真っ直ぐで活発な少女である。
ならば何故、彼女はこんな状態になっているのだろうか――?
「・・・・・貴方達はレミナに一体、何をしたのですか!?」
「なーに、余りに聞き分けがないんでな....少し薬で黙らせてやったんだよ?
だが安心していいぜ。
服従剤を少し、飲ませただけだからよ....?」
不意に、そう言葉を発したのは、スキンヘッドの男だった。
(服従剤....何故そのようなものが!?)
それはかつて、反乱者鎮圧後にある辺境惑星間で用いられた服従を強制する事が出来る薬剤である。
そして、その薬剤投与により、確かに反乱を起こした者達の内から反乱の意志は消えた...。
しかし、その薬剤を投与され続けた結果、彼らから自我を失なう事となったのである。
そして、彼等は彼等を鎮圧した辺境惑星の貴族により、秘密裏に奴隷して売られる事となったが....。
その事が後に発覚。
結果として辺境惑星を統治する貴族は断罪され、服従剤と言う名の非人道的な薬剤は、精製法ごと永久に葬り去られたのである。
しかし――。
レミナに対して、その非人道的な薬剤が用いられている。
しかし、私には、その薬剤がどうして存在しているのかを考えている余裕は無かった。
「さてと――。
言わなくても分かっているだろうと思うが、俺らの言う事を聞いてくれるよな御姫様....?」
「わ....分かりました....。」
私は髭の男の言葉に従い、フォルト・スーツの起動リングを、彼らに向けて転がす。
しかし、その直後、男は私に対して続け様に言った。
「おぃおぃ、これだけじゃねぇだろよ?
知ってんだぜ、あんたらがフォースなんたらって、特殊な備品を使用して、奇妙な力を使えるって事はよ――?
さっさとよこせや、御姫さんよぉ....?」
(――!
そこまで情報が、漏洩していると言うのですか――?)
最悪の状況に、焦りを感じた私の右手が震える。
フォース・コネクターを、渡したら、この状況を打破する術を失ってしまう....。
それに....フォース・コネクターを渡したら、フォースにより精製したピコサイズのマシンにより構成されたサイバープロテクターの効力も消失する。
それはつまり、無法者達に裸体を晒さねばならないと言う事でもあった。
(そ....それだけは、嫌・・・・・!。)
私は、3人の無法者達を、睨み付ける。
が....その直後、スキンヘッドの男が、イヤらしい笑みを浮かべながら言った。
「そんな顔していいのかな???
言う通りにしないと、コイツがどうなるか分かんないぜ???」
スキンヘッドの男が、レミナの背後に回り込むと不意に、全裸の彼女の右足を持ち上げる。
そして彼は彼女の未開発の秘部を右手の指で無理矢理、押し広げた。
陰毛の無いレミナの綺麗な桃色の陰部が、私の前へと晒される。
「一体....何のつもりですか!?」
レミナは陰部を押し広げられた直後、その小さな陰部がヒクつき、レミナの小さな体が小刻みに震えた。
「あんたが俺達の要求を呑んでくれるなら、このチビッ子は解放するが、要求に従わないなら、このチビッ子を調教して、奴隷として売り捌くしかないって話だよ?」
「そ、そんな事をして、只で済むと思っているのですか!?」
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