フォース・シフト

キャラ&シイ

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【序章】失意の日【2】

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恐らく男の、その言葉は事実なのだろう。


男からは、絶対的な自信が窺える。


私は男の言葉を覆せるだけの自信も....確信も有してはいなかった。


そして逆に、彼の言葉を裏付ける1つの可能性が、私の脳裏を過る。


その可能性とは、親衛騎士団にのみ支給された緊急脱出兵装――時空間漂流浮遊球【フォルト・スフィア】の存在――。


確かに、フォルト・スフィアならば異空間磁場を発生させ、この場からの瞬間脱出が可能であろう。


何より、防衛システムを無力化する術を彼等が保有している以上、此方のシステムを無力化しつつ、自分達は兵装を使用するなんて芸当も、不可能ではあるまい。


故に、この時点で最早、彼の言葉を疑う余地はなかった。


そう....それ故に、私は既に選べる立場にはない――。


「わ........分かり....ました。

貴方達の要求に....従います。」


皇都の一大事が迫っているが故に大義の為、レミナを犠牲にすると言う、選択肢は確かに存在する。


親衛騎士団員であるが故に、本来なら優先すべきは、皇族の安全なのだから。


レミナも親衛騎士を目指す者である以上....その事は重々、理解はしているし、その覚悟も当然しているであろう。


しかし....。


大切な者を見捨てて事を成す事に、何の意味があるのだろうか?


大切な者を救えずに成す、大儀など私は、認めたくなかった。


それは王族として故――ではない。


人であるが故にだ。


大切な仲間であるが故に――。


大切な者の1人であるが故に、私は彼女を、見捨てたくはなかった。


彼女は、兄弟の居ない私にとって、妹の様な存在。


だからこそ私は彼女を守りたい。


かつて....母上が、そうしてくれたように――。


故に私は選択した。


王族の者として、何より親衛騎士団の者として、優先してはならない選択を。


「分かりました........。

貴方達に従います。

だから、その娘を....レミナを解放してください!」


「あぁ....別にいいぜ。

俺達だって、鬼って訳じゃねぇからなぁ?」


「あぁ....全く、その通り。

俺も同意見だ――。」


髭顔の男の言葉に、何か含みのある笑みを浮かべながら、細身の男も同意する。


それに続き、スキンヘッドの男もイヤらしい笑みを、浮かべながら無言のまま頷きつつ....不意に口を開く。


「ただし、こういった事は信用ありきだ。

当然、それを証明してくれるんだろうな、御姫様よ???」


私は、スキンヘッドの男の言葉に無言で頷くと、ネックレス・タイプのフォース・コネクターを取り外した。


その直後、やんわりとした発光現象と共に、私の必要最低限の部分――胸と女性器と、足先を覆うフォース・プロテクターが、緩やかな速度で消失する。


私は即座にネックレス・タイプのフォース・コネクターを、彼等に向けて放り投げると、胸と女性器を両手で覆い隠しながら、彼等へと言い放った。


「約束は守りました....。

早く、レミナを解放してください!」


だが、細身の男が首を横に振りながら不意に言う。


「何を言ってるかな、御姫様?

まだ、それじゃぁ、まだ武装を解除した証明にはならないぜ、なぁ、そうだよな??お前ら?」


「あぁ....全く、その通りだよ相棒?

ほら、まだ隠し場所があるだろうが、女の体ってヤツにはよぉ?」


細身の男の言葉に続けて、スキンヘッドの男が、不気味に笑う。


「な....何を言ってるのですか!?

私は全ての武装を、解除して貴方達に渡しました。

他には何も....。」


「いや、だからさ??、先ずは手をどけなきゃよ???

その手に何も持っていないって、俺達に証明してくれよ???」


髭の男が、私の問いに笑いを堪えながら答える。


「そ....そんな....私は、もう何も持っていません....。」


「だから、それを証明してくれなきゃさ??。

それとも何か?

このガキんちょの事は、どうでもいいのかな????」


男のその言葉を聞いた直後、不意に私の脳裏に、過去の記憶が甦った。


母上が私を守ってくれた時の記憶――。


この状況は、正しくあの時の状況と瓜二つだった。


母上もまた、私達を守る為に衣服と武装を、脱ぎ捨てる事になったのだから。


そして、海賊の理不尽かつ非道なる要求に、従わざる得なかった母上は、その言葉に従った。


自らの手で女性器を押し広げて、武器を隠し持っていないと証明しろと言う屈辱的な指示に――。


母上は迷う事なく従った――。


私達の命を守ると言う、その思いを果たす為に....。


母上は王族としての誇りより、私達を守りたいとの思いを選んだのだ。


しかし、私には――。


意志も信念は母上のそれには、及ばない。


今をもって尚だ。


だとしても、私は――。


「わ....かりました。」


私は、覚悟を決め、毅然とした態度で、彼らの方へ向き直ると、私は彼等の前で胸と女性器を、晒け出した。


直後、私を明らかに侮辱に満ちた下卑たる言葉が、彼等の口から放たれる。


「おぃおぃ下、ツルンツルンだぜ?」


「あれだろ、まだ15らしいから発育不全ってヤツだろ?

胸も形はいいが、まだ発育途上って感じだしな?」


髭の男に答える様に、細身の男が言った。


その2人に続き、スキンヘッドの男が、私の体を舐め回す様に見据えながら言う。


「いやいや、俺の見立ては違うぜ?

コイツ、剃ってんだよ?

恐らく、王族ってヤツは、本質的に性欲を持て余しているド淫乱ばかりなのさ。

だから本心では見られたくて、見られたくて、しょうがないんだろうよ。 

おや、この姫さんの乳首が、立ってないか?

もしかして、見られて感じてんのかい御姫様よう?」


「ち、違います!

断じて、そのような事はありません!」


私は、慌て弁解した。


しかし、その直後、スキンヘッドの男は先程とは、比べ物にならない程の陰湿な笑みを浮かべながら私に告げる。


「そうかい?

なら、ソイツも証明してくれよ??姫さん?

後ろ向いて、ケツ突き上げてケツの穴と割れ目を開いて見せろや!」


「なっ........!?

何故、そんな事をしなければならないのですか!!?」


「おいおい、さっき言ったろ?

武器を隠し持ってないか確認する為だよ。

後は、次いでに姫さんが、淫乱じゃないって証明する機会でもある訳だぜ?

本当に淫乱じゃないなら、俺達に見られようが、何を言われようが、何も感じない筈だからな???」


無茶苦茶な理屈だった。


いや....それは最早、単なるこじつけに他ならない。


しかし....。


私は、それを拒める立場にはなかった。


「・・・・・それを証明したら本当に、レミナを解放してくれるのですか?」


「あぁ、俺達は嘘はつかないぜ?

なぁ、そうだよな??お前ら――?」


スキンヘッドの男の言葉に、2人は薄気味悪い笑みを、浮かべながら頷く。


正直な所、彼らの言葉を信じ切れた訳ではない。


何より本音を言えば、彼等が何故、この様な行為に固執するのかが私には、理解出来なかった。


所詮、人の形状を有している以上、男性なら男性。


女性なら女性を構成する肉体部位は変わらない筈である。


それが、異形人類の者達であるならば好奇心といった意味で、理解出来なくもないのだが....。


そうでない以上、私には彼等の執着の意味が理解出来なかった。


しかし、理解出来る出来ないは、この際、考える意味はないだろう。


既に、私には選択肢などないのだから。


反撃の手段を彼等に、渡してしまっている時点で、私には彼等に従う以外に道は残されてはいなかったのである。


しかし....。


それでも、そうする事でレミナだけは助けられる筈――。


ならば....取る道は1つしかなかった。


「・・・・・こ、これで、良いのですか....?」


私は彼等の要求に従い彼等の前で、臀部を突き上げながら自らの女性器と肛門を、両手の指先で押し拡げる。


「おぃおぃ、見たか!?

御姫さん、本当に拡げやがったぜ!?」


「あぁ、見られたくて仕方がないって感じだな??」


髭の男に続き、細身の男の声が私の耳に木霊する。


(と....とても堪えられない....。)


女性器を拡げると同時、僅かに痛みが走り、私は顔をしかめた。


そして、その直後に生じた羞恥心が、私の誇りをズタズタに切り裂く。


私は自らの行いを、後悔した。


しかし次の瞬間、私はふと我に返る。


(これでレミナを守れるなら、私は耐えられる。

いかなる屈辱にも耐えてみせる!)


そう....これ程の屈辱と言えど、大切な者を失う事に比べたら、まだマシであろう。


私は、そう思い直し彼等の方を見据えた。


「これで私が、何も隠していない事は確認出来た筈です!

約束です、早くレミナを解放してください!」


そして、彼等へと向き直った直後、毅然と態度で彼らに向けて、私は言い放った。


しかし――。


「なぁ....本当に参ったぜ。

俺、この年齢層に興味は無かったんだけどよ??、この姫さんの恥じらう姿が何かエロくて、立ってきちまったぜ?」


「あぁ、その気持ち....良く分かるぜ。」


髭の男が、スキンヘッドの男の言葉に頷いた。


2人は、私の言葉など届いていないかの様に、話し合いを続けている。


「ソイツは多分、綺麗なモンを汚して蹂躙したいって言う欲求が、刺激されているからだと思うぜ?」


不意に、2人の会話に細身の男が割り込む。


(一体、何を話しているの?)


私は、この不愉快な空気に我慢が出来なくなり彼等の話に横槍を入れた。


「約束です!

早く、レミナを解放して下さい!」


「あ....?

あぁ、分かってるよチビッこの事だろ?

コイツは、俺達が肉奴隷として調教し終えてから、買い手が見付かったら約束通り解放してやるから安心しな。

ただし奴隷としてだがな――。」


「な――!?

そ、それでは約束が違います!?」


髭の男の言葉に、納得がいかず私は彼等に抗議の言葉を放つ。


しかし、彼等はそんな私の姿を見て嘲笑った。


「何言ってんだよ姫さん?

約束は破る為に、あるんだぜ?」


「・・・・・貴方達、人でなしです!」


「あっれ???

だから最初から言ってるじゃんよ。

俺達は、鬼じゃないって?

そう、鬼じゃなくて【人でなし】なんだよ俺達は――。」


その後、細身の男の言葉に続くように、スキンヘッドの男が私に向けて言う。


そして、髭の男がその直後、不意に言葉を発した。


「さてと....。

この御姫さんを、どうするか決めないとな....?」


――――――


「は、離しなさい!」


その後、私は敢えなく髭の男が使用した空間捕縛リングにより、両腕の自由を奪われ拘束された。


レミナが人質になっている以上、私には抵抗と言う選択肢は、無かったのである。


そして、彼等は私をただ嘲笑いながら、私の処遇について話し合う。


「所で、知ってたか....この国の王族の女ってよ、自分が望まない限り、幾ら出しまくっても孕まないらしいぜ?」


「あぁ....何となく、そんな話を聞いた事あるな....?」


スキンヘッドの男の言葉に、髭の男が首を傾げながら、答えた。


その直後、細身の男が不意に口を開く。


「それなら俺も聞いた事がある。

確か王族の女は、処女膜も本人の意志で再生出来るって聞いたな?

あ、そうだ!

ならよ飽きるまで犯して、調教してから奴隷として売っちまおうぜ!

幾ら犯しても、価値が下がんねえんだからよ?」


「あぁ、いいねぇ――。

何より俺達なんぞには、これから一生、王族様とヤる機会なんぞ無いだろうからな?」


細身の男の言葉に頷きながら、スキンヘッドの男が応じる。


私は、そんな男達の欲望剥き出しの言葉に寒気を感じ、身を震わせた。


彼等の情報は、自分達の都合のいい方に偏っている。


確かに、リヴァイ皇家や私達の王家の女性には、そういった属性を備えている者が居るのは、間違いない。


その属性を有する者は、【穢れぬ乙女】と呼ばれているのだが....。


しかし、それは最初から、そういった属性を備えていると言う話ではなく、飽くまで王族の継承の証――。


それを譲り受ける継承の儀を、行った際に、継承の証との適合率の高い者に希に、そういった体質が備わるのである。


故に、王族女性全員が全員、そうなると言う話ではない。


そして、その体質を確認する方法は大きく分けて2つある。


1つは、継承の儀を済ませた後....身体の精密検査を行う方法――。


もう1つは――。


「取り敢えず飽きるまで、ぶち込んじまおうぜ、幾ら出したって孕まねぇんだからよ?」


実際に、その身で確認する方法――。


(私は、何も出来ずに終わってしまうの――?)


「あぁ、良いねぇ!

細かい事は、出しまくって落ち着いてから考えようぜ?

どうせ、“俺達ごときには”幾ら犯されても、汚れねえ高貴な御方なんだからよ?」


そんな髭の男の提案に、細身の男はニヤニヤしながら応じた。


私は、そんな彼等の欲望に満ちたやり取りを、ぼんやりとした意識で聞きながら空を見上げる。


結局....私は何も出来ずに、彼等に犯され・・・・。


そして、何も出来ずに奴隷として売り飛ばてしまうのだろう。


レミナ1人すら助けられずに....。


「おい、誰か姫さんの右足を持ち上げて、押さえててくれよ。

さっさと、ぶち込てぇからよぉ。

後、その長い白金【プラチナ】色の髪の毛も邪魔だから掴まえておいてくれよ?」


「ちっ....!

今回は、お前からかよ?」


スキンヘッドの男の言葉に、髭の男は舌打ちした。


「まぁ、仕方がねぇよ。

今回は、グゼルの番ってのは前から決まってた事だからな?」


細身の男は、溜め息混じりに髭の男へと、そう告げる。


「はぁ........分かったよ。

俺が姫さんの右足持ち上げて押さえつけといてやるから、さっさと終わらせろよグゼル?」


「分かってるって、さっさと出して、お前に順番回してやるよ、グランツァ。」


グゼルと呼ばれていたスキンヘッドの男が、髭の男グランツァに、楽しげな口調で言った。


そして、私は髭の男グランツァに背後に回り込み私の髪を掴みながら、右足を持ち上げる。


「さ??て、いい思いさせてやるからな、御姫さん?」


結局....私は何も成せずに終わる。


誰1人守れず....。


何も出来ずに私は....。


「おいおい、今更ジタバタするんじゃねえよ御姫さんよ???」


スキンヘッドの男、グゼルが冷たく笑う。


そして、彼はそう言葉を発すると同時、ズボンを脱ぎ始めたのである。


どうにもならない。


もう諦めるしかない――そう思った直後だった。


(嫌――!

私は絶対に諦めたくない!)


不意に今まで感じた事の無い、そんな感情が一気に、心の底から吹き出す。


このまま終わる訳にはいかない――。


そんな強烈な思いと意志。


その思いが、私の内から湧き上がってきた瞬間、不意に時間が静止する。


(・・・・・・!??

一体、何が起こっているの??)


誰一人として、周囲に動きがない。


そして、その静止した空間では私自身もまた、動けない状態にあった。


しかし....。


(体は動かせないけど、周囲の状況を把握出来るみたい。

それに意識もハッキリしている....。

でも、どうしてこんな事に?)


私は、こうなった原因を即座に突き止めるべく、周囲を確認する。


その直後、不意に私の体内に生じる異変に、気付く。


私の体内から発せられる白く温かい光――。


その光を私が意識した瞬間、その光が何によって生じているのかを、私は瞬時に理解した。


体内から光が、生じている以上、その光源はただ1つしかない。


私の体の内に溶け込んだ創精石である。


(創精石が光輝いている――?)


そして、私が創精石を意識した瞬間、周囲の風景が不意に消失した。


目前には巨大な紅の創精石と、白一色の広大な空間....。


それと....全裸のまま佇む私自身――。


(ここは一体――?)


私は、自身の内に存る記憶と知識を手繰り寄せる。


その結果、私は1つの答えに辿り着いた。


ここは恐らく、創成の間であろう――との結論に。


創成の間とは、フォース・クリエイトを成す為に形成する特殊空間。


精神領域と物理領域の中間に、生み出されし空間である。


つまり、ここは過去に生み出さた数々のフォースの記憶を引き出し、自分に適した形のフォースを生み出す為の空間なのだ。


そして、生み出せるフォースは、過去に存在していたものに限らず、自身が望む形のモノも新たに生み出す事が出来る。


ただし、如何に強力なフォースを生み出そうとも、飽くまでも今の自分の制御意志力に、見合ったモノしか使用するは出来なかった。


なれど私には、それに対する迷いも不満もなかった。


どの道、今の私は無力である。


選択肢など、最初から存在していないのだ。


何より状況を打開できる術が、そこにあるならば私は、迷わず、その術を手にする。


故に....私は、創精石に触れながら望んだ。


――【大切な者を守り、救う力が欲しい】――と。


そして、過去に創成された無数のフォースのイメージと詳細が、脳裏に投影される。


私が、機能詳細を確認しつつ、対象たるフォースへと意識を移行させると、私の周囲の空間に、対象となったフォースが構成され、形を成す。


それは当然、物理領域に存在するモノではなく、過去に使用されたフォースの擬似体に過ぎない。


しかし、それらは実感と感覚を伴う現実に近いイメージであった。


私は、その時の停止した空間で、具現化したフォースに触れながら私に適したフォースを探す。


が――今の私に扱えるフォースの数は、僅かしかない。


それでも、今の私に....。


いや、今までの私に、想像以上の力を与えてくれるだろう。


そして、私は選択した。


今までの私が、持ち合わせていなかった新たなる力を――。


――――――


「な....なんだ!??」


異変に気付き、スキンヘッドの男、グゼルが驚きの声を漏らす。


当然であろう。


何故なら私は、既に彼らの前に居なかったからだ。


(レミナ....今、助けてあげるからね....?)


レミナの体に触れた瞬間、私の中にレミナの状態が、流れ込んでくる。


【スキャニング・メディカル】


私が過去に創成されたフォースから、選択し獲得した新たなる力――。


その1つである。


私は、その新たなる力を行使しレミナの状況を読み取ると――。


その未発育な胸元から、体内へとピコ・サイズのメディカル・シードを注入した。


(集中治療ではないので少し時間が掛かりますが、これでレミナの方は大丈夫そうですね?)


私は一息つき、男達の方を見据える。


その直後、私の姿を発見した彼等は、慌てた様子で身構えた。


「くそっ!?

一体、どうなってやがる....?

何で、姫っ娘があんな所に居やがるんだ!?

しかも、バトルスーツまで着込んでやがる!?」


「そんなの俺が知るか!

兎に角、早く動けなくしちまえ!」


グゼルに対して、グランツァは、そう叱咤しつつ私に対して銃を構えた。


それとなくであろうが、彼は今の私が危険な相手であると、本能で認識しているのだろう。


しかし今の私にとって彼等は、脅威とは、成り得なかった。


――【リアクト・ステップ】――


今の私ならば彼等を無力化するのに、2秒と掛からないだろう。


私は彼等を見据えた直後、簡易移動の為に、獲得したフォースを発動させる。


このフォースは周囲、1キロ以内ならば周辺状況を把握しつつ瞬時に、移動可能なフォースであり、連続発動させても身体に負担が少ないフォースであった。


何より発動による隙も無く、使い勝手が良いフォースであると言えるだろう。


私は、リアクト・ステップにより彼等の背後へと瞬時に回り込むと、私のメイキング・ボディによって構成された肉体の右手より、バインド・パルスを照射した。


決着は一瞬――。


彼等の自由は、瞬く間に奪われる。


恐らく彼等は、何をされたのかを、理解出来なかったであろう。


3人のならず者は、何が起こったのか、分からないといった様子で、私の方を忌々しげに睨めつけながら倒れ込む。


「もう終わりです....。

諦めなさい――。」


「そ....そいつはどうかな?」


私の言葉に反応し、細身の男が薄ら笑いを浮かべた。


「どうゆう意味ですか?」


「俺達みたいな雑魚は、ただの見張りに過ぎないって事さ。

本隊は中で大暴れしてる筈だ。

もっとも、もう終わっちまってるかもしれないけどな?

ウハハハハハ――。」


彼は、吐き捨てる様に言う。


「この後に及んで、戯れ言ですか?

事が終わり次第、貴方達には正式な裁きを受けて頂きます。」


「どうぞ、ご自由に――。

戯れ言だと思うなら自分の目で確認して来いよ、お・ひ・め・さ・ま・?」


不意にスキンヘッドの男、グゼルが私と細身の男の会話に、言葉を割り込ませる。


「言われるまでもありません当然、確認します。」


私は、彼等の言葉を戯れ言として受け流すと、彼等を完全に無力化する為にパラライズ・パルスにより全身を麻痺させた。


そして私は、レミナの元へと瞬時に移動する。


(レミナ....。)


私はレミナを見下しながら、彼女の様子を窺った。


「ユ....ユーミア....様?」


その直後、不意にレミナが口を開く。


「大丈夫ですか、レミナ?」


私はレミナを、抱き起こしつつ彼女に尋ねた。


「は....い。」


レミナは、弱々しい声で私に答える。


やはり、今の状態では会話は難しいらしい。


私はレミナ状況を確認し終えると、額に触れながら獲得したフォースの1つを発動させた。


【メモリー・スキャン】


記憶や体験を、擬似空間媒体を経由して、読み取るフォースである。


それにより私は、彼女の記憶を読み取った。


しかし残念ながら、黒いバトルスーツの一団が侵入してる状況と、例の3名に捕まった事以外の情報は残念ながら得られなかったのである。


ただ....3名のならず者が言い残した様に、危機迫る状況である事だけは確からしい。


私は、私が使用していたネックレス型のフォース・コネクターを、拾いレミナの首に装着した。


敢えて、そうした理由は2つ。


フォース・コネクターならば、レミナでもある程度、使いこなせるが故に――。


そして、もう1つの理由は、今のレミナには身を守る術が、必要だからである。


その後、私はレミナの側に置かれていた長方形のコンバット・バックを開けた。


そして、彼等が奪った兵装の1つ。


人指し指大の球体、フォルト・スフィアを取り出し即座に起動させた。


レミナの安全の為にである。


この中ならば、宇宙空間を漂流する事になろうとも、ここよりは安全な筈だからだ。


「レミナ、事が終わったら必ず迎えに行きますから、それまで待っていて下さい....。」


レミナは、静かに頷く。


私は、そんなレミナの様子を確認し終えると、フォルト・スフィアで即座に安全区域へと転送した。
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