フォース・シフト

キャラ&シイ

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【序章】失意の日【3】

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(レミナ....終わるまでの辛抱です。


少しだけ待っていて下さい。)


私はレミナを見送ると、皇宮への移動を開始した。


今は、やるべき事が残っている。


私は即座に、リアクト・ステップを発動し皇宮内へと移動する。


(な....?

こんな事が....!?)



皇室前の通路――。


そこに無数に転がるリヴィア兵と、親衛騎士の類々たる屍の数々....。


多くの者が、体の一部を欠損し息絶えている。


生き残っている者は、1人として居ない。


それはメイキング・ボディのスキャニング機能で確認してるが故に、明確な情報と言えた。


周囲に生命反応は無い。
       

つまり、生存者は居ないと言う事である....。


そして、私に気付き殺意を向けて近付いてくる者達が数名....。


黒いバトルスーツを、纏った侵略者の一団であろう。


人数は、7名。


全員が、全員、親衛騎士級の武装を所持している。


(許せません....。

必ず、彼等に償わせます!)


私は、殺意を向ける者達の方へと向き直った。


その直後、彼等は私に対してレイ・ガンによる一斉射撃が開始される。


光速に等しき速度で、銃口より放たれる数十の閃光――。


それは明らかに窮地と言うべき、状況であった。


少なくともメイキング・ボディを、手にする前の私にとっては――。


私はメイキング・ボディを構成
しているメイン・シードを、サイバー・シード9割へと、変異させる。


メイン・シードを変化させた直後、私は擬似体の全身を、光学兵装を反射可能な反射体へと変化させた。


メイキング・ボディ――。


それは精神を介する事により、操作可能な擬似的肉体を構成するフォースである。


メイキング・ボディとはフェムト・サイズのメイン・シードにより構成された擬似体の事であり――。


それは有機体と無機体の性質を有していた。


メイン・シードとは所謂、生命と機械――。


その2つの性質を備えた小型のマシンの総称である。


そのモデルとなったのは、ナノ・サイズの生体修復用機器....。


ナノマシンと、呼ばれる小型マシンであり――。


その進化系が、フェムト・サイズのシードによって構成されたメイキング・ボデのであった。


そして....彼等の銃撃を受けた私の擬似体は、反射角度を瞬時に調整し、数十発の銃撃を反射させる。


それと同時、私はリアクト・ステップにより彼等の背後へと回り込んだ。


【パラライズ・パルス】――!


直後、彼等の体は硬直し自ら放った銃撃により、戦闘不能に陥る。


(取り敢えず、死人はいないようですね?

死んでもらっては困ります。

アナタ達には、生きて罪を償って頂かねばならないのですから....。)


私は、フォースを発動し状況を確認し終えると、改めて王室内の状況をスキャニングした。


室内に、生体反応は窺えない。


それと同時に室内で誰かが、死している様な状況も特に無い事が判明した。


私は、その事に安堵しつつエミリアや、父上の所在を確認する。


皇宮の広さを考えたら、普通に捜すのは非効率と言えるだろう。


そう考えた私は、皇宮全体をスキャニングする事にした。


そして、皇宮地下30区画に接地された第37異空間シェルターにエミリアと父上、そして....現リヴィア皇アルヴァリア陛下の反応を捉えたのである。


しかし....。


(アルヴァリア陛下の生命反応が無い....!?

まさか、陛下は既に――!??)


考えたくない事だが、状況解析データが、その可能性がほぼ100%である事を示していた。


それは明らかに、あってはならない最悪の事態である。


(兎に角、確認に向かわないと――!)


私は国皇陛下の安否を、気にしつつも、エミリアと父上の無事を祈りながら、現場へと向かった。


だが――。


リアクト・ステップによる一度での移動は1キロが限界範囲。


第37異空間シェルターへの移動には、40キロ以上の距離がある。


それ故に現在、そこに移動する方法は、リアクト・ステップによる連続移動以外に、術はない――。


つまり、それは多数の敵が居る場所を、転々と移動しなければならないと言う事を意味しているのだ。


私は即座に状況を再認識するべく、移動しながらスキャニングし、遭遇するであろう敵の総数を割り出す。


人間の生体反応720――。


マシン反応は、ナノサイズのモノも含め547――


人造生命体反応523――


総数1790――。


それが私が目的地点に至るまでに、確実に遭遇する敵数である。


(連続的に、リアクト・ステップを発動させれば、戦闘は回避出来る....。

でも、その場合は――。)


事が、終わってから安全に脱出する為の経路を、確保出来ないまま脱出する事になってしまう。


そして、その場合は脱出の際にエミリアの身に、危険が及ぶ可能性がある。


それに、最終的に敵勢力を鎮圧する事を考えれば今、可能な限り戦力を削いでおくのが妥当――。


私は、そう判断し敵戦力に対する対応シミュレーションを、瞬時に構築する。


敵の兵士の全員自由を奪い拘束するまでに最速13分12秒。


全敵生物兵器を、駆逐するまでに最速7分35秒。


全機械兵器の機能に完全停止させるまでに最速6分3秒。


鎮圧までの現状最速時間は、約27分――。


(・・・・・駄目....。

時間が掛かり過ぎる。

せめて、メイキング・ボディがもう3体、構成出来れば....。)


そう思考した瞬間――。


突如、私の意識内にメイキング・ボディのサブ神経回路が構築された。


メイキング・ボディのサブ神経回路の総数は4体分。


それに続いて、サブ・メイキング・ボディの思考補助回路の情報が意識内に入り込んでくる。


――【サブ・メイキング・ボディ作製】――


(迷っている暇はない――。)


私は、即座にサブ・メイキング・ボディの作製を開始した。


4体のサブ・メイキング・ボディが完成する迄に約2秒。


正直、同じ髪色や顔立ちでは、紛らわしいので髪色や顔立ち肌の色等に多少、修正を加えた。


それと同時に私は、サブ・メイキング・ボディにM1、M2、M3、M4の名称を、それぞれに与える。


そして、私が成すべき思考命令をサブ・メイキング・ボディ達に送り込むと、M1??M4のサブ・メイキング・ボディ達は即座に行動を開始した。


私を含めたサブ・メイキング・ボディ達による連携で、敵戦力制圧に向かった場合、敵を無力化しつつ目的地点に到着可能な時間は、遅くとも5分以内――。


悩んだり、迷ったりする時間は最早、無駄以外の何物でもない。


――【リアクト・ステップ】――


私とサブ・メイキング・ボディ達は瞬時に、地下1階層への転送を終えると同時に“私達”は散った。


(思ってたより、反応が早い――南方、西方より光学系攻撃反応多数....。)


私達は、到着して早々、それらの鎮圧を開始する。


予想はしていたが、想像していたより敵の行動は迅速だった。


特に、サイバノイド系の反応が早い。


やはり、人としての意識と生体部位を、残しているサイバノイドは自らの経験などから、どの様な状況に対しても、慌てる事なく、瞬時に対応出来るのであろう。


しかし、それは今の“私達にとって”大した問題には成り得なかった。


私達はサイバノイドの放った銃撃を、転送し彼等へと送り返す――。


彼等は、その反射した銃撃を回避しようと試みるが、それは私達の誘導に他ならなかった。


私達は彼等の隙を突き、サイバノイドと敵兵士に意識拘束を施し無力化を図ったのである。


しかし、その直後――。


私達の隙を突こうと、人型生体兵器、軟体生物型生体兵器、侵略型アーマロイド達が私達を強襲してきたのだ。


全方向包囲からの直接打撃による強襲。


私達は、その攻撃をリアクト・ステップにより回避すると、アーマロイドの最後尾へと回り込み、ナノブレイク・ウェイブを照射――。


瞬時にアーマロイド達を、無力化した。


ナノブレイク・ウェイブとは、ナノ単位で細胞や機械部位の行動機能を破壊し無力化する振動波兵器であり――。


この波動を照射された部位は行動機能を失うのである。


そして、その結果、この階層の鎮圧は5秒と掛からずに終わりを告げた。


(思ってたより、早い――。

これなら........。)


私は、ある種の手応えを感じていた。


今までの私には、無かった力を得たと言う手応えを――。


それは、ある種の確信であった。


その確信のまま、私達は地下30階まで、迅速なる行動を続ける。


正しく快進撃と言うべき状況であった。


鎮圧のペースは、思っていた以上に順調であり結局、3分と掛からずに私達は地下30階までの鎮圧を終える事が出来たのである。


やはり、メイキング・ボディの私が、5人も居る状況が圧倒的有利をもたらしたのであろう。


完全なる意思共有が、完全なる連携を可能としたが故に――。


しかし....私は不意に、ある不自然な状況に気付く。


(おかしいですね........?

余りにも順調過ぎます。)


考えてみれば、その順調さこそ、異常であろう。


普通の防衛騎士なら無力化され、対応出来ない状況もあり得るが、少なくとも親衛騎士のフォースは無力化されていない筈だ。


何より親衛騎士や父上が、この程度の相手に、後れを取るなどとは思えない。


ならば一体、何がこの様な状況をもたらしていると言うのだろうか?


今、その答えは出しようもない。


ただ....今、ハッキリと言える事は1つ。


間違いなく、その答えは、この先にあると言う事である。


父上は、今しがた創精石を手にした私と異なり、私以上に強力な多数のフォースを獲得し、自在に操る力を有していた。


私は、そのフォースの1つを昔、見せてもらったのだが、その時に父上が使用したフォースと言うのが、空間操作のフォース。


【フィールド・コントロール】だったのである。


そのフォースは、空間を操るフォースの類いであり、空間を捩曲げたり、圧縮したり、空間ごと転送したり等――。


おおよそ、それに対抗し得る兵器など、私には想像できなかった。


いや....私が知る限り父上のフォースに対抗可能な兵器など現在、存在しない。


星ごと破壊可能な瞬間滅消兵器ですら、父上が使用するフォースの前では、無力に等しいのだから。


しかし、それ程の力を有していて尚、父上が苦戦する様な状況が存在している。


私程度が、ものの数分で鎮圧出来ているのだから、父上達ならば、もう既に鎮圧出来ている状況こそが必然であるが――。


現状を見る限り、その必然は明らかに存在していない。


つまり信じ難い話だが、この先には父上のフォースをもってしても、苦戦する程の何者かが、そこに存在していると言う事であろう。


(私が行ったところで、足手まといになるかもしれない....。

でも....。)


私は、ほんの数秒の思案の後、覚悟を決めた。


何もしないで、ただ無事を祈るなど私には、あり得ない。


何もしないで、最悪の状況が訪れたならば、私は間違いなく再び、後悔と自身の無力さに苦しめられる事になるだろう。


ならば――。


進む以外に道は無い。


私は意を決して、サブメイキング・ボディ達と異空間シェルター内へと、足を踏み入れる。


直後、空間が歪み....天井で星々が輝く、広大な異空間が目前に現れた。


しかし....。


目前に在ったのは、私の想像を超えた絶望的光景――。


(へ、陛下....!

父上――!?)


絶命し、動かぬ屍となっている国皇陛下と....。


そして、満身創痍で膝をつく父上の姿――。


(そう言えばエミリアは、何処に?)


私は、即座にエミリアの姿を追った。


不意に、西方にエミリアの反応を感知した為、私はそちらへと視線を移す。


「エミリア――!」


私はエミリアの姿を追い、視線を上に傾けた。


そんな中、不意に空中を漂う巨大な水晶の様な物体に隔離された金色の髪の少女。


エミリアの姿が、私の視界内に映り込む。


エミリアは、意識を喪失しているらしく、私の呼び掛けに反応を示さなかった。


エミリアの身は確かに心配ではあるが....今は、それ以上に気になる事が1つ――。


エミリアを隔離している縦長の水晶の左方を漂う蒼いフードを纏う者の存在である。


それは一体、何者なのだろうか....?


男性なのか、女性なのかも分からない。


ただ、それでも1つだけ理解出来る事がある。


フードの人物は、何処か空虚だと言う事だ――。


その者の纏う空気は怒りでもなく、恨みや憎しみでもなく、邪悪な欲望でもなく....狂気でもない。


だだ冷たく、カラッポ――。


虚ろに感じらる。


(さ....寒い....?

何なのですか、アレは――!?)


私が、そのフードの人物を認識した瞬間、全身に寒気が走った。


それが恐怖によるものなのか、それ以外の要因によるものなのかは分からない。


だが....。


「ユーミア、お前は早く逃げるのだ!

アレと戦ってはならない。」 


「何を言っているのですか、父上!

私も一緒に戦います!」


「それは駄目だユーミアよ....。

創成者は今の我々が、どうにか出来る相手ではない。」


「――創成者....?

一体、何者なのですか父上?」


私は創成者と言う聞き慣れない言葉を聞き、思わず父上へと問い返す。


そんな問いに、父上は重々しく口調で、私に告げた。


「創成者とは....フォースを最初に開発した者――その一人だ....。

そして、その者は....。」


【「――世界を創成し直す事を、望む者故に創成者と呼ばれている――。

汝は己が娘には、そのような事も伝えていないのか、罪人の血を引く者よ?」】


頭に直接、響き渡る声....。


(テレパシー??

それに罪人って....?)


「父上、罪人とは一体....?」


「........それは、この場を無事に、切り抜ける事が出来たら話す。

兎に角、今は脱出する事が先決だユーミアよ。」


父上は言葉を濁しつつ、私に告げる。


「....分かりました。

でも私だけ逃げるなんて出来ません!」


私は父上に、そう告げるとリアクト・ステップを発動させた。


転移先は創成者の元。


私は創成者の隙を突くべく、瞬間転移後の連続攻撃を仕掛けたのである。


しかし――。


「ユーミア、待つのだ!」 


その直後、父上の声が響く。


私は、そんな父上の声を振り切り、メイキング・ボディによる5体連続攻撃を、創成者に向けて放つ――。


私は父上の言葉に従う訳にはいかなかった。


何故なら今、戦える者は私だけなのだから――。


私が父上の言葉に従ってしまったならば恐らく、父上は私を逃がす為に自らを犠牲とするだろう。


故に私は、引き下がる訳にはいかなかった。


それに私が、時間を稼げれば父上ならば、その隙を突いて何かしらの脱出方法を考えくれる筈――。


(後の事は、お願いします父上。)


私は父上の方を一瞬、見据えたものの即座に、創成者を見据え直した。


本体たる私のメイキング・ボディは、空間すら切り裂く時空刃による斬撃――。


そして、サブ・メイキング・ボディ達も、光学兵装や重力銃等。


多種なる武装の数々で、私達は創成者へと向かった。


武装を数種にしたのは、相手の防御特性の隙を突く為である。


光学シールドは、物理兵装に弱く、物理系のスーツは光学兵装に弱い。


また、重力系の防御壁なら時空刃系列の武装が、有効である。


しかし、これらは相応の殺傷力や破壊力を有するが故に私には、これらの武装を人間相手に使用したくないとの躊躇いがあった....。


だが、相手は父上を追い詰める程の強者。


そんな気遣いをして、戦える相手でないだろう。


「私が相手になります、創成者!」


私は迷いなく、創成者と呼ばれる外套を纏った人物を強襲した。


最初の一撃はM4の光学兵装【レイ・スピア】の音速を超える一撃。


その閃光の槍の一撃が、創成者を刺し貫くべく、放たれる。


だが――。


直撃の瞬間、M4の渾身の一撃が、見えない壁に弾かれる。


(光学シールド――!?)


私はM4から瞬時に、もたらされた情報を元に、連携攻撃を変更するべく、動いた。


圧倒的な余裕故か創成者に、未だ動く気配はない。


(私程度が相手なら、動くまでもないと言う事なのですね?

それなら――!)


私は、創成者の後方にサブ・メイキング・ボディ3体を配置し直すと、主体たるメイン・メイキング・ボディの私は、サブ・メイキング・ボディM1を伴い前方から創成者を強襲した。


連携を、この型に変更した理由は、特性の違う種の攻撃を前後に分け、両面から一気に負荷をかける為である。


両面から強い負荷をかければ、自ずと防御壁を維持する為に強度を、平均的に振り分けねばならなくなり――。


その結果、防御の強度は自ずと低下するのは必然。


ならば、如何に強固な防御壁であろうと決して、破壊不可能ではなくなる。


そして――。


(予想通りですね――?)


その読み通り、私達の連携攻撃を受け続ける中、不意に創成者の光学シールドに細かな亀裂が生じた。


後方からの光学兵装、重力兵装、超波動兵装による多重攻撃と――。


前方は私の時空刃と、物理武装の二重攻撃――。


それらの連携による負荷が積み重なり数秒後、創成者の光学シールドは、見事に砕け散る。


(予想通りですね――?)


私は、ある種の手応えと同時に僅かではあるが、勝てる可能性を意識した。


しかし――。


創成者に“私達の”刃が届かんとする直前、二重三重に重ねられた私達の連撃が、またもや何かに遮られ、途中で停止する。


(な....?

これでも駄目なのですか――!?)


【「なるほど....メイキング・ボディによる連撃か?

力不足を補う術としては正しいが....。

詰めが甘いと言わざる得ないな....罪人の末裔の娘よ――?」】


その直後であった。


再び意識内に、創成者の声が響いたのは――。


「せめて、何かを告げる時は肉声で、仰ったら如何ですか創成者――?」


創成者の言葉を受けると同時――。


私は創成者へと、そう言い放ちつつ瞬時に私達の配置を変更を開始した。


私が選択したのは、リアクト・ステップによる前方一点集中攻撃の陣形――。


その配置を選択した理由は、創成者に小細工は通じないと思ったが故である。


そして、理由はもう1つ。


創成者は私を弱小なる存在だと考え、油断してるからだ。


その証拠に光学シールドを破壊されたにも関わらず、創成者には未だ動きは見られない。


だが、その創成者の油断こそ私にとって、唯一の勝機であった。


ならば、本気を出す前の創成者に全力を叩き込み、その油断ごと創成者の余裕を打ち砕く――。


私の予想が正しければ多種系の五重攻撃ならば、創成者の防御壁と言えども破壊可能な筈だ。


この重ねの一撃は、惑星規模の防御フィールドであろうとも破壊可能な破壊力を有している....。


(これならば、どうですか――!?)


私は、そんな確信と共に三度目の強撃を放つ。


その直後――。


私達の強撃による一撃が、光学シールドに続き、創成者の空圧障壁を打ち砕いた。



そして、後は目前の創成者が、その身に纏いし超硬度を誇るであろうプロテクターだけ....。


しかし、それならば此方の超硬度金属プロミシアで構成された実体剣は防げても、他の一撃は防げない。


だが、しかし私は、まだ勝利を確信するには早いと感じていた。


そして、次の瞬間、私のその予想が正しかった事を、痛感させられたのである。


それは正に創成者の身に、私達の一撃が、届こうとした直前の事だ。


私達の連携攻撃が、強力な重力体に阻まれる――。


(そんな事だろうと、思っていました。

ですが、これなら――!)


サブ・メイキング・ボディの重力銃を空間圧縮刃へと変化させると私は、その重力体へと干渉させた。


それを踏み台にして、他の4種の一撃を加えれば、重力フィールドの隙間を縫って、私達の一撃は創成者の元にすら届く筈――。


しかし、私は次の瞬間、自らの浅はかさを知る事になったのである。


私の予想通り私達の一撃が、重力フィールドを切り裂き、私達の渾身の一撃が創成者へと届かんとする、その直前――。


不意に、私達の渾身の一撃が停止した。


(一体、何が――!?)


私は状況が理解出来ず、私達の渾身の一撃が止められた空虚なる空間を、思わず見据える。


だが事は、そこで終わりではなかった。


次の瞬間、私達の渾身の一撃が止められていた空間から私達の一撃が、突如として押し戻される....。


「愚かなり――。

そして、哀れだと言っておこうか....罪人の血を引く者よ――。」


創成者が突如、私に向けて、そう告げた。


それと同時、創成者は周囲の空間を、蒼色の空間へと変化させる。


(これは、何か不味い――!

早く、離れないと!!?)


私は即座にリアクト・ステップの発動を試みるが、しかし――。


(な....何故!?

何で、移動出来ないの――!??)


何故かは分からないがリアクト・ステップが、何かしらの影響により、起動しなかったのである。


私は、その状況に一瞬、焦りを感じたものの相手はフォースの創成者。


何があってもおかしくはない。


だが....。


このままでは、身動きが取れないし、私がどの様な状態にあろうとも、創成者は待ってくれないだろう。


そして、その最悪なる状況を加速させるかの如く、創成者が私達に向けて黒き波動を放った。


速度は、かなり早い。


空間の揺らぎにより速度計測こそ出来ないが、このままでの回避は、ほぼ不可能だろう。


(一体、どうしたら!?)


状況データから察するに、リアクト・ステップ発動の障害となっているのは、蒼い空間の特性。


恐らく、その蒼い空間の正体は高密度の反時空体だ。


反時空体は、力の方向性を狂わせる。


プラスをマイナスに――。


右に加えた力が、左に等――。


その影響は様々だが、何にしても状況が最悪である事だけは間違いない。


私はサブ・メイキング・ボディ達を操作し、メイキング・ボディの主体たるメイン・メイキング・ボディを全力で、後方へと弾き飛ばした。


そして、私のメイン・メイキング・ボディが反時空体領域より弾き出されると同時、私は即座にリアクト・ステップを発動させる。


私が指定した移動場所は、父上の近く。


本来なら、エミリアの近くに移動し、エミリアを救出したかったが、創成者の隙の無さが私に、そうする事を迷わせたのだ。


(強すぎる....一体、どうすれば....!?)


父上の近くに移動し終えた私は、創成者の方へと視線を移す。


その直後、視線の先で私が構成したサブ・メイキング・ボディ達が、灰塵に帰し崩れ落ちた――。


「一体、何が....?」


「時間加速だ、ユーミア。

創成者は恐らく、あの周辺の時間を急加速したのだろう。」


私の呟きに対して、父上が不意に答えを告げた。


「時間加速....?」


それは余りにも圧倒的な力の差――。
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