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【序章】失意の日【4】
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その詳細を聞く意味などあるまい。
何かを知った所で、創成者との圧倒的な差は、埋めらるものではないのだから....。
故に、父上は私に逃げるように言ったのだろう。
だが、それでもこの時間稼ぎは無駄でなかったと私は信じたかった。
確かに時間すら操る程の相手に、普通の方法で勝てる筈もないのだろう。
しかし、それでも一分なりとも私は創成者の注意を、引き付けれた事は間違いない――。
ならば父上が、その間の時間を手を子招いたまま見ていたと言う事はない筈。
父上ならば必ずや、何かしらの手を打っている事は疑いようもなかった。
そして、父上が成すであろう策こそが、私にとって本当の意味での切り札だったのである。
本音を言えば最初から、私は創成者を倒せるなどと、自惚れていなかった。
ならば何故、敢えて、そういった素振りのまま戦ったのかと言えば、その理由はシンプル。
そうする事により創成者に私が、愚かな娘である事を印象付け、少しでも創成者の目を引き付けれると考えたからだ。
故に、私は自分自身の未熟さを知りつつも敢えて、創成者相手に勝ち気な態度で、戦いを挑んだのである。
そして、私の予想通り、私程度の実力では全く、創成者に歯が立たなかった。
だが、それも当然の事。
父上程の実力者を凌駕する程の相手を、私が倒せる道理がないのだから。
それは飽くまでも予想の範囲内
――。
しかし、1つだけ嬉しい誤算があった。
それは、そんな相手と対峙して幸か不幸か私は、まだ動ける状態にあると言う事である。
創成者の所から移動した直後に一応、メイキング・ボディの状態を確認してみたが、損傷らしい損傷は見られなかった。
つまり、私にはまだ余力があると言う事である。
ならば私が為すべき事は、ただ1つ――。
この状況で脱出する為の何かを、為す事であろう。
それに可能であれば、エミリアを助けださねばならない。
そう....まだ、エミリア救出を諦める訳にはいかないのだ。
だが、例えエミリア救出が叶わなかったとしても、父上さえ無事ならば、まだ打つ手はある筈。
創成者が、エミリアを殺していないのは恐らく、創成者にはエミリアを必要とする何かしらの理由があるからであろう。
つまり、エミリアが直ぐに殺される様な事は無い....。
ならば父上さえ無事ならば、エミリアの再救出は可能な筈である。
だが、その為にも――。
(今は、父上と共に脱出する事を、最優先するしかない――。)
苦汁の選択ではあるが、それは仕方がない事だった。
それが皇族を、守る者の勤めなのだから。
皇家を守る事こそが、勤めであるが故に時には、自分自身の思いを殺さなければならない。
私は、そう覚悟を決めると、体勢を即座に立て直すべく、立ち上がろうとした――。
しかし、次の瞬間、私はメイキング・ボディの足下に、妙な違和感を感じ、私は不意にバランスを崩す。
(――!?
一体、何が・・・・??)
私は瞬時に右膝を着きつつ、何とか体勢を維持する。
(状況解析開始――。)
私は状況を把握するべく再度、メイン・メイキング・ボディのスキャニングを開始した。
だが....。
(えっ........??
スキャニングが機能しない?)
何かしらの影響によるものか、何故かスキャニングが機能しない。
(一体、何が起こっているのです!??)
私は両膝をついて、全身のバランスを維持すると、慌てて状況を確認した。
(感覚は機能に異常無し....。
触覚、神経伝達機能は正常に機能している――。
どうやら使えないのは、センサー系のみみたいですね?)
状況を確認する限り、肉体そのものの機能は、まだ正常に維持出来ているらしい。
恐らく、それらの機能異常を引き起こしているのは、先程の創成者の攻撃であろう――。
それにより、センサー系や状態認識機能は沈黙した。
だが、相手は父上を凌駕する者....。
それぐらいの事を、やってのけても何ら不思議はない。
(少し前までは、何の異常も見られなかったのに....流石は創成者と言う事ですか・・・・。
ならば、私自身の目で状況を確認するのみ――!)
私は即座に方向性を切り替えると、視界による直接確認を試みる。
しかし....。
(・・・・・そ、そんな!?
私は確かに回避した筈....?)
メイキング・ボディの状態を確認し、私は思わず絶句した。
私が考えている以上に事態が、深刻だったからである。
消失する足先。
次の瞬間、それ故にバランスが維持出来なかったのだろう。
しかし、それが事の全てではなかった。
足先の消失部分で、煌めく蒼い光――。
その光が消失部分から上へ上へと、競り上がってきていたのである。
(ま....まさか、この蒼い光はメイキング・ボディを分解している――!?
不味い....このままでは!)
私は慌てて、メイキング・ボディの両足の膝から下を切り離す為、機能伝達を行った。
だが、そんな私を嘲笑うかの様にメイキング・ボディの状態に変化は生じない――。
(そ、そんな――!?)
私は、切迫する状況に焦りつつ、打開策を模索した。
こうしてる間にも蒼い光は徐々に徐々にと、メイキング・ボディを蝕み続けている。
(くっ....!
ならば――!!)
私は決断した。
右手に時空刃を構成し即座に、メイキング・ボディの両足を切り落としたのである。
そして、その直後に私の意識内に飛び込んでくる両足が切り離される違和感――。
両足を切断した際、神経伝達機能をカットしていた為、痛みなどはなかったのだが....。
如何に作り物の体と言えども、やはり自分で自分の体を切断すると言うのは気分の良いものではない。
だが、作り物の体なればこそ、
逆に打つ手が残されているとも言えた。
両足を再構築すれば、次なる状況に備える事も可能なのだから。
私は、そんな判断の元、即座に両足の構築を開始する。
だか――。
その直後の事だった。
上空より不意に雨の如き、水滴大の黒い玉が私と父上に向けて、降り注いだのである。
(なっ――!??)
私は、その黒い玉に異様な危機感を感じ、即座に光学フィールドを発生させた。
「ユーミア!」
それと同時に、父上は私の名前を叫んだ直後、フォースを使用し周囲の重力を反転させる。
だが次の瞬間、私は理解した。
何故、父上が私の名を叫んだのかを....。
父上は、この黒い玉の脅威を知っていたのだ。
そして、父上がフォースを使用するのとほぼ同時――。
私が発生させた光学フィールドに黒い玉が接触する。
その刹那、降り注ぐ無数の黒い玉が、私の光学フィールドを貫いた。
(そ、そんな――!?)
私は、驚愕した。
エネルギー体の大半を防げる筈の光学フィールドが、紙切れの如く、打ち砕かれる....。
そして、その無数の黒玉は無防備となった私のメイキング・ボディを容赦なく、襲った。
(不味い....!
このままでは私は――。)
死の感覚が、迫りくる――。
このままメイキング・ボディが消失すれば、メイキング・ボディを構成するフォースの機能が完全に失われ....。
無防備にして無力な本体が、この場に顕現してしまう。
そうなったら私に為す術は、ただの1つもない。
即ち確実なる死が私を、待っていると言う事だ。
(結局、私はまた何も出来ずに、最後の瞬間を迎えるのですか....?)
私の脳裏に一瞬、そんな諦めにも似た感情が芽生える。
圧倒的な窮地故の絶望。
道を見失うが、故に抱く感情。
だが、私がそんな絶望に押し潰されそうになった直後である。
不意に、周囲の重力が反転し黒い玉は、遥か彼方へと消え去った。
「父上....?」
考えるまでもなく、それは父上の為したる所業であろう。
(そ....そうだ。
まだ、父上が居る。
父上さえ健在ならば....。)
――希望はある――
私は、そう確信しつつ無惨に破壊され尽くされたメイキング・ボディの頭を起こし、その視野で父上の姿を探した。
希望たる父上の姿を――。
だが、現実は私が思っている以上に残酷だった。
膝を着いたまま、辛うじて創成者を見据える父上。
その息は荒く、僅かな余裕すら感じない。
私もそうだが、父上にも殆ど余力は残されていないのだろう。
父上は恐らく、温存していた力を、使ってしまったのだ。
私を守る為に――。
(ち、父上・・・・・・)
私は自身の底の浅さを心底、後悔しつつ朧気な意識の中、手繰り寄せる様に父上の姿が見える、その先へと右手を伸ばす。
が――その右手が、私の瞳に映り込む事は無かった....。
理由は、恐らく先程の黒い玉に破壊されてしまったからであろう。
(あ........。
そ....う言う....事ですか。
腕はさっきの攻撃で失ってしまったのですね――?)
私は揺らめく視界で再び、自分の状態を確認した。
言うまでもなく状況は絶望的。
損壊部位は腕の損壊のみならず、両腕の肘から下と腹部から下が、完全に消失している。
このままでは考えるまでもなく、身動きは不可能だろう。
(は....早く再構成しないと....。)
私は、失われつつある意識を何とか、繋ぎ止めながらメイキング・ボディの再構築を開始する。
しかし、急いで再構築をしているにも関わらず一向に、構築速度が変化は見られなかった。
どうやら創成者との戦いで、想像以上に、精神力を消耗してしまったらしい。
(何で....こんな時に――!)
私は焦りと苛立ちの中、必死にメイキング・ボディの再構築を急ぐ。
しかし、その直後....。
そんな私の思いを打ち砕く様に、創成者が私に向けて言った。
「足掻くな娘よ....。
もう、戦わなくていい。
汝には、知る必要性がある。」
不意なる創成者の言葉に、私は硬直する。
(一体、何を言っているの....創成者は――??)
そして次の瞬間、創成者は、その右手より黒き閃光を放った。
私と....私の周囲の空間に向けて――。
(引き....込まれてる....?)
創成者の生み出しし黒い閃光の内で、私は虚ろな瞳で創成者を見据える――。
私は何も出来ずに、その黒い閃光が生み出した暗闇の内に、呑み込まれて行く....。
「父上....!
エミリア....。」
私は力無い声で、二人の事を呼んだ。
そして....私が黒い空間に呑み込まれる中――。
「娘よ....自分の目で確かめるがよい....罪の何たるかを・・・・・。」
そんな創成者の言葉が、私の耳元へと響き渡った....。
――――――
「・・・・・娘を見逃してくれた事への礼を言うべきか....創成者よ――?」
娘であるユーミアが闇の内側に、消え行くのを見届け終えると――。
アグレスは、静かな口調で創成者へと問い掛けた。
「見逃しただと....?
そうではない罪人の末裔にして、その王たる者よ。
我は、汝の娘に罪を知る為の時間を、与えただけに過ぎない。
そうでなければ、余りに理不尽であろうからな?
それに....これは、我が恩人たる者の願いでもあるからな....。」
創成者は、肯定する事なく静かな口調でアグレスに告げる。
「恩人・・・・・・?
そうか....!
そう言う事か――。
創成者、貴様を解放したのは・・・・。」
アグレスが神妙な面持ちで、そう言葉を発した瞬間――。
創成者は、静かに微笑んだ....
。
何かを知った所で、創成者との圧倒的な差は、埋めらるものではないのだから....。
故に、父上は私に逃げるように言ったのだろう。
だが、それでもこの時間稼ぎは無駄でなかったと私は信じたかった。
確かに時間すら操る程の相手に、普通の方法で勝てる筈もないのだろう。
しかし、それでも一分なりとも私は創成者の注意を、引き付けれた事は間違いない――。
ならば父上が、その間の時間を手を子招いたまま見ていたと言う事はない筈。
父上ならば必ずや、何かしらの手を打っている事は疑いようもなかった。
そして、父上が成すであろう策こそが、私にとって本当の意味での切り札だったのである。
本音を言えば最初から、私は創成者を倒せるなどと、自惚れていなかった。
ならば何故、敢えて、そういった素振りのまま戦ったのかと言えば、その理由はシンプル。
そうする事により創成者に私が、愚かな娘である事を印象付け、少しでも創成者の目を引き付けれると考えたからだ。
故に、私は自分自身の未熟さを知りつつも敢えて、創成者相手に勝ち気な態度で、戦いを挑んだのである。
そして、私の予想通り、私程度の実力では全く、創成者に歯が立たなかった。
だが、それも当然の事。
父上程の実力者を凌駕する程の相手を、私が倒せる道理がないのだから。
それは飽くまでも予想の範囲内
――。
しかし、1つだけ嬉しい誤算があった。
それは、そんな相手と対峙して幸か不幸か私は、まだ動ける状態にあると言う事である。
創成者の所から移動した直後に一応、メイキング・ボディの状態を確認してみたが、損傷らしい損傷は見られなかった。
つまり、私にはまだ余力があると言う事である。
ならば私が為すべき事は、ただ1つ――。
この状況で脱出する為の何かを、為す事であろう。
それに可能であれば、エミリアを助けださねばならない。
そう....まだ、エミリア救出を諦める訳にはいかないのだ。
だが、例えエミリア救出が叶わなかったとしても、父上さえ無事ならば、まだ打つ手はある筈。
創成者が、エミリアを殺していないのは恐らく、創成者にはエミリアを必要とする何かしらの理由があるからであろう。
つまり、エミリアが直ぐに殺される様な事は無い....。
ならば父上さえ無事ならば、エミリアの再救出は可能な筈である。
だが、その為にも――。
(今は、父上と共に脱出する事を、最優先するしかない――。)
苦汁の選択ではあるが、それは仕方がない事だった。
それが皇族を、守る者の勤めなのだから。
皇家を守る事こそが、勤めであるが故に時には、自分自身の思いを殺さなければならない。
私は、そう覚悟を決めると、体勢を即座に立て直すべく、立ち上がろうとした――。
しかし、次の瞬間、私はメイキング・ボディの足下に、妙な違和感を感じ、私は不意にバランスを崩す。
(――!?
一体、何が・・・・??)
私は瞬時に右膝を着きつつ、何とか体勢を維持する。
(状況解析開始――。)
私は状況を把握するべく再度、メイン・メイキング・ボディのスキャニングを開始した。
だが....。
(えっ........??
スキャニングが機能しない?)
何かしらの影響によるものか、何故かスキャニングが機能しない。
(一体、何が起こっているのです!??)
私は両膝をついて、全身のバランスを維持すると、慌てて状況を確認した。
(感覚は機能に異常無し....。
触覚、神経伝達機能は正常に機能している――。
どうやら使えないのは、センサー系のみみたいですね?)
状況を確認する限り、肉体そのものの機能は、まだ正常に維持出来ているらしい。
恐らく、それらの機能異常を引き起こしているのは、先程の創成者の攻撃であろう――。
それにより、センサー系や状態認識機能は沈黙した。
だが、相手は父上を凌駕する者....。
それぐらいの事を、やってのけても何ら不思議はない。
(少し前までは、何の異常も見られなかったのに....流石は創成者と言う事ですか・・・・。
ならば、私自身の目で状況を確認するのみ――!)
私は即座に方向性を切り替えると、視界による直接確認を試みる。
しかし....。
(・・・・・そ、そんな!?
私は確かに回避した筈....?)
メイキング・ボディの状態を確認し、私は思わず絶句した。
私が考えている以上に事態が、深刻だったからである。
消失する足先。
次の瞬間、それ故にバランスが維持出来なかったのだろう。
しかし、それが事の全てではなかった。
足先の消失部分で、煌めく蒼い光――。
その光が消失部分から上へ上へと、競り上がってきていたのである。
(ま....まさか、この蒼い光はメイキング・ボディを分解している――!?
不味い....このままでは!)
私は慌てて、メイキング・ボディの両足の膝から下を切り離す為、機能伝達を行った。
だが、そんな私を嘲笑うかの様にメイキング・ボディの状態に変化は生じない――。
(そ、そんな――!?)
私は、切迫する状況に焦りつつ、打開策を模索した。
こうしてる間にも蒼い光は徐々に徐々にと、メイキング・ボディを蝕み続けている。
(くっ....!
ならば――!!)
私は決断した。
右手に時空刃を構成し即座に、メイキング・ボディの両足を切り落としたのである。
そして、その直後に私の意識内に飛び込んでくる両足が切り離される違和感――。
両足を切断した際、神経伝達機能をカットしていた為、痛みなどはなかったのだが....。
如何に作り物の体と言えども、やはり自分で自分の体を切断すると言うのは気分の良いものではない。
だが、作り物の体なればこそ、
逆に打つ手が残されているとも言えた。
両足を再構築すれば、次なる状況に備える事も可能なのだから。
私は、そんな判断の元、即座に両足の構築を開始する。
だか――。
その直後の事だった。
上空より不意に雨の如き、水滴大の黒い玉が私と父上に向けて、降り注いだのである。
(なっ――!??)
私は、その黒い玉に異様な危機感を感じ、即座に光学フィールドを発生させた。
「ユーミア!」
それと同時に、父上は私の名前を叫んだ直後、フォースを使用し周囲の重力を反転させる。
だが次の瞬間、私は理解した。
何故、父上が私の名を叫んだのかを....。
父上は、この黒い玉の脅威を知っていたのだ。
そして、父上がフォースを使用するのとほぼ同時――。
私が発生させた光学フィールドに黒い玉が接触する。
その刹那、降り注ぐ無数の黒い玉が、私の光学フィールドを貫いた。
(そ、そんな――!?)
私は、驚愕した。
エネルギー体の大半を防げる筈の光学フィールドが、紙切れの如く、打ち砕かれる....。
そして、その無数の黒玉は無防備となった私のメイキング・ボディを容赦なく、襲った。
(不味い....!
このままでは私は――。)
死の感覚が、迫りくる――。
このままメイキング・ボディが消失すれば、メイキング・ボディを構成するフォースの機能が完全に失われ....。
無防備にして無力な本体が、この場に顕現してしまう。
そうなったら私に為す術は、ただの1つもない。
即ち確実なる死が私を、待っていると言う事だ。
(結局、私はまた何も出来ずに、最後の瞬間を迎えるのですか....?)
私の脳裏に一瞬、そんな諦めにも似た感情が芽生える。
圧倒的な窮地故の絶望。
道を見失うが、故に抱く感情。
だが、私がそんな絶望に押し潰されそうになった直後である。
不意に、周囲の重力が反転し黒い玉は、遥か彼方へと消え去った。
「父上....?」
考えるまでもなく、それは父上の為したる所業であろう。
(そ....そうだ。
まだ、父上が居る。
父上さえ健在ならば....。)
――希望はある――
私は、そう確信しつつ無惨に破壊され尽くされたメイキング・ボディの頭を起こし、その視野で父上の姿を探した。
希望たる父上の姿を――。
だが、現実は私が思っている以上に残酷だった。
膝を着いたまま、辛うじて創成者を見据える父上。
その息は荒く、僅かな余裕すら感じない。
私もそうだが、父上にも殆ど余力は残されていないのだろう。
父上は恐らく、温存していた力を、使ってしまったのだ。
私を守る為に――。
(ち、父上・・・・・・)
私は自身の底の浅さを心底、後悔しつつ朧気な意識の中、手繰り寄せる様に父上の姿が見える、その先へと右手を伸ばす。
が――その右手が、私の瞳に映り込む事は無かった....。
理由は、恐らく先程の黒い玉に破壊されてしまったからであろう。
(あ........。
そ....う言う....事ですか。
腕はさっきの攻撃で失ってしまったのですね――?)
私は揺らめく視界で再び、自分の状態を確認した。
言うまでもなく状況は絶望的。
損壊部位は腕の損壊のみならず、両腕の肘から下と腹部から下が、完全に消失している。
このままでは考えるまでもなく、身動きは不可能だろう。
(は....早く再構成しないと....。)
私は、失われつつある意識を何とか、繋ぎ止めながらメイキング・ボディの再構築を開始する。
しかし、急いで再構築をしているにも関わらず一向に、構築速度が変化は見られなかった。
どうやら創成者との戦いで、想像以上に、精神力を消耗してしまったらしい。
(何で....こんな時に――!)
私は焦りと苛立ちの中、必死にメイキング・ボディの再構築を急ぐ。
しかし、その直後....。
そんな私の思いを打ち砕く様に、創成者が私に向けて言った。
「足掻くな娘よ....。
もう、戦わなくていい。
汝には、知る必要性がある。」
不意なる創成者の言葉に、私は硬直する。
(一体、何を言っているの....創成者は――??)
そして次の瞬間、創成者は、その右手より黒き閃光を放った。
私と....私の周囲の空間に向けて――。
(引き....込まれてる....?)
創成者の生み出しし黒い閃光の内で、私は虚ろな瞳で創成者を見据える――。
私は何も出来ずに、その黒い閃光が生み出した暗闇の内に、呑み込まれて行く....。
「父上....!
エミリア....。」
私は力無い声で、二人の事を呼んだ。
そして....私が黒い空間に呑み込まれる中――。
「娘よ....自分の目で確かめるがよい....罪の何たるかを・・・・・。」
そんな創成者の言葉が、私の耳元へと響き渡った....。
――――――
「・・・・・娘を見逃してくれた事への礼を言うべきか....創成者よ――?」
娘であるユーミアが闇の内側に、消え行くのを見届け終えると――。
アグレスは、静かな口調で創成者へと問い掛けた。
「見逃しただと....?
そうではない罪人の末裔にして、その王たる者よ。
我は、汝の娘に罪を知る為の時間を、与えただけに過ぎない。
そうでなければ、余りに理不尽であろうからな?
それに....これは、我が恩人たる者の願いでもあるからな....。」
創成者は、肯定する事なく静かな口調でアグレスに告げる。
「恩人・・・・・・?
そうか....!
そう言う事か――。
創成者、貴様を解放したのは・・・・。」
アグレスが神妙な面持ちで、そう言葉を発した瞬間――。
創成者は、静かに微笑んだ....
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