11 / 26
反能力
しおりを挟む
待ちに待った昼休み。俺は学校地下の食堂にいた。
当然ながら一押しメニューであるトンカツ定食を食ってる最中――……。
「マジで最近のAVのパケ詐欺ってひどくね。どう見ても別人だろって奴がゴロゴロいてマジで萎えるわ……」
などと、脈絡もなく意味不明な供述を始める榊原。
ざるそばを啜りながらの話題じゃねぇーだろと思いながらも、こっちの世界で初めてできた友人の愚痴に俺は黙って付き合った。
「……って、おい、聞いてるのか?」
俺の眼前に座る漫画やゲームのやられ役みたいな小物臭漂うチンピラ野郎。
榊原則彦(のりひこ)は饒舌な男だが話の内容自体は大きく分けて三つ。
ゲーム、マンガ、エロ以外の話題は決して口にしない習性のようだ。
その証拠に先刻、興味本位でこいつの頭の中を覗いてみたが、見事に脳内を埋め尽くすのは何の役にも立たないことばかりで、俺は貴重な魔力を無駄にした事を心底後悔した。
「はいはい、聞いてるよ」
「なら、俺が言ったこと復唱してみろよ」
「あのなぁ……」
「ほら、言えない。やっぱ聞いてなかったんだろ!」
「だから違うって――……ん?」
あまりにも違和感を感じさせないぐらい自然に現れた人影――……。
混んでる時間帯に四人用のテーブル席を二人で陣取っているとはいえ、俺達と相席しようなんて図々しい奴がいるなんて夢にも思わなかった。
こちとら片方が注文している間にもう片方が席を確保するという連携プレーで手に入れた席なのでどこの馬の骨かも分からん奴に割り込まれる筋合いなどない。
そんな割り込み紛いの行為が通用するのはフレンドリーな欧米ルールだけだ。
鎖国的かつ排他的な考えをその根底に持つ日本人相手に通用するなどという甘い考えを持った侵略者には天誅だ。我々を舐めるような奴には死の鉄槌を――……。
「周防さん!?」
「ここ、いいかしら?」
「どうぞどうぞ。男二人でむさ苦しいでしょうが、お気になさらず」
真っ先に榊原のバカが裏切った。
やはり男と女で露骨に態度を変えるような奴は信用できない。
――ってか、ラファエルは今朝の俺の話を聞いてなかったのかよ!
(ふざけやがって……)
俺は呪い殺す勢いでラファエルを睨んだが、当の本人は何事もなかったかのような涼しい顔をして持参したサンドイッチ箱をテーブルの上に広げ始める。
……一個よこせ。あまりにマイペース過ぎんだろ。
「あのさ、二人って仲良いの……?」
勢力的には敵対関係で、個人的には多少の交流がある友人です。
――って、言えるわけねぇーだろうがカスが!
こうゆうのが嫌だからわざわざ釘刺したってのにこの女は……。
マジで空気読めよ。この調子が続くようなら絶交してやる。
「……友達だ」
「ほうほう、昨日の今日で?」
「そうだよ。悪いかよ」
「いや、なんというか、周防さんって物静かでいつも本読んでるタイプだから人付き合いとか苦手なタイプだと思ってたからさ」
「え……? 別に私はそんな事ないけど……」
ベラベラとマシンガンのように喋り続ける榊原――。
静かに飯を食うということはできないだろうか?
俺はそのことを鬱陶しく思いながら自分の食事を続けた。
「うっ……なんか気分悪くなってきた。ちょっと風に当たってくるわ……」
突然そんなことを言って席を立つ榊原。
「おい、大丈夫か?」
「俺から誘ったのに悪いな。今度ジュースでも奢るわ」
――病人のような青い顔。
数分前までエロトークしていたとは思えないほどの急激な体調の変化。
直感だが、俺はなんとなく勘付いてしまった。
「もしかして、お前……」
「うん。おそらくね」
榊原の体調不良の原因。ラファエルは否定しなかった。
天族、魔族、人間――その他ありとあらゆる生命体は例外なく“魂”と呼ばれる生命活動の源とも言える核を持ってるが、その“強さ”は決して平等などではない。
順位をつけるとすれば天族と魔族がほぼ同等で、次いで人間といったところか。
その中でも俺のように下級魔族と呼ばれる存在がいるように、同じ枠組みでも“優劣”というものがあり、下級が存在するのならば必然的に上級も存在する。
俺と相席してるのは上級の中でもさらに上位、最上級な方でして……。
「私がどれだけ力を抑えていても人間の魂は耐えられないみたい」
「お前と関わると魂が削れると?」
「うん。彼には悪い事したかな」
俺と榊原が一緒にいることで榊原の魂を削れるということはないが、ラファエルは違う。その気がなくても強力過ぎる魂は本人の意志に関係なく他の魂を削ってしまうのだ。
同じ教室にいる程度なら大した被害はないが、ラファエルのことを“意識”し、話し掛けてしまうとアウト。大抵の人間はその時点を始めとして魂を削られる。
「なら俺は……どうなんだ?」
自覚がないだけで俺もラファエルに削られているかもしれない。
なぜなら魔力素質ともいえる“魔力因子”の低さは幼少期より断トツ。
それゆえ、俺はどの魔族よりも人間に近い存在だった。
「反能力(リフレクター)……あくまで私個人の見解だけどね」
「いきなり何を言い出す?」
「もしかして知らない?」
「いや、知らないってこともないが……」
「天族や魔族でありながら天力や魔力に代表される力の影響を一切受けつけない。もしくは中和する性質を持つ特殊な因子を生まれながらに持ってる存在」
わざわざ説明なんてされなくても知ってるっての……。
なんせ俺は筆記試験ベストスリーの実力者だからな。
仮に俺の性質が反能力だと仮定すると辻褄が合わないことがある。
「それは違うと思うぜ」
「どうして?」
「俺、一応は魔力使えるし」
「え……」
「反能力はありとあらゆる力を中和して“無”に帰すという性質上、そのデメリットとして使用者が元来持つはずだった因子すらも打ち消すんだろう? そのぐらいは知ってる」
単に知識だけなら相当な自信がある。なんせ死ぬほど勉強してきたからな。
――って、あれ……?
驚いたラファエルさんの表情を察するに、奴は俺の魔力を感知できてなかった?
おかしいな……。ラファエルの目の前で魔力使ったことあるんだけど……。
(そのことから察するに……)
自分でも雑魚いのは十分承知していますので、傷口に塩を擦り付けるような真似はしないで下さい。精神的に死んでしまいます。
「……嘘でしょ?」
「いや、割とマジで」
「私が感知できないなんてあり得ない……」
「いやいや、前に図書準備室で見せただろ! ……って、それならお前、どうして俺が魔族だと分かったんだよ」
「なんとなく……」
俺を間近で凝視したところでわかるものなのか?
てか、誰が見てるかわからないんでとりあえずやめてもらわないと……。
榊原みたいな早とちり野郎に見られたら最後、誤解の火消しが面倒になる。
「反能力でないのなら……あなたは一体何者?」
ラファエルほどの者が分からない事を俺が知るわけがない。
それよりも場所を変えよう。
ここだと他人の目が気になって仕方ない。
「……とりあえず場所を変えよう」
できれば人目が確実につかないところがいい。
図書室――いや、だめだ。
保健室――これもダメだな。
移動教室は基本的に施錠されているだろうし……。
(どこかないか……あっ!)
それなら非常口の階段がちょうどいい。内鍵さえ外せば出入り自由だし。
当然ながら一押しメニューであるトンカツ定食を食ってる最中――……。
「マジで最近のAVのパケ詐欺ってひどくね。どう見ても別人だろって奴がゴロゴロいてマジで萎えるわ……」
などと、脈絡もなく意味不明な供述を始める榊原。
ざるそばを啜りながらの話題じゃねぇーだろと思いながらも、こっちの世界で初めてできた友人の愚痴に俺は黙って付き合った。
「……って、おい、聞いてるのか?」
俺の眼前に座る漫画やゲームのやられ役みたいな小物臭漂うチンピラ野郎。
榊原則彦(のりひこ)は饒舌な男だが話の内容自体は大きく分けて三つ。
ゲーム、マンガ、エロ以外の話題は決して口にしない習性のようだ。
その証拠に先刻、興味本位でこいつの頭の中を覗いてみたが、見事に脳内を埋め尽くすのは何の役にも立たないことばかりで、俺は貴重な魔力を無駄にした事を心底後悔した。
「はいはい、聞いてるよ」
「なら、俺が言ったこと復唱してみろよ」
「あのなぁ……」
「ほら、言えない。やっぱ聞いてなかったんだろ!」
「だから違うって――……ん?」
あまりにも違和感を感じさせないぐらい自然に現れた人影――……。
混んでる時間帯に四人用のテーブル席を二人で陣取っているとはいえ、俺達と相席しようなんて図々しい奴がいるなんて夢にも思わなかった。
こちとら片方が注文している間にもう片方が席を確保するという連携プレーで手に入れた席なのでどこの馬の骨かも分からん奴に割り込まれる筋合いなどない。
そんな割り込み紛いの行為が通用するのはフレンドリーな欧米ルールだけだ。
鎖国的かつ排他的な考えをその根底に持つ日本人相手に通用するなどという甘い考えを持った侵略者には天誅だ。我々を舐めるような奴には死の鉄槌を――……。
「周防さん!?」
「ここ、いいかしら?」
「どうぞどうぞ。男二人でむさ苦しいでしょうが、お気になさらず」
真っ先に榊原のバカが裏切った。
やはり男と女で露骨に態度を変えるような奴は信用できない。
――ってか、ラファエルは今朝の俺の話を聞いてなかったのかよ!
(ふざけやがって……)
俺は呪い殺す勢いでラファエルを睨んだが、当の本人は何事もなかったかのような涼しい顔をして持参したサンドイッチ箱をテーブルの上に広げ始める。
……一個よこせ。あまりにマイペース過ぎんだろ。
「あのさ、二人って仲良いの……?」
勢力的には敵対関係で、個人的には多少の交流がある友人です。
――って、言えるわけねぇーだろうがカスが!
こうゆうのが嫌だからわざわざ釘刺したってのにこの女は……。
マジで空気読めよ。この調子が続くようなら絶交してやる。
「……友達だ」
「ほうほう、昨日の今日で?」
「そうだよ。悪いかよ」
「いや、なんというか、周防さんって物静かでいつも本読んでるタイプだから人付き合いとか苦手なタイプだと思ってたからさ」
「え……? 別に私はそんな事ないけど……」
ベラベラとマシンガンのように喋り続ける榊原――。
静かに飯を食うということはできないだろうか?
俺はそのことを鬱陶しく思いながら自分の食事を続けた。
「うっ……なんか気分悪くなってきた。ちょっと風に当たってくるわ……」
突然そんなことを言って席を立つ榊原。
「おい、大丈夫か?」
「俺から誘ったのに悪いな。今度ジュースでも奢るわ」
――病人のような青い顔。
数分前までエロトークしていたとは思えないほどの急激な体調の変化。
直感だが、俺はなんとなく勘付いてしまった。
「もしかして、お前……」
「うん。おそらくね」
榊原の体調不良の原因。ラファエルは否定しなかった。
天族、魔族、人間――その他ありとあらゆる生命体は例外なく“魂”と呼ばれる生命活動の源とも言える核を持ってるが、その“強さ”は決して平等などではない。
順位をつけるとすれば天族と魔族がほぼ同等で、次いで人間といったところか。
その中でも俺のように下級魔族と呼ばれる存在がいるように、同じ枠組みでも“優劣”というものがあり、下級が存在するのならば必然的に上級も存在する。
俺と相席してるのは上級の中でもさらに上位、最上級な方でして……。
「私がどれだけ力を抑えていても人間の魂は耐えられないみたい」
「お前と関わると魂が削れると?」
「うん。彼には悪い事したかな」
俺と榊原が一緒にいることで榊原の魂を削れるということはないが、ラファエルは違う。その気がなくても強力過ぎる魂は本人の意志に関係なく他の魂を削ってしまうのだ。
同じ教室にいる程度なら大した被害はないが、ラファエルのことを“意識”し、話し掛けてしまうとアウト。大抵の人間はその時点を始めとして魂を削られる。
「なら俺は……どうなんだ?」
自覚がないだけで俺もラファエルに削られているかもしれない。
なぜなら魔力素質ともいえる“魔力因子”の低さは幼少期より断トツ。
それゆえ、俺はどの魔族よりも人間に近い存在だった。
「反能力(リフレクター)……あくまで私個人の見解だけどね」
「いきなり何を言い出す?」
「もしかして知らない?」
「いや、知らないってこともないが……」
「天族や魔族でありながら天力や魔力に代表される力の影響を一切受けつけない。もしくは中和する性質を持つ特殊な因子を生まれながらに持ってる存在」
わざわざ説明なんてされなくても知ってるっての……。
なんせ俺は筆記試験ベストスリーの実力者だからな。
仮に俺の性質が反能力だと仮定すると辻褄が合わないことがある。
「それは違うと思うぜ」
「どうして?」
「俺、一応は魔力使えるし」
「え……」
「反能力はありとあらゆる力を中和して“無”に帰すという性質上、そのデメリットとして使用者が元来持つはずだった因子すらも打ち消すんだろう? そのぐらいは知ってる」
単に知識だけなら相当な自信がある。なんせ死ぬほど勉強してきたからな。
――って、あれ……?
驚いたラファエルさんの表情を察するに、奴は俺の魔力を感知できてなかった?
おかしいな……。ラファエルの目の前で魔力使ったことあるんだけど……。
(そのことから察するに……)
自分でも雑魚いのは十分承知していますので、傷口に塩を擦り付けるような真似はしないで下さい。精神的に死んでしまいます。
「……嘘でしょ?」
「いや、割とマジで」
「私が感知できないなんてあり得ない……」
「いやいや、前に図書準備室で見せただろ! ……って、それならお前、どうして俺が魔族だと分かったんだよ」
「なんとなく……」
俺を間近で凝視したところでわかるものなのか?
てか、誰が見てるかわからないんでとりあえずやめてもらわないと……。
榊原みたいな早とちり野郎に見られたら最後、誤解の火消しが面倒になる。
「反能力でないのなら……あなたは一体何者?」
ラファエルほどの者が分からない事を俺が知るわけがない。
それよりも場所を変えよう。
ここだと他人の目が気になって仕方ない。
「……とりあえず場所を変えよう」
できれば人目が確実につかないところがいい。
図書室――いや、だめだ。
保健室――これもダメだな。
移動教室は基本的に施錠されているだろうし……。
(どこかないか……あっ!)
それなら非常口の階段がちょうどいい。内鍵さえ外せば出入り自由だし。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる