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嫉妬
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「うっぷ……ご馳走様でした……」
全体の三割ぐらいを食したところでとうとう胃袋が限界に達した。
無念だが白旗を上げるがごとく俺の食いっぷりを応援する大家さんにそう告げて箸を置く。
「やっぱり少し残ってしまいましたね」
「すいません」
「いえいえ、それより味のほうはどうでしたか?」
「すごく美味しかったです。これが料理屋なら毎日食べにきてます」
「フフッ……なら料理屋始めちゃおうかな。お粗末様でした」
残してしまったのが本当に申し訳ないぐらいだ。
家からタッパ持ってくるんで、お持ち帰りとかってありですかね?
――と口を突いて言いそうなったが、さすがにそれは図々しいので断念した。
「マリちゃんはどうでしたか?」
「……おいしかったです」
どこか不満げなマリ。楽しい食事の席だったというのになんて奴だ。
家に帰ったらたっぷり説教してやる。
そう思い時計を見てみると時刻は八時頃。
カーテンの隙間から見える外はすっかり暗くなっていた。
「さてと、あまり長居するのもアレですし……そろそろ失礼しますね」
「あら、もうこんな時間。気を遣わせてしまってごめんなさい。誰かと一緒に食事をするのは久々だったので時が経つのを忘れてました」
「謝る必要なんてないですよ。むしろ頭を下げるのはこちらの方ですから!」
「二条君は本当に優しい人ですね」
そう優しく微笑む大家さんは女神にさえ見えた。
もちろんそれは人間がイメージするほうの女神。実在する天界の方ではない。
「そうですか? 照れるなぁ……」
「ええ、もしよかったらまたお誘いしてもいいですか?」
これは予想以上の好感触。答えなんてものは考えるまでもない。
「もちろんですよ。是非お願いします!」
そう答えた俺の顔は興奮のあまり真っ赤だったかもしれない。
さっさと帰ろう。化けの皮が剥がれるその前に。
「今日はご馳走様でした。大家さんさえよければまたいつでも誘って下さい」
「はい。では近いうちに。暗いので足元に気を付けて」
「……ご馳走様でした」
なんてことだ。マリの様子が明らかにおかしい。
マリも俺に思う所があるのか、俺達は無言という名の冷戦状態に突入した。
そしてそのまま何事もなく帰宅。
とてもじゃないが無愛想だと説教できるような空気ではなかった。
「……ちょっといいですか?」
倦怠期の夫婦みたいなぎこちない空気が漂う中でマリはそう切り出してきた。
「ん……?」
「大家さんのこと好きなんですか?」
あまりにも直球過ぎるその質問に俺はたじろいた。
しかし俺の心はマリとの感情共有を求めていなかったらしい。
「……別になんでもない」
「嘘が下手ですね」
「いずれにしろお前には関係ないことだろう?」
「私はとても不快でしたよ」
その言葉通り見ただけで分かる不機嫌な表情。
もしかして妬いてるのか? ――などとは口が裂けても言えない。
辛うじて自制はできているものの、マリを女として見ている部分が俺の中にある限り油断などできるはずもなかった。もしもあの時、マリが俺に隠し事なく俺の為だけにこの地に来たとしたら、俺の心は今以上に大きく揺れていたことだろう。
ゆえに俺はアンドロマリウスという個人を警戒している。
「押入れで寝たい気分なので今日だけ寝る場所を代わってくれませんか?」
「……わかった」
「お休みなさい」
押入れに入るなり静かになったマリを尻目に俺は風呂場へと向かった。
今はただ汗を流したい気分。べったりと纏わりつくようなこの汗を――。
服を脱ぎ捨て、急ぎシャワーを浴びたが、心の汗というものはなかなか落ちないものだと知るまでにあまり時間は掛からなかった。
全体の三割ぐらいを食したところでとうとう胃袋が限界に達した。
無念だが白旗を上げるがごとく俺の食いっぷりを応援する大家さんにそう告げて箸を置く。
「やっぱり少し残ってしまいましたね」
「すいません」
「いえいえ、それより味のほうはどうでしたか?」
「すごく美味しかったです。これが料理屋なら毎日食べにきてます」
「フフッ……なら料理屋始めちゃおうかな。お粗末様でした」
残してしまったのが本当に申し訳ないぐらいだ。
家からタッパ持ってくるんで、お持ち帰りとかってありですかね?
――と口を突いて言いそうなったが、さすがにそれは図々しいので断念した。
「マリちゃんはどうでしたか?」
「……おいしかったです」
どこか不満げなマリ。楽しい食事の席だったというのになんて奴だ。
家に帰ったらたっぷり説教してやる。
そう思い時計を見てみると時刻は八時頃。
カーテンの隙間から見える外はすっかり暗くなっていた。
「さてと、あまり長居するのもアレですし……そろそろ失礼しますね」
「あら、もうこんな時間。気を遣わせてしまってごめんなさい。誰かと一緒に食事をするのは久々だったので時が経つのを忘れてました」
「謝る必要なんてないですよ。むしろ頭を下げるのはこちらの方ですから!」
「二条君は本当に優しい人ですね」
そう優しく微笑む大家さんは女神にさえ見えた。
もちろんそれは人間がイメージするほうの女神。実在する天界の方ではない。
「そうですか? 照れるなぁ……」
「ええ、もしよかったらまたお誘いしてもいいですか?」
これは予想以上の好感触。答えなんてものは考えるまでもない。
「もちろんですよ。是非お願いします!」
そう答えた俺の顔は興奮のあまり真っ赤だったかもしれない。
さっさと帰ろう。化けの皮が剥がれるその前に。
「今日はご馳走様でした。大家さんさえよければまたいつでも誘って下さい」
「はい。では近いうちに。暗いので足元に気を付けて」
「……ご馳走様でした」
なんてことだ。マリの様子が明らかにおかしい。
マリも俺に思う所があるのか、俺達は無言という名の冷戦状態に突入した。
そしてそのまま何事もなく帰宅。
とてもじゃないが無愛想だと説教できるような空気ではなかった。
「……ちょっといいですか?」
倦怠期の夫婦みたいなぎこちない空気が漂う中でマリはそう切り出してきた。
「ん……?」
「大家さんのこと好きなんですか?」
あまりにも直球過ぎるその質問に俺はたじろいた。
しかし俺の心はマリとの感情共有を求めていなかったらしい。
「……別になんでもない」
「嘘が下手ですね」
「いずれにしろお前には関係ないことだろう?」
「私はとても不快でしたよ」
その言葉通り見ただけで分かる不機嫌な表情。
もしかして妬いてるのか? ――などとは口が裂けても言えない。
辛うじて自制はできているものの、マリを女として見ている部分が俺の中にある限り油断などできるはずもなかった。もしもあの時、マリが俺に隠し事なく俺の為だけにこの地に来たとしたら、俺の心は今以上に大きく揺れていたことだろう。
ゆえに俺はアンドロマリウスという個人を警戒している。
「押入れで寝たい気分なので今日だけ寝る場所を代わってくれませんか?」
「……わかった」
「お休みなさい」
押入れに入るなり静かになったマリを尻目に俺は風呂場へと向かった。
今はただ汗を流したい気分。べったりと纏わりつくようなこの汗を――。
服を脱ぎ捨て、急ぎシャワーを浴びたが、心の汗というものはなかなか落ちないものだと知るまでにあまり時間は掛からなかった。
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