魔の巣食う校舎で私は笑う

弥生菊美

文字の大きさ
30 / 40

第30話 不透明

しおりを挟む


 
 やっと培養細胞のメンテナンスが終わり、バキバキに凝り固まった体をストレッチしながら「桜井さんの本日の業務終了ぉー」自分のデスクに戻ると、向かいのデスクの三橋さんが急に顔をあげていぶかしげな顔をする。

 どうしたの?と声をかける間もなく、廊下の方からドタドタト重たい足音をたてながら誰かが走ってくる音が響く

「え!?何事!?」

 思わず声をあげて閉まっている扉を振り返れば、ほどなくして勢いよくドアが開かれると飛び込んできたのは、研究補助員の山田さんだった。

ぜぇーはぁーと肩で息をしながら、室内を見ると

「見っ…見つかったって…ささささっき」

「「何が?」」

 三橋さんと同じ質問をしつつも、山田さんの頭から滝のように流れ出ている汗にギョッとして、慌てて座るように促す。

「ちょっ、大丈夫?とりあえず座りなよ」

「水持ってこようか?大丈夫?」

 三橋さんも心配そうに声をかければ「ううぅっ…」とヨロヨロと自分の席へと倒れこむように座る山田さん。自分のデスクにあったマグカップのコーヒーを一気に飲み干すと、はぁぁぁぁーと深い溜息を吐く。

 マジで、一体、何事なのか??思わず三橋さんと顔を見合わせつつ、落ち着いた山田さんに向き直る。

「さっき、下に理事長が来てて何事だろうと思って付いて行ったの、そしたら地下で警察の人と手首が発見されたって話をしてて、しかも理事長がそれをまだどこにも公表するなって言って「それ人に言ったらまずいやつじゃん!」」

とすかさず三橋さんの突っ込みが入る。

「おやおや、私達巻き込み事故にあってる?」

 茶化すように言ったものの、おいおいマジかと、バレたらうちの研究室が消されるのでは?と私も思うが…。いやはや……まさか本当に見つかるとは……。警察も頑張ったなと拍手を送りたくなる。こういうのを粘り勝ちと言うのだろう。だが、この大学がハイそうですか、捜査に協力します。なんて素直に応じるわけがない。現に理事長の言葉が全てを表している。

冷静な三橋さんが、山田さんを睨む

「他に誰かにこの話したの?」

「いや、してない…ごめん、つい興奮して…」

ようやく落ち着いてきた山田さんも冷静になってきて、己の発言の危険度に気づいたのか徐々に声が小さくなっていく

「さっきの話は発表があるまで聞かなかった事にすべきだよ。
今のは聞かなかったことにする。研究室にも余計な迷惑かけたくないでしょ?」

「うん…。そうだね…。浅はかでした。」

 落ち込む山田さんの肩に手を置いて「元気出して」と言えば、返事代わりにズビッと鼻をすすった山田さんが「コーヒー淹れてくる」と席を立って、静かに部屋を出ていった。

 三橋さんのキーボードをたたく音が静かに響いく…。気まずい…が、今話しかける勇気はない。そう思って、私も静かに実験ノートを取り出し今回の実験の流れを書き込んでいく、が、頭の中は発見されたと言う手首のこと…。

 右手首本当に見つかったんだ……。この先、どうなって行くのだろうか…。分かるわけもない事を考えて、深い溜息を吐いたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

処理中です...