そして2人は恋をする

たぬきよーぐると

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とある大学生の話 3

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 サークルに加入するにあたっての注意事項とやらは、予想外のものばかりだった。

 1つ目は、先輩後輩の区別を無くすこと。詳しく言うと、敬語を使わずに、お互いを名前で呼び合わなければいけないそうだ。毎回のように先輩って呼ばれるのはムズムズするらしい。

 2つ目は、サークル活動中に泣かないこと。これは……なんでだ?

 3つ目は、「サークルに入ったら絶対に3日間は続けなくてはならない」というルール。

 1つ目はともかく、2つ目と3つ目の意味が分からない。なんでこんな注意事項なのかを聞いても、はぐらかされるだけだった。

「というわけだから、とにかく3日間だけでも入ってくれないかな?」

「そうですね……」

 正直に言って、この意味の分からないサークルに入っても僕にメリットは何1つない。

 ほぼ確実に、入ったらこの面倒くさい先輩に最低でも3日間は付き合わなければならないってことだもんな……

 この……残念系美少女に……

 美少女に……

 ……腐っても美少女は美少女か……


 メリットはないがデメリットもないか……? 

「それじゃあとりあえず3日間だけなら」

「本当に!? ありがとう瞬君! 」

 その言葉を待ってましたと言わんばかりに早木先輩は飛び上がった。僕の手を両手で握りしめ、ぶんぶんと大きく握手を交わす。

「と……とりあえずこれからよろしくお願いします。早木先輩」

「はいドーン!」

「痛っ!!」

 テンションの上がりように若干引きながら頭を下げた僕の後頭部に、中々の強さの衝撃が走った。

「あはは、ごめんごめん。ルールを破ったら今みたいに全力で殴るからね!」

 ルールを破る? 理不尽な暴力に怒りを越えて困惑しながら、注意事項を思い出して僕の発言を振り返っていく。

「あっ」

「分かったかな? ちゃんと名前で呼んでね!」

「じ……じゃあ――」

 改めて座り直し、目の前にいる早木先ぱ……早木さんを見つめる。

「は……はや……! 早木……さん」

「やり直し。名前で」

 まともに女子と会話なんてしたことがない僕に、問答無用で無理難題を押し付ける。

 ん? おーい。口元がニヤけてますよ? もしかして僕の反応を見て楽しんでる?

 この野郎……

 彼女の、見るからに僕を馬鹿にしてそうな顔を見て、何かが吹っ切れた気がした。

 それなら呼んでやるさ。いきなり真顔で名前呼んで恥ずかしがらせてやる。


 ……いくぞ。


「す……すず……すずずずねさん!」

 うん、失敗だ。

「あはははははは! 瞬君噛みすぎだよ! すずずずねって何!? キラキラネームってレベルじゃないよ!」

 腹を抱えて大笑いする彼女に、殺意が湧くのはしょうがないと思う。

「はぁ~面白かった! よろしくね、瞬君!」

 笑いすぎてか、目尻に涙を浮かべながら手を差し出してきた彼女に、窓からの光が射し込む。

「……やっぱり黙ってれば可愛いよなぁ」

「ん? 何か言った?」

「なんでもないです! それよりも、このサークルって何でこんな名前なんですか?」

 話題を逸らすために、ずっと心に残っていた疑問を投げかける。

「ん? 超・適・当!」

 はい、聞いた僕が馬鹿でした。
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