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また時は遡り15年前。
死のうとしていた当時の僕は15歳だった。
今になってこそ馬鹿らしいと思うが、あの頃は思春期と言うやつで、なかなか妙に繊細で、両親が離婚しただとか、第一志望の高校に落ちてしまっただとか、そういう、他人から見たらきっとつまらない〝そんなこと〟でいっぱいで、けれど自分が一番辛いと思ってた。そういう時期だったのだ。そもそもあの日、突発的に死のうと思った訳ではなかった。何度も考えて、自分の最期に相応しい場所を選定していた。それで、旧い記憶、両親がまだ仲睦まじかった頃の想い出の場所を選んだのだ。今思えば人生を終わらせようしている人間が想い出に縋っているのは実に人間らしい姿で滑稽である。
さて、話を戻そう。彼女はこの辺に住んでいる訳ではなく、少し離れた所に住んでいるらしい。僕も昔はこの近くに住んでいたが既に引っ越しているのでお互いこの公園には滅多に来ないらしい。「運命だね」と茶化す彼女に、恥ずかしながら僕は本気で照れていたし、あれはきっと人生最初で最後の一目惚れだったんだと思う。実際、彼女は美人だった。しかしそれ以上に清らかで、儚くて、美しくて…どうしようもなく惹かれてしまったのだ。それからというもの、僕と彼女は毎週金曜日、夕方、もう直に陽が沈む、という頃に会うようになった。といっても、特に何か口約束をした訳ではない。連絡先も知らない。ただ、初めて会った〝あの日〟が金曜日だったのだ。僕が学校の後、公園に向かうと彼女はいて、黙って隣に座り、夕日が沈む様子を眺めた。会話はない。時折、「こういう時間って、黄昏時って言うんだって。」等と彼女が雑学を呟き、「ふぅん」と僕が返す。そんな時間を過ごしていた。特段、何かしていた訳では無いが、僕にとってそれはとても大切な時間だった。そんな日々が半年ほど続いたある日、冬も濃くなった頃。いつものように「またね」と解散した次の週から、彼女は来なくなった。初めは、何か用事があったんだろう。と特に気にせずに過ごしたが、何週経っても、待てど暮らせど彼女は来なかった。無論、連絡先も知らないのでどうにも出来ない。それからまた、5ヶ月が過ぎた。彼女は相変わらず姿を見せなかったが、僕はその場所に通い続けた。一人で見る夕陽にも慣れ、草木もすっかり青く生い茂り、日没が遅くなった頃。誰かに声をかけられた。振り向くと、幼馴染の千草春香(ちぐさはるか)だった。どうやら、毎週毎週一人で公園の立ち入り禁止区域に入り、ぼぉっと夕陽を眺めている僕の心配をしてくれているらしかった。春香は昔から世話焼き(つまりお節介)なところがある。春香は僕から(半ば無理やり)話を聞き出し、ふぅん、といった後「行こう」と言った。「え、どこに」と戸惑う僕の手を引っ張り、「綾さんの来てる近くの駅、わかるんでしょ。会いに行かなくてどうするの」と叱った。「いや、でも」「このまま会えなかったら瑞希、一生後悔するよ!」悔しいが、あの時はいつもは鬱陶しいとさえ感じている春香のお節介な部分に助けられたと思う。何故なら僕にもその思考はあったが、行動に移せなかったからである。というか、何故春香は僕が毎週公園に通っていたのを知っていたのか。これもまた、今考えれば分かりそうなものだが当時の僕は言うところの鈍感だったのである。電車に揺られて約1時間、とうとう来てしまった。“いつも”の時間と変わらないが、まだ空は明るい。手がかりも何も無いのにどうしろというのか。僕は考えていた。今までの彼女の話の折々や、彼女と過ごした日々の全てからなんとなくそうなのではないかと思っていたが、見ないふりをしていた一つの可能性。もしかすると、彼女は病気なのではないか。それが冬になり、悪化して、入院しているのではないか。裏付けと言うには甘いかもしれないが、彼女が乗る電車は、そこから来ていると言っていた駅とは逆方向に向かう電車だった。つまり来ている場所と帰る場所が違ったのだ。そして、来ている方の駅の傍には国立病院があるのだ。何より、僕の悪い予感は当たる。昔、春香が事故に逢った時も、祖父が亡くなった日も、両親が離婚した日も。…いや、やめよう。僕は一通り公園や、近くの高校の辺りなどを探した。それが悪あがきだとどこかで察していても、探さずにはいられなかった。だが、やはりと言うべきか、どこにも彼女は居なかった。僕は意を決して国立病院へ向かった。春香は何も言わず着いてきてくれた。そうして辿り着いた国立病院。足取りは重い。が、ここで留まっていても仕方ない。僕は中庭に向かった。ここの病院の中庭は、花が綺麗だといつか彼女が話していたから。…やはり、彼女はそこにいた。小さな子どもたちと話している彼女の横顔は、最後に会った時と何も変わらないように見えた。勝手にここに来た僕に怒るだろうか。気持ち悪いと思うだろうか。実はもう僕に会いたくないと思っていて、だから来ていなかっただけかもしれない。色々な考えが頭を駆け巡ったが、それでも彼女がそこに居る事実が嬉しくて、気付けば僕は泣いていた。
「ちょ、ちょっと。どうしたの?綾さんいたの?!どの人!?」
あたふたする春香の声で、彼女が振り返った。一瞬の静止。なんでここに、と顔に書いてある。僕も静止。しばし気まずい空気が流れた後、彼女がこちらへ走ってきて、僕に抱きついた。微かにクチナシの匂いがして、初めて会った日に彼女と眺めた花畑を思い出した。香る花の名前が分かるようになったのも彼女のおかげだなぁと、上手く回らない頭でそんなことを考えていた。そして暫しの抱擁の後、離れた彼女がいつものように笑ったから、僕は期待した。なんだ、彼女は元気だったんだ。ここにいるのもきっとお見舞いか何かなんだろう。そんな僕の浅はかな考えを見透かしたのか、彼女は急に真面目な風になって、静かに、一言 ごめんね、と告げた。それだけで充分理解に値した。僕は情けなく声を上げて泣いた。彼女はきっと哀しそうな顔をしていた。顔をあげられなかった僕には分からないことで、それは今でも後悔している事の1つだ。もし、あの時顔を上げて大丈夫だよ、と言ってあげられたら。もし、あの時彼女を抱きしめ返していれば、彼女の心はもう少し救われたのではないか。いや、そもそも僕如きで救える等と言う考えが浅はかか。まあ、今となっては考えても仕方の無いことなのだが、人間とは愚かなもので、過去の後悔にずっと捕らわれてしまう。僕は涙が枯れるほど泣いたあと、彼女の顔を見た。彼女は既に笑顔だった。彼女は僕にまたね、と言ったので、僕もまたね、と返してその場を立ち去った。
死のうとしていた当時の僕は15歳だった。
今になってこそ馬鹿らしいと思うが、あの頃は思春期と言うやつで、なかなか妙に繊細で、両親が離婚しただとか、第一志望の高校に落ちてしまっただとか、そういう、他人から見たらきっとつまらない〝そんなこと〟でいっぱいで、けれど自分が一番辛いと思ってた。そういう時期だったのだ。そもそもあの日、突発的に死のうと思った訳ではなかった。何度も考えて、自分の最期に相応しい場所を選定していた。それで、旧い記憶、両親がまだ仲睦まじかった頃の想い出の場所を選んだのだ。今思えば人生を終わらせようしている人間が想い出に縋っているのは実に人間らしい姿で滑稽である。
さて、話を戻そう。彼女はこの辺に住んでいる訳ではなく、少し離れた所に住んでいるらしい。僕も昔はこの近くに住んでいたが既に引っ越しているのでお互いこの公園には滅多に来ないらしい。「運命だね」と茶化す彼女に、恥ずかしながら僕は本気で照れていたし、あれはきっと人生最初で最後の一目惚れだったんだと思う。実際、彼女は美人だった。しかしそれ以上に清らかで、儚くて、美しくて…どうしようもなく惹かれてしまったのだ。それからというもの、僕と彼女は毎週金曜日、夕方、もう直に陽が沈む、という頃に会うようになった。といっても、特に何か口約束をした訳ではない。連絡先も知らない。ただ、初めて会った〝あの日〟が金曜日だったのだ。僕が学校の後、公園に向かうと彼女はいて、黙って隣に座り、夕日が沈む様子を眺めた。会話はない。時折、「こういう時間って、黄昏時って言うんだって。」等と彼女が雑学を呟き、「ふぅん」と僕が返す。そんな時間を過ごしていた。特段、何かしていた訳では無いが、僕にとってそれはとても大切な時間だった。そんな日々が半年ほど続いたある日、冬も濃くなった頃。いつものように「またね」と解散した次の週から、彼女は来なくなった。初めは、何か用事があったんだろう。と特に気にせずに過ごしたが、何週経っても、待てど暮らせど彼女は来なかった。無論、連絡先も知らないのでどうにも出来ない。それからまた、5ヶ月が過ぎた。彼女は相変わらず姿を見せなかったが、僕はその場所に通い続けた。一人で見る夕陽にも慣れ、草木もすっかり青く生い茂り、日没が遅くなった頃。誰かに声をかけられた。振り向くと、幼馴染の千草春香(ちぐさはるか)だった。どうやら、毎週毎週一人で公園の立ち入り禁止区域に入り、ぼぉっと夕陽を眺めている僕の心配をしてくれているらしかった。春香は昔から世話焼き(つまりお節介)なところがある。春香は僕から(半ば無理やり)話を聞き出し、ふぅん、といった後「行こう」と言った。「え、どこに」と戸惑う僕の手を引っ張り、「綾さんの来てる近くの駅、わかるんでしょ。会いに行かなくてどうするの」と叱った。「いや、でも」「このまま会えなかったら瑞希、一生後悔するよ!」悔しいが、あの時はいつもは鬱陶しいとさえ感じている春香のお節介な部分に助けられたと思う。何故なら僕にもその思考はあったが、行動に移せなかったからである。というか、何故春香は僕が毎週公園に通っていたのを知っていたのか。これもまた、今考えれば分かりそうなものだが当時の僕は言うところの鈍感だったのである。電車に揺られて約1時間、とうとう来てしまった。“いつも”の時間と変わらないが、まだ空は明るい。手がかりも何も無いのにどうしろというのか。僕は考えていた。今までの彼女の話の折々や、彼女と過ごした日々の全てからなんとなくそうなのではないかと思っていたが、見ないふりをしていた一つの可能性。もしかすると、彼女は病気なのではないか。それが冬になり、悪化して、入院しているのではないか。裏付けと言うには甘いかもしれないが、彼女が乗る電車は、そこから来ていると言っていた駅とは逆方向に向かう電車だった。つまり来ている場所と帰る場所が違ったのだ。そして、来ている方の駅の傍には国立病院があるのだ。何より、僕の悪い予感は当たる。昔、春香が事故に逢った時も、祖父が亡くなった日も、両親が離婚した日も。…いや、やめよう。僕は一通り公園や、近くの高校の辺りなどを探した。それが悪あがきだとどこかで察していても、探さずにはいられなかった。だが、やはりと言うべきか、どこにも彼女は居なかった。僕は意を決して国立病院へ向かった。春香は何も言わず着いてきてくれた。そうして辿り着いた国立病院。足取りは重い。が、ここで留まっていても仕方ない。僕は中庭に向かった。ここの病院の中庭は、花が綺麗だといつか彼女が話していたから。…やはり、彼女はそこにいた。小さな子どもたちと話している彼女の横顔は、最後に会った時と何も変わらないように見えた。勝手にここに来た僕に怒るだろうか。気持ち悪いと思うだろうか。実はもう僕に会いたくないと思っていて、だから来ていなかっただけかもしれない。色々な考えが頭を駆け巡ったが、それでも彼女がそこに居る事実が嬉しくて、気付けば僕は泣いていた。
「ちょ、ちょっと。どうしたの?綾さんいたの?!どの人!?」
あたふたする春香の声で、彼女が振り返った。一瞬の静止。なんでここに、と顔に書いてある。僕も静止。しばし気まずい空気が流れた後、彼女がこちらへ走ってきて、僕に抱きついた。微かにクチナシの匂いがして、初めて会った日に彼女と眺めた花畑を思い出した。香る花の名前が分かるようになったのも彼女のおかげだなぁと、上手く回らない頭でそんなことを考えていた。そして暫しの抱擁の後、離れた彼女がいつものように笑ったから、僕は期待した。なんだ、彼女は元気だったんだ。ここにいるのもきっとお見舞いか何かなんだろう。そんな僕の浅はかな考えを見透かしたのか、彼女は急に真面目な風になって、静かに、一言 ごめんね、と告げた。それだけで充分理解に値した。僕は情けなく声を上げて泣いた。彼女はきっと哀しそうな顔をしていた。顔をあげられなかった僕には分からないことで、それは今でも後悔している事の1つだ。もし、あの時顔を上げて大丈夫だよ、と言ってあげられたら。もし、あの時彼女を抱きしめ返していれば、彼女の心はもう少し救われたのではないか。いや、そもそも僕如きで救える等と言う考えが浅はかか。まあ、今となっては考えても仕方の無いことなのだが、人間とは愚かなもので、過去の後悔にずっと捕らわれてしまう。僕は涙が枯れるほど泣いたあと、彼女の顔を見た。彼女は既に笑顔だった。彼女は僕にまたね、と言ったので、僕もまたね、と返してその場を立ち去った。
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